(写真:愛弟子の表彰式にデービッド・セケラックコーチも駆け付けた)

 20日、日本陸上競技連盟(JAAF)は「JAAF ATHLETICS AWARD 2023」を都内で行い、年間最優秀選手賞にあたる「アスリート・オブ・ザ・イヤー」に世界選手権ブタペスト大会(世界陸上)女子やり投げで日本人初の金メダルを獲得した北口榛花(JAL)が選ばれた。優秀選手賞は世界陸上ブタペスト大会・男子35km競歩銅メダルの川野将虎(旭化成)、同男子110mハードル5位入賞の泉谷駿介(住友電工)、同男子100m6位入賞のサニブラウン・アブデルハキーム(東レ)、同男子3000m障害6位入賞の三浦龍司(順天堂大学)、同女子5000m8位入賞の田中希美(New balance)が選出された。
 

 文句なしの選出だろう。世界陸上でフィールド種目日本人女子初の金メダル獲得。WAダイヤモンドリーグ・ファイナルを制し、この年の世界ランキング1位にも輝いた。北口は「アスリート・オブ・ザ・イヤー」受賞を「2015年にサニブラウン選手と新人賞を受賞して以来、ずっと憧れていた。今回獲れてうれしい」と喜んだ。「何回、映像を見ても本当に自分がやったとは思えないくらい不思議な気持ち。魔法がかかったような、ここ2シーズン」と振り返る。
「(その魔法が)いつ終わるか不安に思いながら練習を続けています。自分で魔法を持続できるように努力しています」 

 

  日本大学在学中にチェコに渡り、19年からデービッド・セケラックコーチの指導を仰ぐ。21年東京オリンピックで決勝進出。22年世界陸上で銅メダルを獲得。今季は日本記録を2度塗り替え、世界女王(世界陸上金&世界ランキング1位)に就いた。
「選手としてトップを目指すことが当たり前だと思っていますし、そのために犠牲を払うこと、海外に出て行くことが当たり前だと思ってきました。それを当たり前と思えていることが私の強さ」

 

 来年はパリオリンピックを控えているが、既に代表に内定し出場権を得ている。
「世界陸上で金メダルを獲った以上、パリで金メダルを目標としか言えない。言うのは簡単ですけど、やることが本当に難しいことというのはわかっています。今年は日本記録を2回更新できましたが、それで満足することなく、私が目指しているのは、もっと上。これからも下を見ることなく、ずっと上を見続けて、自分を成長させていきたいと思っています」

 

 表彰式後、報道陣に「モチベーションを保つ秘訣は?」と問われると、彼女は屈託のない笑顔でこう答えた。
「モチベーションが下がったと感じることがないんです。なので特にないんです」
 飽くなき向上心。無邪気に上を見続けられることが、北口の強さの秘訣なのかもしれない。

 

(文・写真/杉浦泰介)