はじめまして。今シーズンより新潟アルビレックスBCの監督に就任した芦沢真矢です。今年で独立リーグ4年目を迎えました。2005年から2年間、四国アイランドリーグ(現、四国・九州アイランドリーグ)の香川オリーブガイナーズ初代監督を務め、昨年はBCリーグの石川ミリオンスターズで運営の仕事に携わっていました。ですから、現場には2年ぶりの復帰となります。
 監督の話をいただいたのは昨年11月末でした。藤橋公一社長が金沢にまで足を運んでいただき、「新潟のためにぜひ監督をやってもらえないだろうか」とおっしゃってくれたのです。そう言われて嬉しくないはずはありません。でも、石川を1年で辞めるつもりはありませんでしたし、恩もありました。それに、家族同伴で石川に引っ越してきていましたから、私一人で決められることではなかったのです。そこで、少し時間をいただきました。

 いろいろと考えた結果、引き受けることにしたわけですが、最後に決め手となったのは、やはり「現場でもう一度汗を流したい」という思いでした。香川の監督を辞めた後、「野球に携われるのなら」という思いで、石川の運営部長を引き受けました。違う角度から野球を見るのもいいのでは、と思ったということもあります。おかげでチームは初年度チャンピオンに輝き、私としても充実した1年間でした。ですから、前述したように辞めようなどとは、これっぽっちも思っていなかったのです。

 しかし、やはり心のどこかで「現場でやりたい」という思いがあったのも確かです。そこで、妻に相談したところ、「芦沢家はあなたの仕事で成り立っているんですから、やりたいようにやってください」と言ってくれました。その一言で自分の気持ちに素直になって、新潟の監督になることを決めました。

 さて、新潟に住み始めてまだ日も浅いのですが、イベントなど県民の皆さんに触れ合う度に温かさを感じています。それは協力してくれるスポンサーさんも同じです。「あぁ、アルビレックスは愛されているな、期待されているんだな」と感じることが本当に多いのです。

 そんな県民の期待に応えるためにも、私たちは必死で頑張らなくてはいけません。昨シーズンは3位の信濃グランセローズに15ゲーム差をつけられての最下位でしたが、今シーズンの目標はズバリ優勝。県民の皆さんに喜んでもらえるような試合をしていきたいと思っています。

 正直、私は昨シーズンの新潟がどんなプレーをしていたのかはほとんど観たことはありません。運営部長として試合が始まれば、ゆっくりと観戦している暇などなかったからです。ただ新潟に対して、いつも感じていたことがあります。それは「まとまりがないチームだな」ということ。例えば、試合前の整列一つにしてもそうです。一人、また一人とバラバラとベンチから出てきて、なかなか全員が揃わないんです。運営の責任者として、いつもやきもきさせられたものです。まとまりがなければ優勝などあり得ないわけですから、今シーズンはこういった点もきちんとしていきたいですね。

 私がチームづくりでいつも大事にしているのが、監督と選手との心の距離を近づけることです。なぜなら、選手が監督に心を開いてくれていれば、練習中も言われたことを素直に聞いてくれる。つまり、吸収が早いからです。誰だって、嫌だと思っている相手から言われたことには素直になれないものですよね。選手が監督に心を閉ざしている状態だと吸収が悪くなってしまいます。だから、私はできるだけ選手との距離をなくしたいと思っているのです。

 今回、私は選手のことを早く知りたいということもあり、1月からの2カ月間、球団施設の雄翔寮で選手たちと一緒に生活をしました。そのおかげで最近では選手の方から冗談を言ってくることもあり、だいぶ私に心を開いてくれたかなと感じています。

 今シーズンのチームスローガンは「がむしゃらに!」です。全力疾走はもちろん、「抑えてみせる!」「打ってやるぞ!」と、一球一打に強い気持ちをもつことを意味しています。思えば自分が選手時代、いい結果が出る時というのはいつも無心だったように思います。「三振したらどうしよう」「打たれたらどうしよう」などという雑念が入る隙間がないほど、集中している状態。つまり「がむしゃら」だったのです。

 今シーズンの新潟は全力プレーで優勝を目指して頑張りますので応援、よろしくお願いします。
 

芦沢真矢(あしざわ・しんや)プロフィール>:新潟アルビレックスBC監督
1958年1月1日、山梨県出身。巨摩高校時代は4番・捕手として初の甲子園に出場。76年、ドラフト5位でヤクルトに入団し、貴重な控え捕手として活躍。88年に現役引退後はヤクルトでブルペン捕手、広島でコーチを務めた。2005年、四国アイランドリーグの香川オリーブガイナーズ初代監督に就任し、2年目の06年には優勝に導く。昨年は北信越BCリーグの石川ミリオンスターズで運営を部長を務め、今季より新潟の監督に就任した。

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 今回は新潟・芦沢真矢監督のコラムです。「香川、2年目優勝のワケ」。ぜひ携帯サイトもあわせてお楽しみください。
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