四国・九州アイランドリーグが開幕して約1週間。今季から6球団にリーグが拡張され、約150名の選手たちが白球を追っている。悲願の初優勝を狙う愛媛マンダリンパイレーツにも夢にチャレンジする地元プレーヤーがいた。ショートを守る檜垣浩太だ。昨シーズン、育成選手から這い上がり、一気にリーグ屈指の左バッターに躍り出た。今季はチームの優勝と自身のNPB入りを目標に掲げる23歳に、二宮清純が迫った。
二宮: 檜垣選手のセールスポイントはどこですか?
檜垣: やはりバッティングですかね。しかもチャンスで打てるという精神面の強さをアピールしていきたいなと思っています。

二宮: 確かに昨季の打点は51でリーグ2位。勝負強さが光っています。打率も3割はマークしていますが、トップの比嘉将太選手(愛媛)は3割3分4厘です。NPBに行くことを考えたら、もっと高打率を残さなくてはいけませんね。
檜垣: 打率3割以上をキープするのは当然ですが、今の課題はむしろ走塁だと考えています。

二宮: 昨年の盗塁数はわずかに7つ。盗塁王を獲得した三輪正義選手(当時香川)は40盗塁を決めて、東京ヤクルトからドラフト指名を受けました。檜垣選手も三輪選手同様、目指す方向は“走攻守3拍子揃った内野手”になるはずです。足が遅いわけではないんでしょう?
檜垣: 遅いほうではないと思います。でも走るのが速いから盗塁ができるかというと、それは違いますよね。スタートのタイミングとか、ピッチャーのクセを盗むとか、そういったテクニックが不足していました。
 そこで今年はまず、陸上の先生をお招きして、走るときのフォームを改善しました。

二宮: 具体的にはどこを改造したのですか?
檜垣: 基本的に野球選手は後ろに蹴って走るって人が多いらしいんです。でも、陸上ではそういう走り方は無駄という考え方で、たとえば末續慎吾選手や為末大選手は足をあまり上げずに走りますよね。

二宮: いわゆる“忍者走り”ですね。実際やってみて効果は出ましたか?
檜垣: 今はフォームが変わっただけで、速くなるのはこれからでしょう。キャンプから体をいじめてきたので、シーズンに入って効果が見えてくることを期待しています。

二宮: では、今シーズンは30盗塁くらいいけますか?
檜垣: 今年は前後期で合わせて10試合減るので大きいことは言えないですけど、20から30盗塁は狙っていきたいですね。

二宮: ホームランは5本でした。2ケタぐらい打てるパワーを身に付けたいとの思いはないですか?
檜垣: ホームランは出ればいいという気持ちです。自分はホームランバッターじゃない。ホームランは増やそうという考えはないです。

二宮: ということは、1、2番で出塁して、相手をかきまわすタイプと?
檜垣: そうですね。チャンスメイクの役割が自分には合っているかもしれないですね。

二宮: その点で考えると、三振が51個と少し多いのは気になりますね。
檜垣: どんなボールでもバットを当てに行けるという自信があるのですが、逆にボール球に手を出しすぎました。一番、三振を取られたボールは低めの変化球。そのコースをいかに見逃したり、対処できるかが、ポイントになると思います。

二宮: NPBのピッチャーは低目のフォークやスライダーで三振を奪いにきますから、ここを振っていては思うツボ。檜垣選手が今、言ったように低めへの対応はとても大切です。
 さて、守備はどう自己評価していますか?
檜垣: 守備は……。どうなんですかね(苦笑)。今はそんなに自信はないです。でも、守備は練習すればするほど、上達するものだと思っています。だから、これからの練習量でカバーするつもりです。

二宮: 沖泰司監督は、現役時代、内野も経験していますから指導は厳しいでしょう。一番、監督から課題として言われていることは何ですか?
檜垣: 特別なことはありません。監督からは基本的なことを何度も徹底して言われます。足を動かして捕れとか、下からこいとか。野球教室で小学生に教えるようなことを反復して教わっています。

二宮: 檜垣選手は今年で24歳ですが、NPBで活躍している同級生は阿部健太選手(阪神)の他に誰がいますか?
檜垣: 一番活躍しているのは、千葉ロッテの西岡(剛)選手。それから明徳義塾から中日に入った森岡(良介)選手も同級生です。

二宮: 西岡選手はWBCや北京五輪予選でも日本代表として出場しました。同じ内野手として、どう思いますか?
檜垣: すごいですよね(笑)。僕もああいった選手になれればとは思いますが、現時点では全然勝てません。バッティングも守備も走塁も、まだまだ届かないレベルです。

二宮: 昨年はチームメイトの梶本達哉選手がオリックスから育成指名を受けました。連絡はありましたか?
檜垣: この前、電話をしましたが、やはり環境はいいと話していました。練習場も充実しているし、寮なので食事もしっかり出ると。「早く来たらどうだ」と言われましたね。そりゃ、行けるものなら行きたいですよ(笑)。

二宮: 最後にあらためて、今年はどんなシーズンにしたいですか?
檜垣: 今年は2年目なので、相手からも研究されていると思います。その中でも去年を上回る成績を残さないといけません。もちろん、それができる自信はあります。個人的にはNPBに行く、なおかつチームとして優勝する。両方できれば最高です。

二宮: 地元の選手ということで、愛媛のみなさんの期待も大きいですよ。
檜垣: 特に故郷の今治で試合をすると、友達も大勢来てくれますし、小中学校時代に野球を教えていただいた方をはじめ周囲の期待をひしひしと感じます。プレッシャーはゼロではありませんが、逆にたくさんの人に見てもらえることは気持ちがいい。少ない観客の中でプレーするより、お祭りみたいに大勢でワイワイ楽しんでもらえるほうが、こちらも気合が入ります。

二宮: じゃあ是非、今年は優勝争いをして、坊っちゃんスタジアムを満員にしたいですね。
檜垣: 坊っちゃんはスタンドが広いので満員は難しいかもしれませんが、1万人は大きな目標です。1万人を超えるお客さんに来ていただいて、優勝の喜びをみなさんと味わいたい。そのために1年間、頑張ります。

(第3回につづく)

<檜垣浩太(ひがき・こうた)プロフィール>
1984年4月26日、愛媛県今治市出身。左投左打の内野手。今治西高時代は2年時より中軸を任される。専修大を経て、07年度のアイランドリーグのトライアウトを受けるも不合格。愛媛に無給の育成選手として入団する。キャンプでアピールし、2月に選手契約。4月度に打率.412の好成績を残し、月間MVPに輝く。リーグ1年目の成績は全90試合に出場して打率.309、6本塁打、51打点。三塁手のベストナインを獲得した。今季はショートに挑戦し、4番の重責を荷う。背番号は26。



<このインタビューはテレビ愛媛で放送された「夢をいつか… 〜愛媛からNPB目指す選手たち 二宮清純アイランドリーグを語る〜」の番組内容を再構成したものです>


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