サッカーのWEリーグ第12節日テレ・東京ヴェルディベレーザ(東京NB)対サンフレッチェ広島レジーナ(S広島R)の一戦が24日、味の素フィールド西が丘競技場で行なわれ、東京NBが2対1で勝利した。試合は前半8分、FW北村菜々美が決めて東京NBが先制した。後半31分にFW上野真実のPKでS広島Rが追いつくものの、後半終了間際にFW鈴木陽が頭で押し込み東京NBが勝ち越した。

 

 東京NB、左サイドの見事な連係見せる(味フィ西)

東京NB 2-1 S広島R

【得点】

[東] 北村菜々美(8分)、鈴木陽(88分)

[広] 上野真実(76分)

 

 前半から東京NBが、ピッチとボールを支配した。左CB池上聖七、左WB宮川麻都、左シャドー北村菜々美、それからダブルボランチのふたり(木下桃香、菅野奏音)がポジションをぐるぐるとローテーションさせ、S広島Rを混乱に陥れた。特に、木下、菅野のどちらかが、左CBと左WBの間にポジションを落とすことで、S広島Rは誰がここまで追えばいいのか、もしくは深追いしない方が得策なのか……と迷いが生じたように見えた。

 

 ビルドアップで良いリズムを作っていた東京NBが早々にゴールネットを揺らした。ピッチ中央でボールを受けたMF藤野あおばが前を向き、内側に絞り、一瞬マークを外した北村にラストパス。北村は右足アウトサイドでシュートコースを開け、ゴール右隅を射抜いた。

 

 S広島RもDF市瀬千里とMF中嶋淑乃のホットラインから反撃を試みる。19分には市瀬の得意のロングフィードから中嶋が相手DFの裏を取り、クロスを供給する。これは惜しくも味方に合わなかった。これを機に、前半終了まで市瀬は中嶋を計4回ロングフィードで走らせ、3度は成功した。

 

 ところが、であった。東京NBは1トップ、2シャドーシステムを後半の頭から2トップ、1トップ下に変更した。前線が2枚になることで、S広島Rの2センターバックにプレスをかけ、ロングフィードを封じ込めた。

 

 松田岳夫監督の好采配で試合を優位に進める東京NB。31分にPKで1点を返されたものの、途中投入した鈴木が頭で押し込んで、逃げ切った。

 

 なでしこリーグから移籍してきた鈴木にとってこれがWEリーグ初得点。さらにこの得点はクラブにとって、WEリーグが開幕してからリーグ通算100得点目とメモリアルなものとなった。

 

 殊勲の活躍を演じた鈴木は「なでしこリーグのときも1点目までが遠くて、今回も1点目がなかなか取れないという感じでした。今回はその時よりも長かったので、欲しくて欲しくてたまらないというゴールでした」と喜びを語った。

 

 采配が当たった松田監督は、特に流れが良かった前半をこう振り返った。

「前半の最初から中盤まではいい流れをつくれた。ボールを動かすというよりは、相手を動かす。その中で自分たちの流れをつくる。パスして流れていったり追い越したり、戻ってきたりというローテーションが非常にうまく機能していたなと感じています。

 ただ、これは我々がかたちでつくったものではなくて、選手それぞれが判断して生み出したものなので、本当にこれをいつも相手の見ながら表現していければもっともっと精度を高めていければなと思います」

 

 また、相手センターバックの市瀬らの“ロングフィード対策”についてはこう述べた。

「広島の広い攻撃、ビルドアップのところでロングボールも含め、サイドハーフに長いボールが入っていた。1トップですと、そこのところ(ボールの出所のセンターバック)にプレッシャーをかけられなかったし、5-4-1みたいなかたちになってしまったので、ファーストディフェンダーをしっかり決められるように2トップにしました。

 若干、中盤にスペースはできますけども、スペースを消しながら、サイドに追い込みたかった。ファーストディフェンダーを決めたかったのが一番の変更の要因です」

 

 東京NBにとって、選手の躍動と指揮官の采配が見事に噛み合った1勝となった。

 

(文/大木雄貴)