初モノづくしのROUND.13(5月3日開催)。CyberAgent Legit(サイファーエージェント レジット)の今季初黒星&初のレギュラーシーズン連覇や、Valuence INFINITIES (バリュエンス インフィニティーズ)初のチャンピオンシップ進出も印象に残っているが、個人的に鮮烈だった3rd MATCHに焦点を当てる。この試合はMedical Concierge I'moon(メディカル コンシェルジュ アイムーン)がFULLCAST RAISERZ (フルキャスト レイザーズ)をSWEEP(6ー0)で破り、今季初勝利を挙げた。

 

 
 先攻(青コーナー)はRAISERZ。作品のテーマは「BLAST THE ENGINE」に掲げ、ライダースファッションを纏ったメンバーたちが重低音を効かせた音楽に乗り、パワフルかつ疾走感のあるKRUMPを披露した。
 
 一方、後攻(赤コーナー)のI'moonの作品テーマは「FORCUS」だ。会場のビジョンに流れるパフォーマンス前のVTRでメンバーのKarenは「とにかく置きにいかず挑戦する。私たちのダンス魂を見せていきます」と抱負を語り、こう続けた。
「全神経を研ぎ澄まし、全集中するという意味での『FORCUS』と自分自身に焦点を当てるという意味での『FORCUS』。今回はその『FORCUS』をテーマにヒールを身に付けることにより自分自身と正々堂々向き合う姿、人に惑わされることなく自分を強く持つ女性の姿をお見せします」
 
 
「RAISERZさんはいつもパワフルで強いチームというのはわかっていた。漢気に対し、こちらは女で戦わせていただきました」とはCHIKA。身体のラインが際立つタイトな衣装に、ヒールを履いた。メンバーで揃えたヘアスタイルと淡いゴールドの衣装。静と動--。妖艶で、どこか儚げな舞いを踊る。8人が斜め一列に並び、その一糸乱れぬパフォーマンスに私は思わず息をのんだ。「いつもは意見を出し合い、2、3回で合わせられるんですが、今回はなかなかうまくいかなかった。1人でもズレたら汚く見える。手も頭もお尻の位置、移動のタイミングも合わせてきた。1日に1回うまくいけば大成功というレベルだった」(CHIKA)という高難度のフォーメーション。彼女たちの表情やダンスには、曲名の『Decided』の通り、断固とした決意が滲み出ていた。
 
 パフォーマンスが終わり、場内が暗転する。再び照明が灯されると、I'moonの選手たちは抱き合っていた。「みんなの中で達成感があって気持ちよく踊れたからだと思います」とはKaren。手応えは確かにあった。だが勝敗はジャッジに委ねられる。
 
 
 そして運命のジャッジの瞬間。赤、赤、赤……。赤が6つ並んだ。I'moonの選手たちは歓喜に沸く。8人全員が涙し、泣き崩れる者もいた。チームを代表してマイクを持ったリーダーのCHIKAは「なかなか勝利が掴めなくて、どこを見ればいいのかと迷うこともありました。それでもチームの信頼と、いつも支えてくださっているみなさまの強いサポートのおかげで、前を向いて頑張ることができました」と頭を下げ、ファンを含む関係者に感謝した。
 
 
 ROUND.13から1週間後、D.LEAGUE公式YOUTUBEにアップされたジャッジ解説を見ると、ジャッジ5人(残り1票はオーディエンス投票)のうち3人がコレオグラフとスタイルの項目でI'moonに10点満点を付けていた。その2項目に加え、クリエイションでも10点を付けたジャッジのSHINICHIが彼女たちのパフォーマンスを「セクシーさ、強さ、しなやかさがビタッとハマッた」と称えた。5項目中4項目(クリエイション、コレオグラフ、スタイル、完成度)で10点を付け、残るスキルも9点と、ほぼ満点評価のSAYA YAMAMARUは「正直、泣きそうになりました。伸び感、質感、品格、パワー、あとは感受性。これらが妖艶さに繋がるジャズダンスの基礎の部分です。それを『FORCUS』することでの内側から放つパワーというものが、しっかりとこちら側まで伝わってきました」と絶賛した。
 
 また、ROUND.13当日の配信解説を務めたTAKAHIROは、「ユニゾン力の向こう側」と表現。配信ゲストのダンス&ボーカルグループFANTASTICSの世界は「ポージングのひとつひとつが綺麗だった。なおかつそれが揃っている。背中や腰の部分が柔らかくないとできない。テクニック的にもスキルフルなことをやっていた」と感想を述べた。プロフェッショナルたちを唸らせた一体感は、圧巻だった。
 

(写真:SWEEPで敗れはしたものの、RAISERZらしさは遺憾なく発揮されていた)

 
 ROUND終了後、RAISERZのディレクター兼ダンサーKTRが敗者の弁を述べた。
「今回は先攻でテーマを“エンジン”。CSに向かってだったり、新生RAISERZとしてのエンジンをここから上げていくという意味で、KRUMP全開のパフォーマンスをしました。自分たちの作品に言うことはなかったのですが、I'moonさんの完成度、女性らしさ、魅力的なところは僕たちから見ていてもすごかった。僕らのパワーに対し、スパッとかわされたような感じがしました」
 勝ってチャンピオンシップ(CS)進出とならず、悔しさもあったはずだ。素直に負けを認めるというよりは、対戦相手へのリスペクトを感じさせた。
 
 一方のCHIKAは勝因をこう語る。
「ヒールで踊ったことは私たちとしてはすごくチャレンジでした。オフシーズンの時から今日の作品をつくってくださった Miu Ideさん(ROUND.13はSPコレオグラファ―として参加)にレッスンをしていただいたので、その集大成でした。ヒールの美徳を守りながら、いかに私たちのショーケースに落とし込めるか。いつもよりハードルが高いことやっていたからこそ、これまで以上に自分たちに集中し、研ぎ澄まして作品に入り込めたのかなと思います」
 

(写真:初勝利を挙げたI'moonの8人とMIZUEディレクター<右端>)

 
 今季のI'moonはオーナー企業がMedical Concierge(メディカル コンシェルジュ)となっての最初のシーズン。前年度のチームからは新たに7人のダンサーが加わった。MIZUEディレクター、CHIKAリーダーと首脳陣も刷新。しかし新生I'moonは理想とするストーリーは描けなかった。このROUNDまでで4分け6敗と勝ち星に繋がらず、最下位(13位)と苦しいシーズンを送っていた。
「後半戦は特に、“どこに向かっていったらいいのか”と悩みました。毎回勝ちを意識し、こだわって作品をつくっていました。結果が掴めなかったことが本当に苦しかった。それでもチームのみんなとディレクターのMIZUEさん、会社のみなさんがサポートしてくださった。みんなで高め合いながら練習をできていた。やっと勝てたことで、ファンの方にも恩返しできたと思います」(Karen)
 

(写真:Karenは「目標にしていたひとつ。今季初のSWEEP、勝利に加えて自分がMVDを獲れたことがうれしくて、幸せな1日になりました」と喜んだ)

 

 ようやく初勝利を掴んだI'moon。CS進出の望みは断たれているため、5月19日に行われるROUND.14が今季の終演となる。「やっと勝利を掴めたので、次も。dまだまだランキングはすごく下の方なので、大きく変えられるように頑張っていきたいと思います」とCHIKA。最終戦は13位のdip BATTLES(ディップ バトルズ)と戦う。
 
(文・写真/杉浦泰介)