フライ級女王・辻井和奏、前蹴りでTKO! 17歳・笠原直希、Sバンタム級の次期挑戦者に ~SUK WAN KINGTHONG~
2日、ムエタイ興行の『SUK WAN KINGTHONG decisive battle』が東京・新宿FACEで行われた。フライ級女王の辻井和奏(BRING IT ONパラエストラAKK)がトゥン・セッペン(カンボジア)を2ラウンド1分3秒TKOで下した。スーパーバンタム級次期挑戦者決定戦は、笠原直希(シーザージム)がSHU(D-BLAZE)に判定勝ちし、現王者・森岡悠樹(北流会君津ジム)の持つベルトへの挑戦権を得た。
2月のRWS(タイ)以来の試合、国内では約8カ月ぶりの試合となったが圧勝だった。身長168cm。辻井は長い脚から繰り出すキックが持ち味だ。この長い脚で距離感を支配できるのが強みだろう。ここまでプロ通算8戦で7勝1分けと無敗を誇る。昨年10月の後楽園ホール大会でフライ級王座を獲得した。
今回の対戦相手セッペンはカンボジアの立ち技格闘技クンクメールのファイター。16歳ながら戦績は8勝1敗1分けだ。辻井は「YOUTUBEで2試合観ました」程度の対策ではあったものの、「練習通りやれれば、自分の100%を出せれば大丈夫だと思って臨みました」という。1ラウンドからキックで距離感をほぼ完全に制圧した。相手に付け入るスキを与えなかった。
試合が動いたのは2ラウンドだ。右の前蹴りでセッペンがダウン。そのまま起き上がることができず、レフェリーが試合を止めた。「思い通りできました」と辻井。持ち味を存分に発揮した。「私が目標しているのは“天下統一”。どの団体でも全部てっぺんを獲りに行こうと思っています」と口にする20歳。今後に向けては「“試合を観たい”と思われる選手になりたい。負けなしで引退すると決めているので、全勝でいきます!」と力強く語った。
現地時間1日にタイでFAIRTEX FIGHT CHIANGMAI 女子47kg級のベルトを獲った藤原乃愛(尚武会フジワラムエタイジム)は大学の同級生だ。「友だちであり、仲間でもある。ムエタイもやっているので、セットで注目していただけるので意識はしています。ただ階級は違うので、一緒にムエタイを盛り上げていけたらと思っています」
また妹の和花(ほのか)、愛和(あいか)もファイター。三姉妹の長女は「切磋琢磨していければと思っています」と意気込んだ。第6試合に登場した笠原も兄(弘希、友希)が格闘家である。三兄弟の三男は「自分は兄貴が強くて環境に恵まれている。技術が試合ごとにどんどんついていく。前の試合を観ても対策できないように成長していると思う。兄貴が強いプレッシャーにもなるのですが、兄貴は兄貴、自分は自分と割り切れている。練習する時に付きっ切りで教えてくれて、自分の中ではプラスしかないですね」と、兄弟戦士のメリットは大きいという。
この日の試合は、9月23日に後楽園ホールで行われるスーパーバンタム級タイトルマッチへの挑戦権が懸かっていた。笠原は「チャンピオンになる、今一番の近道」と気合十分だった。対戦相手のSUEとは1年前の新宿FACE大会以来の再戦。「(自分の)前回の試合が終わった次の日が、SHU選手の試合だったので、それを観て対策を考えました」という。
自らが成長してきたようにSUEも。「攻め方もパターンが変わってきている。そういうところを含めて練習していたので大丈夫でした」
1、2ラウンドはパンチの連打でグラつかせる場面も。ダウンこそ奪えなかったものの優勢に試合を運んでいるように映った。3ラウンドは打ち合いになり、ヒヤリとするシーンも。ただ笠原本人は「ロープにひっかかってしまって、足がもつれた。見え方は悪かったですが、効いてはいませんでした」と振り返る。
判定はジャッジ3人が29-28のユナニマス・デシジョンで勝利。これで笠原は王者・森岡への挑戦権を獲得した。リング上のマイクで、森岡に「思ったより強いんで覚悟しといてください」と呼びかけた。
「戦績だけで言えば、連勝中。自分の中ではいい戦績を残せていますが、試合内容はまだ甘い。そこを直していきたい」と語る笠原は、まだ17歳。のびしろも十二分にあるだろう。「何でもできる選手になる。どんな団体に行っても、『コイツは強い』と言われる選手になりたいです」。自分の階級で立ち技最強を目指すのが当面の目標だ。
(文・写真/杉浦泰介)