横浜ベイスターズの工藤公康は現役最年長のプロ野球選手である。これまでの戦績は577試合に登板し、222勝135敗3セーブ、通算防御率3.40。奪三振2824。日本シリーズでは25試合に登板し、8勝5敗3セーブ、防御率2.29。奪三振102は史上最多である。

 1999年の日本シリーズは福岡ダイエー(現ソフトバンク)ホークスと中日ドラゴンズとの間で行なわれた。10月23日、福岡ドーム。ホークスのエースである工藤は初戦に先発した。

 工藤が最も警戒していたのはリードオフマンの関川浩一だった。この年、関川は打率3割3分の好打率を残し、文字どおり中日の切り込み隊長の役割を果たしていた。

 関川を出塁させないためには、どうすべきか。工藤によれば関川は「バットを前でさばくバッター」である。「この手のバッターは普通のバッターよりもタイミングの取り方が少し早い」。

 工藤はインサイドのヒザ元を徹底して攻めた。次のような狙いがあったのだ。「ここらへんに投げておけば、まず振ってきてもファウルになる。うまく打たれてもレフト前ヒットですみます。相手の調子を探るにはちょうどいいボールなんです。関川君の場合はスイングの仕方ひとつで、どんなボールを待っているかわかりました」。

 初戦、工藤は13三振を奪う力投で完封勝ちをおさめた。被安打6。関川に対しては4打数無安打。このゲームですっかり自信をなくした関川はシリーズを通して、わずか2本しかヒットを放つことができなかった。チャンピオンフラッグは福岡の地へ。初戦の好投が認められた工藤はMVPに輝いた。


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