バンタム級・松田龍聖、“ムエタイ2戦目”でラジャベルト獲得! Sフライ級・吉成名高は完勝防衛 〜RWS JAPAN〜

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 ムエタイのラジャダムナン・ワールドシリーズ(RWS)の日本大会『RWS JAPAN』が14日、千葉・TIPSTAR DOME CHIBAで行われた。ラジャダムナンスタジアム認定バンタム級タイトルマッチは41連勝中の王者クンスックレック・ブームデックシアン(タイ)を同級10位の松田龍聖(大原道場)が2ラウンドKOで破り、ムエタイルール2戦目で同王座獲得を成し遂げた。ラジャダムナンスタジアム認定スーパーフライ級タイトルマッチは王者の吉成名高(名高・エイワスポーツジムとして出場)が同級4位のジョムホート・コースワンタット(タイ)に3-0の判定勝ちで防衛に成功。女子アトム級は伊藤紗弥(尚武会)が、ノンパーファー・ファミリームエタイ(タイ)を3-0の判定で下した。

 

 京都の昇り龍が、タイの新星を食らった。41連勝のチャンピオンを無敗の19歳がKO勝ちした。

 

 2021年8月にデビューしたばかりの松田は、HOOST CUP日本スーパーフライ級王座を獲得するなどデビューから12戦無敗と勢いに乗る18歳だ。3カ月前の石井一成(イッセイ・ウォーワンチャイとして出場)で引き分け、デビューからの連勝は止まったものの、本格的なムエタイルール初挑戦ながらムエタイで世界タイトル獲得経験のある相手に互角以上の戦いを見せて評価を上げた。その証拠にラジャダムナンスタジアム認定バンタム級ランキング入りを果たし、若き王者クンスックレックへの挑戦権を得た。

 

 いきなり王者との対戦にも松田は臆することはなかった。

「ボクシングの井上尚弥選手、MMAのコナー・マクレガー選手など頂点にいく選手は、そういう強い選手を倒している。無敗のチャンピオンや何連勝中のチャンピオンの倒して革命を起こしている。今回の試合は僕が勝つために組んでもらったのかな、と正直思いましたね」

  第1ラウンドは、松田がパンチ、クンスックレックがキックを中心に攻めた。ジャッジは3者がクンスックレックに10-9。「5ラウンドあるので、1ラウンドは取られてもいいかな」。相手の圧は感じつつも、松田に焦りはなかったという。

 

 そして第2ラウンド。クロスカウンターを当てると、すぐ組み付いてきた。相手が弱気になると見るや一気に攻勢をかける。左、右のコンビネーションでクンスックレックをキャンバスに沈めた。立ち上がることのできない王者。レフリーが試合を止め、王座は松田に移った。ラジャダムナンスタジアム認定3階級制覇を果たした日本ムエタイ界の至宝・吉成も「ムエタイ2戦目でベルトは人類最速じゃないですか?」と驚いた。

 

 3カ月前、引き分けに終わったのはムエタイルールへの戸惑いもあった。1ラウンド、ファウルカップに受けた打撃でダウンを取られた。ムエタイへの適応は課題のひとつ。この日もファウルカップに打撃を受けた。「前回と同じ過ちを犯してはアカンと思った」とダメージはあったものの耐えた。そして「ムエタイの練習もしていたんですが、キック(ボクシング)で勝ちたいと思っていました」と自分のファイトスタイルを貫いた。

 

 松田の次なる標的はその吉成だ。「名高選手と戦うために、このベルトを獲った」。しかし松田がバンタム級、吉成はスーパーフライ級。いずれはバンタム級に上げる可能性を示唆している吉成は「すぐに戦うならば間を取った体重で」と希望を語った。18歳の松田は無敗ロードは続く。今後は防衛戦に限らず、キックボクシングでも頂点を目指す。「キックでもムエタイでも最強と呼ばれる選手になりたい」

 

 その吉成はメインで元王者と対戦。第3ラウンドにヒザ、ヒジのコンビネーションでダウンを奪うなど完勝だった。4ラウンド以降は戦意喪失気味の相手を仕留められなかったが、吉成の強さ、巧さが遺憾なく発揮された試合でもあった。

 

 松田がジャイアントキリングを起こし、騒然とした中で迎えた試合だった。吉成も正直な胸の内を明かす。
「僕も試合を観ていましたが、1ラウンド目にクンスックレック選手が取ったので、“判定だったらクンスックレックなのかな”と思っていたら、ボンと効かしてなぎ倒していた。“すげぇな。でもこの後、オレの試合かぁ……”と思いました」

 

 それでも攻守にスキが見られなかった。1、2ラウンドは3人のジャッジがいずれも10-9で吉成を支持。3ラウンドではキックをキャッチされた後、足払いでこかされたが、立ち上がってすぐやり返した。さらにはヒザから右ヒジを当てるコンビネーションでダウンを奪った。

 

 判定はフルマーク(50-44)で吉成。これで32連勝となった。勝利だけでなく内容も求められる立場だが、その点は重荷に感じていない。

「プレッシャーにはあまり感じていない。自分が練習してきたことを出せば試合で勝てる、いい試合ができると思っています」

 試合を、ムエタイを楽しむ吉成。試合後も爽やかな笑顔で受け答えた。囲み取材を終えた後、「やりづらかったなぁ」と、つぶやき報道陣を笑わせた。等身大の23歳である。

 

 ラジャダムナンスタジアムの女子ミニマム級(105ポンド=47.63kg)が6月発表され、2位にランクインした伊藤は、同4位のノンパーフファーと対戦した。

「女子の試合は(男子に比べ)迫力に欠けるかもしれない。フィームー(テクニック系)の選手が多いので、ゆったりと戦いポイント(判定)勝負になる。今回は相手の選手も前に出てくるタイプ。女子でもバチバチの試合をやりたいというのが今日の目標でした」

 

 パンチを得意とするムエマッドのノンパーファー。伊藤はミドルキックを軸にパンチのコンビネーションを浴びせた。

「相手の選手の気持ちが強くて、1ラウンドから3ラウンドまで前に攻めてきた。もうちょっとまとめらたかなというのはあります。サウスポーの選手なので、思ったより距離が遠い。あまり(懐に)入り過ぎてしまうと組まれる。躊躇した部分もありました」

 相手とのリーチ差に手を焼き、主導権を握るまではいかなかった。

 

 第1ラウンドで2人が伊藤、1人がノンパーファーを支持したジャッジは、第2ラウンドは2人が伊藤、1人がパンファーを支持と判定は割れた。トータルで見れば1人が2点差で伊藤、2人が同点だった。

 首相撲で押し倒す場面も見受けられたが、「5ラウンド制のムエタイは、こかしたり、倒した方にポイントがつく。RWSはヤッサイ(押しヒザ)のポイントが高い。その点で相手にポイントを取られたのかもしれません」と反省点を挙げた。

 3ラウンドを戦い終え、判定結果が出るとホッと胸をなで下ろした。

「判定が割れていて、最後のラウンドでは自分が取っている手応えもありました。ただムエタイは難しく、首相撲のポイントが高い。その点を多く取られていたら、“もしかしたら”という怖さもありました」

 

 ランカー同士の対決を制し、ラジャダムナンスタジアムのベルトに近付いた。伊藤が得ている情報では、ランキング上位の選手がリーグ戦、トーナメントを行い、ベルトを争う可能性が高いという。ランキング1位は昨年9月にRWS(タイ・バンコク)で敗れたモンクッペット・カオラックムエタイ(タイ)だ。

「次は絶対に勝つ自信はあります」

 

 またランカー同士の対決を、第5試合で7位の押川香菜(カナ・ウォーワンチャイとして出場)を破った3位のパヤーフォン・バンチャメーク(タイ)もリングサイドで試合の様子を見守っていた。「私の方のコーナーにいたので1ラウンドでコーナーに戻った時、目に入りました。気が抜けなかったですね」。4月の試合では伊藤が3対0で判定勝ちしているものの、パヤーフォンはベルト争いにも絡んでくるはずだ。「次戦っても勝つつもりですが、構えを見ても、ムエタイのリズムを取り戻している感じもするので油断できないですね」

 

 伊藤の次戦は秋を予定している。
「ベルトを争う試合の前に負けてはダメですし、ひとつひとつ勝って目標を達成したい」

 

(文・写真/杉浦泰介)

 

BS11では毎週木曜日23時に『ワールドファイトCLIP! Supported by U-NEXT」を放送中! 7月18日(木)の放送では今大会の模様も紹介される予定です。

 

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