中谷潤人、強烈ボディでWBCバンタム級初防衛! 那須川天心はバンタム級ランカー対決で会心KO ~ボクシング世界戦~

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 20日、ボクシングの世界戦が行われた。WBC世界バンタム級タイトルマッチは王者・中谷潤人(M.T)が同1位のビンセント・アストロラビオ(フィリピン)を1ラウンド2分37秒KO勝ち。初防衛に成功した。また田中恒成(畑中)のWBO世界スーパーフライ級王座防衛戦は、挑戦者のジョナタン・ロドリゲス(メキシコ)の大幅な計量オーバーにより前日に中止となった。WBO世界フライ級王座決定戦は、同級2位の加納陸(大成)が同3位のアンソニー・オラスクアガ(アメリカ)に3ラウンド2分50秒KO負け。WBA世界バンタム級7位の那須川天心(帝拳)は同4位ジョナサン・ロドリゲス(メキシコ)と120ポンド(約54.4kg)契約で戦い、3ラウンド1分49秒TKO勝ちを収めた。

 この日、両国で行われた4試合はすべてKO決着。中でも最速だったのがメインのWBC世界バンタム級タイトルマッチだ。王者が同級1位を1ラウンド終了のゴングを聞く前に片付けた。

 

 パウンド・フォー・パウンド(全階級での最強)ランキング1位を目指す中谷が、“怪物級”の強さを披露した。アメリカのボクシング誌『ザ・リング』の最新ランキングで10位に付けている。最強への道を突き進む。

 ルディ・エルナンデストレーナーから「ファーストコンタクトで強いパンチを思い切り打て」と指示を受けていた。ゴングが鳴って、鋭い左ストレートを叩き込むと場内から歓声が沸く。「2、3発目で当てることができ、相手も怯んでいたので意識付けはできた」と中谷。すると右のパンチで相手に上を意識させて空いたボディに左ストレートを打ち込んだ。「見えなかった」とはアストロラビオ。苦悶の表情を浮かべ、崩れ落ちる。一度は立ち上がったものの戦線復帰は不可能だった。

 

 バンタム級2戦目にして初の同級防衛戦は、3分とかからなかった。ウルトラマンばりの仕事ぶり。「ちょっと早過ぎた、すみません」と苦笑しながらも、強過ぎるからといって、彼を責める者はいないだろう。

 中谷の最強への道は、まずバンタム級統一を軸に考える。リング上でWBA王者の井上拓真(大橋)の名前を挙げられると「戦いたい選手の1人」と答えた。現在バンタム級はWBOが武井由樹(大橋)、IBFが西田凌佑(六島)と4人の日本人王者がひしめいているが、その中心にいるのは、間違いなく中谷潤人という男だ。

 日本人群雄割拠のバンタム級には、この男もいる。キックボクシングから転向した那須川だ。バンタム級世界ランキングはWBA7位をはじめ、WBO10位、WBC12位に付けている。世界戦2試合(1試合は前日中止)を差し置いてセミファイナルを任されるなど注目度の高いファイターだ。

 
 出だしから主導権を握ったのは那須川だった。左ストレートを当てて距離を掴もうとする。対するジョナサン・ロドリゲスはなかなか懐に入れず、攻撃を仕掛けられなかった。すると2ラウンド目に試合は動いた。ラウンド終了10秒前を知らせる拍子木が鳴った直後、那須川の左ストレートがジョナサン・ロドリゲスの顔面を襲った。ヒザを落としたため、那須川はダウンを確信し、左拳を挙げて下がったが、ここはジョナサン・ロドリゲスが踏ん張った。ラッシュを掛けたもののゴングが鳴った。
 決着は3ラウンド。那須川が左ストレートをジョナサン・ロドリゲスの顔面に突き刺し、グラつかせる。今度は攻勢を緩めず、ボディからのアッパー2連打、右フックからの左ストレートで仕留めた。ジョナサン・ロドリゲスは立ち上がったものの、陣営が続行を諦めてTKO。2試合連続KO勝ちを収めた。前回の試合では3回終了後、相手選手の棄権によるTKO。そのせいもあってかリング上では「KOできないって言った人、誰ですか?」と観客を煽った。「今日はカマしたと思う」と会心のKO劇に胸を張る。
 ボクシング転向4戦目で、那須川は「自分の型ができてきた」と言う。試合後の会見では、その点について「自分が先に動き、相手を動かす。間を支配するボクシング」と説明した。粟生隆寛トレーナーも「冷静に判断できていた。しっかり当てるところを選んでまとめられていた」と合格点を付ける出来。4人の日本人世界王者への挑戦に期待が膨らむが、まずは地域タイトルを獲って、その権利を奪いにいくつもりだ。
 

(取材・文/杉浦泰介、取材・写真/大木雄貴)

 

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