平本蓮、朝倉未来にKO勝ち 安保瑠輝也はパッキャオとドロー 〜RIZIN〜

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 28日、格闘技イベント『超RIZIN.3』がさいたまスーパーアリーナで行われた。メインのフェザー級ラストマン・スタンディング・タイトルマッチは平本蓮(剛毅會)が朝倉未来(JAPAN TOP TEAM)を1ラウンド2分18秒TKO勝ちを収めた。安保瑠輝也(MFL team CLUB es)はボクシングルールに準じたスタンディングルールでボクシング6階級制覇のマニー・パッキャオ(フィリピン)と引き分けた。

(写真:勝利が決まり、感情を爆発させる平本連)

 約4年前からSNSなどでたびたび朝倉未来を挑発してきた平本。両者の因縁はようやくリングで決着がつくとあって、2009年大みそかの「Dynamite!! ~勇気のチカラ2009~」以来となるさいたまスーパーアリーナのスタジアムバージョン開催。入場チケットは完売し、4万人を超える観衆が“格闘技の聖地”に集まった。

 1ラウンド、いきなり襲い掛かるようなことはなく、立ち上がりは慎重だった。ともにサウスポー構え。朝倉未来が右ミドル、平本が左ローで入った。会場から「平本コール」が上がれば、「未来コール」で応戦。左右に分かれた応援席から両選手の背中を押す声がこだまする。両者、一向に組み合う様子は見られない。

 

 小刻みなステップで、距離感を掴ませない平本。朝倉未来も平本の打撃を警戒してか不用意に飛び込むようなことはしない。「自分から勝負はつくろうと思っていた」。すると平本が仕掛けた。左を当てて朝倉未来をグラつかせると、攻勢に出る。カウンター気味の左フックでヒザから落ちると、一気にパウンド。レフェリーが試合をストップし、平本がTKO勝利となった。

 

 雄叫びを上げる平本。腰には「LMS」と刻印されたベルトを巻いた。「もう1個別のベルトがあるみたいなんで、それを獲りに行こうかなと思います」。彼の言う「別のベルト」とは鈴木千裕(クロスポイント吉祥寺)が持つRIZINフェザー級を指すのだろう。MMA転向後は連敗スタート。これで4勝3敗と勝ちが先行していたが、転向後初のKO勝ちは「時代はオレだ」という強烈なインパクトを与えた。

 

「負けたら引退します」と語っていた朝倉未来は、試合後の会見には出席しなかった。対戦した平本はリング上で「とにかく朝倉未来、ありがとう。そして辞めないでください。朝倉未来がいたから情熱を持ってやってこれたし、自分を見つめ直したし、何も言うことはないです。勝てて嬉しいです」と話した。会見でも改めて「辞めないでほしいです。俺も引退撤回したんで、あなたも引退撤回してください」とコメント。またRIZINの榊原信行CEOは慰留する意向を示した。


 パッキャオのRIZIN初参戦となったスタンディングバウトは、相手の“土俵”ながら安保が3分3ラウンドを戦い抜いた。エキシビションマッチという表現を嫌ったパッキャオだが、判定がないためドローという結果となった。互いに決定的な有効打はなかったものの、先述した点を踏まえても実質安保勝利と言ってもいいだろう。


 鈴木千裕の負傷欠場により、急遽出番が回ってきた安保。秋にも現役復帰を果たすと見られているパッキャオにとっては「チューンアップ」の試合だったかもしれないが、安保からすれば世界に名を売るチャンスでもあった。20cm近い身長差のある両者だが、体格差だけで戦い抜けるほど甘くはない、と安保は言う。

「でかいだけで前にガンガン出てくる選手だったら、パッキャオ選手は面白いように打ってくる。そうならないように足を機敏に動かし、入ってくるならその分だけ下がらならない。しかもまっすぐ下がるんじゃなくて、自分の立ち位置、ポジションで避けながら打つ」


 前評判はパッキャオ優位の声が圧倒的に多かった。「ボクシングをやっている、やってきた選手は『安保は1ラウンドで倒されるし、パンチも一発も当たらないし、一発殴られたら終わる』みたいに言われてきて、それは絶対に覆してやろうと思っていた」と安保。ジワリジワリとプレスをかけつつも不用意に危険な距離には飛び込まない。それでも右ストレートを軸に攻めた。


 一方のパッキャオは手数が少なく、強烈な踏み込みからの連打も見られなかった。試合前、当時予定していた対戦相手の鈴木千裕に対し、「ボクシングを学ばせる」と語っていたが、“9分間のレッスン”はあまりに短く、そして内容が薄かった。「イメージと違ったところはなかった。ジャブにカウンターフックがアゴに当たり、今はそこが痛いです。ただ特別パンチが重かったわけじゃないし、想定通りかなと思いました」と安保。パッキャオは「安保は私よりかなり大きく倒しづらかった。それとフロアがボクシングと厚さが違い、動きづらさがあった」と話した。そのどちらも事実なのかもしれないが、噂される現役復帰への不安を膨らませたに過ぎなかった。

 

 世代交代を狙った神龍誠(神龍ワールドジム)、ヒロヤ(JAPAN TOP TEAM)、ケイト・ロータス(フリー)はいずれも扇久保博正(THE BLACKBELT JAPAN)、所英男(リバーサルジム武蔵小杉 所プラス)、RENA(SHOOTBOXING/シーザージム)という経験豊富な選手たちの前に敗れた。

 

 黒星は喫したものの、中でも印象的だったのが、MMA12戦目、戦績も5勝6敗ながらRENAに挑んだケイト・ロータスだ。相手の土俵とも言える打撃勝負に果敢に挑んだ。上背、リーチで数cm分があるからか、臆することなく打ち合った。1ラウンドは「自分の距離で打撃も当てられたので、打撃でいけるやんと思ってしまった」とケイト・ロータス。2ラウンドもスタンドで勝負に挑むが、ロープ際に追い込まれると猛ラッシュに遭い、防戦一方となったところでレフェリーが試合を止めた。

 

 試合直後と会見で悔し涙を流した。今後について「やっていくしかない。まだまだ歴は浅い。さっきも何がアカンかったかとしっかり反省会をした。しっかり練習でつくり直して、またRIZINに出られるように練習していくだけです」と語った。攻め気は見えたが、流れを変えるほどの“必殺技”はなかったように映った。総合的なファイターを目指すのか、特化した何を磨くのか。この試合をターニングポイントにしたいところだろう。

 

 対戦したRENAも左目を腫らし、「すごくガッツがあって、打ち返しにもきた。すごく気持ちが強く、いいものが持った選手だと感じました」と評した。とはいえ、これまで“ジョシカク”を引っ張ってきた1人のRENAが下からの突き上げに易々と席を譲るわけにはいかない。「出された課題をクリアできたかなと。あとはRIZINさんの判断で私にもチャンスが巡ってくることを願っています」。名前こそ挙げなかったが、狙うはRIZINスーパーアトム級女王の伊澤星花(Roys GYM)の首か。SNS上でも伊澤はRENAの発言に反応しており、両者が交わる日はあるのか。伊澤は9月に浅倉カンナ(THE BLACKBELT JAPAN)との防衛戦に臨むことが発表された。早ければ大みそかあたりだろうか。

 

(文・写真/杉浦泰介)

 

BS11では毎週木曜日23時に『ワールドファイトCLIP! Supported by U-NEXT」を放送中! 8月1日(木)の放送では今大会の模様も紹介される予定です。

 

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