リーグ連覇を目指した今シーズンでしたが、前期、後期ともに富山サンダーバーズとの優勝争いに敗れてしまいました。ゲーム差にして前期は2ゲーム、後期は1.5ゲーム。優勝できるかできないかは、ほんの紙一重の差ですが、わずか2〜3ゲームの敗戦が大きく響いてしまいました。
 第一の敗因として挙げられるのは投手力です。15勝(3敗)を挙げた小山内大和(土岐北高−金沢総合科学専門学校−宮城建設−愛媛マンダリンパイレーツ)、11勝(4敗)を挙げた木谷智朗(関東第一高−東京情報大−愛媛マンダリンパイレーツ)と白星が計算できる先発ピッチャーが2人いた富山とは違い、石川ミリオンスターズにはシーズンを通して南和彰(神港学園高−福井工大−巨人−カルガリーバイパーズ)ただ一人。これでは優勝することなどできません。

 さらに、打撃面では昨シーズン以上にパワー不足が目立ちました。昨シーズンは、優勝したとはいえ、打撃成績は3位とふるいませんでした。特に長打率は4球団中最も低く、体力のなさを痛感させられました。そこでオフの最大の課題として体力強化を掲げ、海岸沿いをランニングするなど、体幹を中心に鍛えました。しかし、今シーズンはその成果をあげるどころか、打率、打点なども下回ってしまったのです。パッと見るだけでも、石川は他球団の選手と比べて体格が見劣りしていたことは確かです。

 そこで今オフは、合同トレーニングはせず、共通の課題を与えて各選手に任せる方針をとることにしました。
「体を大きくしてこい!」
 私が選手たちにたった一つ与えた課題です。とにかく体重を増やしてきてほしい。もちろん筋肉で増やすことができれば一番いいのですが、それは2〜3カ月の間では無理なこと。脂肪でもいいから、とにかくひと回りでもふた回りでも体を大きくしてきてほしいのです。

 余談ですが、今の若い選手たちは食べてもなかなか体重が増えません。私が現役時代などは水を飲んだだけでも太ってしまうので、練習を休むことができなかったものですが……。

 2月からスタートするキャンプでは、厳しいトレーニングが待っています。そこで十分に鍛えればいいわけですから、1キロでも多く体を大きくしてきてほしいなと思います。

 さて、12日にはドラフト会議が行なわれました。今回の補強ポイントは、「体格のよさ」と「スピード」でした。今回、指名したのはピッチャー3人、内野手1人、外野手1人の合計5人。指名順もありますので、100%とはいきませんが、ほぼ満点に近かったのではないかと思います。

 なかでも即戦力として期待しているのが、内野手の鈴木康平(春日部共栄−立正大)です。183センチ、83キロと上背もあり、加えて俊足の持ち主。あとは守備がどれだけできるかによっては、即レギュラーとして期待している選手の一人ですね。

 来シーズンはこれまで通り、基本に忠実な正しい練習をして、守り勝つ野球を継続しながら、打撃にはパワーが加えられればと思っています。今シーズンの悔しさをバネに王座奪還を目指しますので、応援よろしくお願いします!


金森栄治(かなもり・えいじ)プロフィール>: 石川ミリオンスターズ監督
石川県金沢市出身。PL学園(大阪)、早稲田大学、プリンスホテルを経て、81年ドラフトで西武に2位で指名され、翌年入団。85年には打率3割1分2厘をマークし、ベストナイン、ゴールデングラブ賞を獲得。88年のシーズン途中に交換トレードで阪神に移籍。93年にはヤクルトに移籍し、代打の切り札として活躍した。96年に現役を引退後は、ヤクルト、西武、阪神、ソフトバンクの打撃コーチに。07年より石川ミリオンスターズの監督に就任し、同年チームを初代チャンピオンに導いた。


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