ホンダのF1撤退、アメリカンフットボールのオンワードの解散、アイスホッケーの西武の廃部、なでしこリーグ・TASAKIの休部……。金融危機に伴う不況の波がスポーツ界にも押し寄せてきました。100年に1度とも言われる経済危機がさらに深刻化すれば、企業スポーツはますます苦況に陥るでしょう。スポーツイベントへのスポンサードも縮小が予想されます。
 一見、ピンチといえる状況ですが、これは従来型の日本スポーツを変革するチャンスと捉えなくてはいけません。つまり企業主体から地域主体のスポーツクラブへの転換です。これまで日本の社会人スポーツクラブの多くは企業のものでした。1つの企業が1つのクラブを支える体制のため、今回のような不況や不祥事が生じれば、どうしても解散や廃部から逃れることはできません。

 しかし、地域のクラブとして複数の企業が支援する体制を構築すればどうでしょう。たとえ一部に撤退する企業が現れたとしても、クラブ自体が消滅する事態は避けられます。活動費を大勢のスポンサーが分担する方式のため、各企業の負担も少なくてすみます。

 まだまだ日本には地域密着型のスポーツクラブを支える環境整備は不十分です。「不景気なのにスポーツなんて」と言われるかもしれませんが、解散・廃部が相次げば多くの選手も路頭に迷うことになります。スポーツが衰退すれば、人々の娯楽が減るだけでなく、移動や、チケット販売、物販などで生じる経済効果もゼロとなってしまいます。雇用や経済対策など緊急課題に手を打つことはもちろん、他の政策とともにスポーツへの施策も並行して進めていかなくてはなりません。

 その緊急課題ともいえる雇用対策ですが、残念ながら国会では何の方向性を示せないまま年を越すことになりました。参議院では雇用対策関連4法案が可決したものの、衆議院では与党の反対で否決。正直、今回の法案は政府が年明けに提出予定の2次補正予算案と重なる点も多い内容でした。与党内でも心の中では賛成したいと考えている議員も多かったのではないでしょうか。少し協議すれば、成立にハードルはなかったはずです。

 しかし、結論は党利党略優先。野党が提出したものに応じるわけにはいかないという“永田町の論理”の前に、国民の生活が置き去りにされてしまいました。メディアでは連日、非正規労働者の雇い止めや解雇のニュースが大きく報道されています。この年末年始をどう乗り切るかが大変な人たちがいるにもかかわらず、国会は“お正月休み”……。国政に携わる者のひとりとして申し訳ない気持ちでいっぱいです。

 この意識のズレはどこから来ているのでしょうか。個人的には議員の待遇が良すぎることも一因ではないかと感じています。10日には330万円のボーナスが議員全員に支給されました。もちろん歳費も通常通りの金額です。もし、衆参合わせて700名を超える議員のボーナスを雇用対策に振り分けることができれば、どれだけの人が助かることでしょう。

 現在の非常事態に対処するには、国会議員も自らの身を切る覚悟が必要です。ところが、歳費の返納は公選法で禁止されている寄付行為にあたるとの理由で事実上、認められません。おかしな制度ですが、議員から変更を求める声は皆無です。今国会でも議員の定数削減や歳費、ボーナスのカットが真っ先に議論されることはありませんでした。

 当選から1年半、無所属議員として自らの意見を発信する機会は限られています。言いたいこともなかなか言えず、今年は耐え忍ぶ1年でした。しかし、実際に国会の中に飛び込んだことで、その立ち回り方はだいぶわかってきました。議員の先輩の中には本当に国政を良くしようと精力的に活動している方もいます。その人たちと連携しながら、「おかしいものはおかしい」と声をあげていこう。これが新たなる年に向けた僕の決意です。

 2009年は9月までに衆議院選挙が行われます。日本漢字能力検定協会が選んだ08年の漢字は「変」でしたが、政治の世界では09年こそ「変」の1年になるでしょう。しかし、ただ「変」わるだけでは意味がありません。「変」わった後に何をするのか、何ができるのか。刻々と「変」わる世界と国内の情勢に政治は先手を打たなくてはいけません。

 09年は新たな政治の「礎」の年。来年もゴールに向かってトップスピードでドリブル突破するつもりです。今年1年間、みなさんにはさまざまご意見、叱咤激励をいただきました。本当にありがとうございました。


友近聡朗(ともちか・としろう):参議院議員
 1975年4月24日、愛媛県出身。南宇和高時代は全国高校サッカー選手権大会で2年時にベスト8入りを果たす。早稲田大学を卒業後、単身ドイツへ。SVGゲッティンゲンなどでプレーし、地域に密着したサッカークラブに感動する。帰国後は愛媛FCの中心選手として活躍し、06年にはJ2昇格を達成した。この年限りで現役を引退。愛称はズーパー(独語でsuperの意)。07年夏の参院選愛媛選挙区に出馬し、初当選を果たした。
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