3月に開催されるWBC(ワールド・ベースボール・クラシック)にビデオ判定が導入されることになった。ホームランに限っての判定だが歓迎したい。

 メジャーリーグは昨年8月、ホームランか否かに関しビデオ判定を導入した。判定が覆った第1号は9月19日、レイズ対ツインズ戦でレイズ、カルロス・ペーニャの放った一打。右中間への打球は最初、観客の妨害による二塁打と判定されたが、審判団がビデオテープをチェックした結果、ホームランと訂正された。
 歴史的な場面に遭遇したレイズの岩村は「メジャーリーグの歴史はすごく長いけれど、その中で一番歴史の短いチームが最初のページを作った」と語った。

 WBCといえば忘れられないシーンがある。前回大会第2ラウンドのメキシコ対米国戦。0対0で迎えた3回裏、メキシコのマリオ・バレンズエラの放った打球は右翼ポールを直撃してグラウンドにはね返った。ボールにはポールの黄色の塗料が付着していた。明らかなホームランだ。
 ところが米国人のボブ・デービッドソン審判員はインプレーと判断し、バレンズエラの一打は“幻のホームラン”となってしまった。
 この判定に怒ったメキシコが発奮し、米国を1対2で撃破。失点率で米国を上回った日本が決勝トーナメントに進出するというドラマを演出したことは記憶に新しい。

 日本でもホームランをめぐる判定に関してのみビデオの力を借りてはどうかという意見がある。残念ながら現時点では「人間よりも機械の判断を優先するのはおかしい」という声が強く、導入にはしばらく時間がかかりそうだ。
 しかし、と思う。大相撲だって1969年にビデオ判定を導入したことで“微妙な一番”が減ったのだ。プロ野球も“科学の眼”をもっと有効に活用すべきではないか。トラブルを繰り返す現状はどう見ても異常だ。

<この原稿は2009年2月14日号『週刊ダイヤモンド』に掲載されたものです>

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