1日から立山でのキャンプがスタートし、チームが本格的に始動しました。初日こそ天候に恵まれ、グラウンドでの練習を行なうことができましたが、その後は雨や雪が降ったり止んだりと北陸地方ならではの変わりやすい天気が続いています。気温も低く、ほとんど室内での練習となっていますが、選手たちは元気いっぱいにトレーニングに励んでいます。
 今シーズンは昨シーズンより約1週間早く開幕します。他球団では2月から全選手を対象とした合同自主トレを始めたり、グラウンドで思いっきり練習できる環境を求めて温暖な地方でキャンプを張っています。その点、富山は少し遅れてのスタートとなりました。しかし、オフ前に「初日から実技練習ができるくらい体をつくっておくように」という私の指示通り、選手たちはきちんとトレーニングをしてきたようです。初日から動きもよく、充実したキャンプが送れています。

 さて、昨シーズンはリーグ優勝を達成したとはいえ、今シーズンも楽観視することはできません。野原祐也(大宮東高−国士舘大−富山−阪神)、小園司(東灘高−阪南大−富山−神戸9クルーズ)、廣田嘉明(桐蔭学園高−明治学院大−サーファーズパラダイスBC−愛媛マンダリンパイレーツ)、草島諭(高岡一高−富山国際大)、川端英治(築上中部高−九州共立大)と昨シーズンのレギュラーが5人も抜けたチームですから、ほとんど一からつくり上げなければならないのです。

 そういったチーム状態の中、野原とともに昨シーズン全72試合出場した町田一也(倉吉北高−NOMOベースボールクラブ)と塚本雄一郎(富山商高−三晶技研)には大きな期待を寄せています。3年目を迎えた町田は「今年が最後のチャンス」という強い思いで臨んでいることでしょう。このオフにはわざわざ練習拠点である立山球場付近に引越ししたことからも、彼の並々ならぬ決意が見てとれます。

 一方、塚本は野手のキャプテンです。年齢だけを見れば、塚本よりも年上はいるのですが、富山出身者で地元の期待の星でもあり、責任感の強い彼ならやってくれるだろうという思いで任命しました。投手キャプテンの木谷智朗(関東第一高−東京情報大−愛媛マンダリンパイレーツ)とともに、しっかりとチームを引っ張って欲しいと思っています。

 期待しているのは既存選手ばかりではありません。今年は7人の新人選手が入団しました。前述したようにレギュラー陣がこぞってチームを去ってしまいましたから、彼らの活躍なくして連覇はないと言っても過言ではありません。特に守りの要であった捕手・廣田の穴を誰が埋めるのかはチームにとって死活問題です。

 レギュラー候補としては、この3月に大学を卒業する成瀬友登(不二越工高−富山国際大)と茅場大陽(登録名:大陽、千葉工業大)の2人が挙げられています。今はまだ両者ともにほとんど差はありません。このキャンプ、オープン戦で互いに切磋琢磨しながら、アピールしてもらいたいと思っています。

 彼らに加えて松橋良幸(長野東高−駒澤大−高知ファイティングドッグス−信濃グランセローズ)も獲得しました。今年28歳とベテラン組に入る松橋ですが、実戦経験は豊富ですから、若い2人のいいお手本となってほしいと思っています。

 また、野原の穴を埋める大砲役とにらんでいるのが、身長186センチ、体重100キロと大柄な体格の持ち主、野口翔也(日生学園第二高)です。まだ19歳と若く、将来が有望な選手。野原の “おかわりくん”にちなんで“もっとおかわり”という愛称をつけました。さらに野原以上の選手になってもらいたいという願いから、背番号は44(野原は33)に決めました。

 野原のような足はないものの、ファーストの守備もなんなくこなしますし、何よりも魅力なのが長打力。荒削りではあるものの、バットもしっかり振れていますし、とにかく当たれば飛びます。イメージ的には埼玉西武の中村剛也や横浜の村田修一をもっとデカくした感じです。とにかくパワーはありますから、小さくまとまることなく、大きく育てていきたいと思っています。

 さて、今シーズンのチームスローガンは「富山力」に決定しました。連覇を目指す富山にとって、地元の方たちの応援はエネルギーの源です。決して我々監督やコーチ、選手だけで達成できるものではありません。県民の皆さんとともに、一丸となって目指していこう、そんな気持ちが込められています。

 現在、世界は100年に一度の大恐慌という荒波の中で大変な時期を迎えています。その余波は社会人野球の名門・日産自動車が野球部の休部を決定するなど、スポーツ界にも押し寄せています。

 そんな中、我々は給料をいただきながら野球ができる環境にあるわけです。このことに感謝しなければなりません。そして選手には県民の皆さんのサポートがあってこそ、我々は野球をすることができているのだということをより強くもってもらいたいのです。そうした感謝の気持ちがグラウンドでの必死なプレーにつながるのです。

 開幕まであと約1カ月。直前の関西キャンプ(3月30日〜4月5日)では、今シーズンからスタートする関西独立リーグの紀州レンジャーズ、NOMOべースボールクラブ、中日(ファーム)との練習試合も行なう予定です。こうした実戦経験も積みながら、チームとしての結束力を高め、シーズンに臨みたいと思っています。

 

鈴木康友(すずき・やすとも)プロフィール>:富山サンダーバーズ監督
1959年7月6日、奈良県出身。天理高から77年にドラフト5位で巨人に指名され、翌年入団。その後、西武、中日に移籍し、90年シーズン途中に再び西武へ。主に守備固めとして活躍し、92年に引退。その後、西武、巨人、オリックスのコーチに就任。05年より茨城ゴールデンゴールズでコーチを務め、07年より富山サンダーバーズ初代監督に就任した。


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