「無視します。そんなのは勝手にボールにすればいい」
 これはもう審判団への宣戦布告と言ってもいいだろう。

 キャンプでのシート打撃登板中に、投球動作に入るまでに15秒以上経過したとして「ボール」と判定されたダルビッシュ有(北海道日ハム)が堂々と言い放った。
「15秒ルール」は試合時間短縮を目的に今季から導入されるもので、いわば目玉となる新ルールと言っても過言ではない。
 それを真っ向から否定されたのだから加藤良三コミッショナーもおもしろくない。
「試合時間短縮は国際的な趨勢。客観的な基準がないと徹底は図れない」
 実は公認野球規則には「投手が打者に正対してから12秒以内」というルールが設けられている。これを正確に適用してこなかったから問題がこじれたのではないか。

 ダルビッシュの言い分もわからないではない。バッターはマシーンを使って一日中、打撃練習をすることができる。バッティング投手もいる。
 しかしピッチャーの練習法は基本的には昔とかわっていない。ただでさえピッチャーが不利なところへもってきて「15秒」などというルールを設けられたら「オマンマの食い上げだ」というのが彼の本音だろう。
 とはいえ、試合時間の短縮はNPBの対外的な公約でもある。加藤コミッショナーもエコへの取り組みを強化したいと公言している。ダルビッシュも試合時間短縮に表立って反論することはできまい。

 基本的に「15秒ルール」に私は賛成である。野球は“間”のスポーツだが実情は“間延び”である。3時間以内での試合終了を目指すべきだ。
 その一方でピッチャーだけシワ寄せがくるのは気の毒だ。「15秒ルール」を導入するかわりにストライクゾーンをもう少し広げてみてはどうか。
 これならダルビッシュのみならずピッチャーのほとんどが賛成に回るはずだ。

<この原稿は2009年3月2日号『週刊大衆』に掲載されたものです>

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