WBC東京ラウンド、日本と韓国は最大で2回戦う可能性がある。韓国がアジアで最大のライバルであることは言を俟たない。

 得点源は4番・金泰均、5番・李大浩の巨漢コンビ。体重はともに100キロ。今回は代表から漏れたが長年、韓国の中軸を担った金東柱もドカベンタイプだった。走攻守三拍子揃った選手が好まれる日本球界にあっては異色のタイプである。強いて、この手の選手を探せば埼玉西武の“おかわり君”こと中村剛也くらいか。

「純パの会」なるサークルに所属していた旧知の学者がこんなことを言った。「韓国代表を観ていると、昔のパ・リーグの野球を思い出すんだ」「どのあたりが?」「昔のパ・リーグの選手には個性があった。足で生きた広瀬叔功、福本豊、島田誠、打つことだけだったら土井正博、長池徳二、大杉勝男……。皆、一芸に秀でていた。中途半端に三拍子揃っていないところが韓国代表のいいところだな」。妙な褒め方もあるものだと感心した。「では中西太のような三拍子も四拍子も揃った選手は?」「ウーン、それは韓国代表にはいないな」。

 昔話に花を咲かせている時ではない。金泰均や李大浩を封じるにはどうすべきか。韓国プロ野球で23年のコーチ、監督経験を持つ韓国球界きっての事情通に話を聞いた。その人物は日本のプロ野球事情にも精通している。
「金泰均や李大浩が戸惑うとしたらロッテのアンダースロー、渡辺俊介ですね。あんなに真下から、しかも緩いボールを内外角にコントロールできるピッチャーは今の韓国にはいない。同じ下手投げでも林昌勇は速いですから。韓国の強打者は伝統的に後ろ足に重心を乗せ、“ため”をつくってボールをしばき上げるタイプが多い。だから速いボールには対応できる。だけどあんなに緩いボールを投げられたら軸足に体重が残せないでしょう。しかも、初めて目にする軌道。WBCを通じてバッティングがガタガタになってしまう恐れがあります」

 周知のように渡辺俊介は第1回WBCでも韓国代表に2試合10回2/3を投げ、失点はわずか1と好投している。
「対策を練ろうにも練りようがないですよ。だってあんなピッチャー、韓国にはいませんから」。さて幕張のサブマリン、どこでどう使うか。

<この原稿は09年3月4日付『スポーツニッポン』に掲載されています>

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