はじめまして。今シーズンより石川ミリオンスターズのプレーイングコーチとなった森慎二です。僕は西武からタンパベイ・デビルレイズ(現レイズ)に移籍後、肩の故障もあって昨年までリハビリを兼ねてトレーニングを続けてきました。肩の調子もだいぶ良くなり現役復帰の目途が立ったため、今回「コーチ兼任」での入団を決意した次第です。金森栄治監督とは西武時代、僕が選手として、金森監督が打撃コーチとして一緒だったことが縁で、石川にお世話になることになりました。プレイヤーとしては若い選手に負けないよう、そして指導者としてはチームが優勝できるよう精一杯頑張っていきたいと思っています。
 独立リーグの存在は、四国アイランドリーグ(現・四国九州アイランドリーグ)ができた頃から知っていました。とはいえ、僕自身は2006年シーズンから約2年間、米国に滞在していたこともあり、実情やレベルなどに関しての知識はほぼゼロでした。NPBやメジャーともシーズンの時期が全く重なっていますので、僕たち選手が観る機会はほとんどありません。今でこそ、NPBに選手を輩出したり、練習試合などでの交流がありますが、当時接点は皆無に近かったので、情報が入ってこなかったのです。

 実は入団前、「想像をはるかに超えていた」という創設1年目のBCリーグのレベルについては聞いていました。しかし僕自身、それ以上のイメージはもたないようにしていました。なぜなら先入観を抱かずに、自分の目で現場や選手を見て判断し、理解したかったからです。実際、初めてキャンプで選手たちの動きを見たわけですが、やはり3年目ともなると違いますね。課題はあるものの、伸びしろを十分に感じさせてくれました。

 さて、シーズンに向けて3月1日から石川県立野球場でのキャンプをスタートさせたわけですが、走り込みなどフィジカル強化に重点を置いてトレーニングを積んできました。投手にとって大事なことは「ボールの勢い」と「コントロール」の2点。これらを身につけるためには、まず全身を使って投げることが重要です。

 若いピッチャーがよく勘違いしやすいのが、腕を思いっきり振りさえすれば、勢いのあるボールを投げられると思っていること。しかし、単に腕だけを振っても、それは腕、つまり体の一部分の力に過ぎません。全身の力をボールに伝えるには、当然全身を使って投げなければならないのです。そのためには自分自身の体を支える下半身の強さが不可欠です。また、下半身の強さがあれば、バランスを保つことができますので、それだけでもコントロールはよくなります。この季節の金沢はまだまだ寒く、雨が降ることも多くあります。悪天候続きでなかなか外で思いっきり走ることができませんが、選手も僕も頑張っています。

 チームには若い投手も多く、これからが楽しみな選手がたくさんいます。投手陣の平均年齢は24.7歳。10代の選手も2名います。見たところ、投手としての素質も十分。まだまだ不足している体力をつけていけば、さらに活躍できることでしょう。

 なかでも今年3月に高校を卒業したばかりでチーム一の若手、中園涼平(津幡高)は身長170センチと小柄ですが、ボールにスピードもキレあり、将来有望な投手の一人です。変化球は本人曰く、カーブ、スライダー、カットボール。しかし、彼の最大の良さは真っすぐで空振りを取れること。この1年でどれほど成長できるか、非常に楽しみです。

 4月11日の開幕まであと半月となりました。先週からはオープン戦も始まり、いよいよ実戦モードに突入です。リーグ王座奪還を目指し、僕自身もしっかりと準備していきたいと思っていますので、応援よろしくお願いします。
 

森慎二(もり・しんじ)プロフィール>:石川ミリオンスターズプレーイングコーチ
1974年9月12日、山口県出身、岩国工高卒業後、新日鉄光、新日鉄君津を経て、1997年にドラフト2位で西武に入団。途中、先発からリリーバーに転向し、2000年にはクローザーとして23セーブを挙げる。貴重なセットアッパーとしてチームを支えた02、03年には最優秀中継ぎ投手に輝いた。05年オフ、ポスティングシステムによりタンパベイ・デビルレイズ(現レイズ)に移籍。2年間のメジャー契約を結ぶも、オープン戦初登板で右肩を脱臼。07年、球団から契約を解除されたものの、復帰を目指してリハビリを続けてきた。今季より石川ミリオンスターズのプレーイングコーチに就任した。


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 今回は石川・森慎二プレーイングコーチのコラムです。「西武時代に見る理想のコーチ像」。ぜひ携帯サイトもあわせてお楽しみください。
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