最下位に終わった昨シーズンの悔しさを胸に「今年こそは……」と意気揚々と臨んだ今シーズン。若いチームだけに勢いにのれば、と思っていたのですが……。26日現在、4勝13敗3分け。5月2日の石川ミリオンスターズ戦以来、勝ち星を挙げられていません。目下、3つの引き分けをはさんで10連敗中。なかなかトンネルから抜け出すことができません。
 開幕前は十分な手応えを感じていました。昨シーズン、福井は前後期ともに地区最下位。その屈辱を味わった2年目の選手たちが奮起し、キャンプ時には必死にトレーニングを行なってレベルアップを図りました。新人選手にもいい影響を与えてくれたと思います。その甲斐あって、オープン戦でも石川に完封勝ちするなど、強豪チームにもそれなりに勝負することができるまでに成長のあとを見せてくれていたのです。

 今シーズン、チームの大きなテーマとしては「守り勝つ野球」を掲げました。昨シーズンはリーグ最多となる86ものエラーを数えましたが、その要因には守備の柱が不在だったということが挙げられます。そこで今シーズンはセンターラインを軸に守備を強化しました。当初の構想ではキャッチャー丸木脩平(敦賀気比高−横浜商大)、ショート山本祐士(横浜商大付高−横浜商大)、センター慶家誠太朗(鯖江高−三重中京大−福井MD)で固める予定でした。しかし、予想以上に外野手がレベルの高い競争をしてくれた一方で、内野が手薄だったため、内野も守れる慶家をセカンドに回し、原田和幸(聖望学園−大東文化大)をセンターに置きました。

 さて、開幕してみると4月は3勝3敗と五分できたわけですが、5月に入った途端に負けが混むようになってしまいました。それでも引き分けや3点以内の接戦が多く、勝利まであと一歩という試合が続きました。もう少しで光が見えてきそうな気配がしていたところだったのですが、ここにきて痛い敗戦を喫してしまいました。

 24日の石川戦、1−1で迎えた4回裏、1死満塁から1点を失ったものの、次打者を内野ゴロに打ち取り2死としました。次も内野ゴロとしたのですが、ファーストへの悪送球で一気に3人が返り、1−5とされてしまったのです。結局、これで試合が決まってしまいました。もし、1−2でいっていたら、その後の展開も変わっていた可能性は十分にあったのです。せっかくいい流れできていたのに、自分たちのミスで再び嫌なムードをつくってしまいました。

 10連敗というのは昨シーズンもなかったことですので、選手のモチベーションは下がり気味です。開幕して1カ月が過ぎ、疲労もたまってきていることでしょう。こんな時に経験豊富なベテラン選手が何人かいれば違うのでしょうが、若いチームだけにうまく切り替えができていません。今のところ、チームのまとめ役はキャプテンの慶家ただ一人。彼に全ての責任が集中してしまっています。丸木や山本、原田あたりにもう少しリーダーシップを発揮してもらえたらと思っているのですが……。

 思うようにいかないのが野球とはいえ、もう10回も反省しているわけですから、選手自身が勝つにはどうしなければいけないのかを真剣に考えなければいけません。実力的には他のチームと全く遜色ないわけです。ところが、その実力をグラウンドで全部出し切っていないのです。もちろん、結果は監督である僕の責任です。しかし、選手が一球、一打席にもっと覇気のあるプレーをしなければ、勝機は見えてきません。最近ではファンの皆さんからも「元気がないね」と言われるようになってしまいました。入場料を払ってまで球場に足を運んできてくれているわけですから、プロとしてはどんな時も一生懸命プレーしている姿を見せなければいけません。

 観客の中にはたくさんの子どもたちがいます。その子どもたちにとって、何も強いチームばかりがかっこいいと映るわけではありません。人の心を動かすのは全力疾走、全力プレー。それこそが子どもたちが憧れ、目指す姿だと僕は思います。ファンはもう我慢の限界にきていることでしょう。それでも応援し続けていただいていることに感謝しながら、選手たちを信じ、今が耐え時と思って鼓舞し続けていきたいと思っています。


天野浩一(あまの・こういち)プロフィール>:福井ミラクルエレファンツ新監督
1979年4月12日、香川県出身。高松東高、四国学院大を経て2002年、ドラフト10巡目で広島に入団。2年目には貴重な中継ぎとして49試合に登板した。06年オフに自由契約となり、翌年に四国アイランドリーグの香川オリーブガイナーズに入団。前期は先発、後期はリリーバーとして41試合に登板し、7勝6敗13セーブの好成績で最多セーブを獲得。リーグ優勝および石川とのチャンピオンシップでの優勝に大きく貢献した。08年はプレーイングコーチとして福井に入団。23試合に登板し、0勝2敗8セーブと主に抑えとして活躍した。10月に藤田平前監督の後任として新監督に就任し、リーグ一の若き指揮官として采配をふるう。


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