第53回 信濃・今久留主成幸監督「発展途上だから伸びしろがある!」
今月から後期が開幕しました。前期は14勝19敗3分で上信越地区最下位に終わってしまいましたが、決して優勝した群馬ダイヤモンドペガサスや2位の新潟アルビレックスBCに力が劣っているとは思っていません。対戦成績を見ても群馬には5勝6敗1分でしたし、新潟には6勝5敗1分と勝ち越しています。また、0勝4敗と大きく負け越してしまった北陸地区の富山サンダーバーズに対しても力負けしたという印象はもっていません。選手たちも苦手意識はさほどもっていないことでしょう。選手個々の能力を見ても、他球団との差はほとんどなく、十分に勝つことができるチームへと成長しています。ですから、後期はその自分たちの力を試合で発揮できるかどうか、ここが最大のポイントとなってくると思います。
前期、信濃グランセローズのチーム打率はリーグ2位でした。ところが、打点となると同5位。つまりチャンスはつくれても、それをいかすことができないのです。その原因はメンタル面と戦術面にあります。
まず、メンタル面においてですが、チャンスの時に「打たなければいけない」というプレッシャーがマイナス面に働き、力みが生じてしまっているのです。これを解決するには、日常からバットを振って、振って、振りぬいて、「自分はこれだけやってきたんだから打てる!」という自信をもつこと。プレッシャーをプラスへと導くには、これしかありません。
そもそもプロを目指すなら、1日1000本近く振り込むのは当然のこと。ところが、選手たちは毎日振り込むということが習慣化されていませんでした。ですから、「1000本」という数字を言われても、イメージがわかず、どうしていいのかわからなくなってしまうのです。加えてそこまで振り込んだ経験がないため、体がついていきません。わずか200本でも数日の内にわき腹を痛めてしまった選手がいたほどです。
一方、戦術という点ではまだまだ経験不足が目立ちます。高校や大学でいくつもの修羅場をくぐってきた選手は、対戦経験が豊富。ですから「こういう場面ではこういう配球をしてくるだろう」「変化球主体のピッチャーだから、ここは変化球狙いだ」というような状況判断ができるようになります。しかし、信濃には経験豊富な選手ばかりではありません。失敗も成功も、両方の経験が少ないため、判断能力がまだ養われていない選手も少なくないのです。もちろん、私たち指導者は相手投手の傾向やヒントを与えます。しかし、実際バッターボックスで勝負するのは本人自身なのです。ですから、最後は自分自身での判断が必要になるわけです。
しかし、選手たちは皆、本当に素直で、練習にも一生懸命取り組んでいます。少しずつではありますが、着実にレベルはアップしており、私自身もそれなりに手応えを感じています。なかでも著しい成長を見せているのが、3年目の村上正祐(塚原青雲高)です。もともと長打力のある選手でしたが、ホームランは1年目1本、2年目0本と昨季まではなかなか力を発揮することができませんでした。ところが、今季は既に6本を数え、ランキングではリーグ2位を誇っています。
躍進の理由は体の使い方と打席に入る前の準備にあります。村上に限ったことではありませんが、体を十分に使い切らずに、それこそ持って生まれた才能だけでこれまでやっていたのです。そこで村上には昨秋からバットの構えやスイングのかたち、さらには股間節の重要性を説き、重心の置き方やバランスを修正しました。
また、ネクストバッターズサークルでは前の試合や打席のことを振り返りながら、タイミングを合わせたりするなど、常に準備は欠かすことはできません。しかし、村上は昨季までネクストバッターズサークルでピッチャーをほとんど見ておらず、自分のスイングのチェックをしたりしていたのです。もちろん、練習では自分自身をよく見ることは大切ですが、試合となれば対戦するのは相手投手。調子の良し悪しも含めて、観察・研究を怠ってはいけません。村上には今も口を酸っぱくして言っています。
正直言えば、どれも基本的なことばかり。本来であれば高校、大学でやってきて当然のことなのです。ところが、村上をはじめ、多くの選手がこういったことを今、学んでいるというのが実状です。プロというには程遠いレベルであり、ファンの皆さんには不甲斐ない思いをさせてしまっていることは本当に申し訳なく思っています。しかし、プラスに考えれば、今までやってこなかったことが多い分、伸びしろがあるということ。今後、選手がどこまで成長してくれるのか。多くの可能性を秘めているだけに、非常に楽しみです。
<今久留主成幸(いまくるす・なりゆき)プロフィール>:信濃グランセローズ監督
1967年5月10日、大阪府出身。PL学園高校では3年夏に桑田真澄とバッテリーを組み、全国制覇を達成。明治大学を経て1990年にドラフト4位で横浜(当時大洋)に入団した。95年に西武にトレード移籍し、99年に現役を引退。スコアラー、スカウトを経て2006年、信濃グランセローズのゼネラルマネジャーに就任。今季より監督としてチームの再建を図る。
★携帯サイト「二宮清純.com」では、「ニッポン独立リーグ紀行」と題して四国・九州アイランドリーグ、BCリーグの監督、コーチ、選手がそれぞれの今をレポートします。
今回は信濃・今久留主成幸監督のコラムです。「松下幸之助と桑田の共通点」。ぜひ携帯サイトもあわせてお楽しみください。
前期、信濃グランセローズのチーム打率はリーグ2位でした。ところが、打点となると同5位。つまりチャンスはつくれても、それをいかすことができないのです。その原因はメンタル面と戦術面にあります。
まず、メンタル面においてですが、チャンスの時に「打たなければいけない」というプレッシャーがマイナス面に働き、力みが生じてしまっているのです。これを解決するには、日常からバットを振って、振って、振りぬいて、「自分はこれだけやってきたんだから打てる!」という自信をもつこと。プレッシャーをプラスへと導くには、これしかありません。
そもそもプロを目指すなら、1日1000本近く振り込むのは当然のこと。ところが、選手たちは毎日振り込むということが習慣化されていませんでした。ですから、「1000本」という数字を言われても、イメージがわかず、どうしていいのかわからなくなってしまうのです。加えてそこまで振り込んだ経験がないため、体がついていきません。わずか200本でも数日の内にわき腹を痛めてしまった選手がいたほどです。
一方、戦術という点ではまだまだ経験不足が目立ちます。高校や大学でいくつもの修羅場をくぐってきた選手は、対戦経験が豊富。ですから「こういう場面ではこういう配球をしてくるだろう」「変化球主体のピッチャーだから、ここは変化球狙いだ」というような状況判断ができるようになります。しかし、信濃には経験豊富な選手ばかりではありません。失敗も成功も、両方の経験が少ないため、判断能力がまだ養われていない選手も少なくないのです。もちろん、私たち指導者は相手投手の傾向やヒントを与えます。しかし、実際バッターボックスで勝負するのは本人自身なのです。ですから、最後は自分自身での判断が必要になるわけです。
しかし、選手たちは皆、本当に素直で、練習にも一生懸命取り組んでいます。少しずつではありますが、着実にレベルはアップしており、私自身もそれなりに手応えを感じています。なかでも著しい成長を見せているのが、3年目の村上正祐(塚原青雲高)です。もともと長打力のある選手でしたが、ホームランは1年目1本、2年目0本と昨季まではなかなか力を発揮することができませんでした。ところが、今季は既に6本を数え、ランキングではリーグ2位を誇っています。
躍進の理由は体の使い方と打席に入る前の準備にあります。村上に限ったことではありませんが、体を十分に使い切らずに、それこそ持って生まれた才能だけでこれまでやっていたのです。そこで村上には昨秋からバットの構えやスイングのかたち、さらには股間節の重要性を説き、重心の置き方やバランスを修正しました。
また、ネクストバッターズサークルでは前の試合や打席のことを振り返りながら、タイミングを合わせたりするなど、常に準備は欠かすことはできません。しかし、村上は昨季までネクストバッターズサークルでピッチャーをほとんど見ておらず、自分のスイングのチェックをしたりしていたのです。もちろん、練習では自分自身をよく見ることは大切ですが、試合となれば対戦するのは相手投手。調子の良し悪しも含めて、観察・研究を怠ってはいけません。村上には今も口を酸っぱくして言っています。
正直言えば、どれも基本的なことばかり。本来であれば高校、大学でやってきて当然のことなのです。ところが、村上をはじめ、多くの選手がこういったことを今、学んでいるというのが実状です。プロというには程遠いレベルであり、ファンの皆さんには不甲斐ない思いをさせてしまっていることは本当に申し訳なく思っています。しかし、プラスに考えれば、今までやってこなかったことが多い分、伸びしろがあるということ。今後、選手がどこまで成長してくれるのか。多くの可能性を秘めているだけに、非常に楽しみです。
<今久留主成幸(いまくるす・なりゆき)プロフィール>:信濃グランセローズ監督1967年5月10日、大阪府出身。PL学園高校では3年夏に桑田真澄とバッテリーを組み、全国制覇を達成。明治大学を経て1990年にドラフト4位で横浜(当時大洋)に入団した。95年に西武にトレード移籍し、99年に現役を引退。スコアラー、スカウトを経て2006年、信濃グランセローズのゼネラルマネジャーに就任。今季より監督としてチームの再建を図る。
★携帯サイト「二宮清純.com」では、「ニッポン独立リーグ紀行」と題して四国・九州アイランドリーグ、BCリーグの監督、コーチ、選手がそれぞれの今をレポートします。今回は信濃・今久留主成幸監督のコラムです。「松下幸之助と桑田の共通点」。ぜひ携帯サイトもあわせてお楽しみください。