韓国の怒涛の逆襲が始まった。まず後半39分、右サイドで粘った李基珩のファーサイドへのセンタリングを、FWの崔龍洙がつなぎ、最後は途中から入った徐正源が頭で叩き込み同点。

 さらにその3分後、名波浩のトラップミスを李基珩が拾い、崔龍洙がフリーになっている李敏成へ横パス。李が鋭く左足を振り抜くと、GK川口能活の前でボールは小さくバウンドし、指先をすり抜けるようにゴールネットに突き刺さった。1対2。

 試合後、李敏成は語った。
「マークしていた呂比須が抜け、フリーで動くことができた」

 なぜ交代の対象が呂比須だったのか。呂比須は得点こそあげられなかったものの、終始、無言のプレッシャーを韓国DF陣に与え続けていた。李敏成は課せられた任務に追われるあまり、ほとんど攻撃に参加することができなかった。

 さらに加茂はもうひとつ小さなミスを犯していた。秋田を投入した際の指示は「高正云をマークせよ」というものだったが、彼のターゲットはその直後にベンチに退いてしまった。

「高正云は引っ込みましたよ。いいんですか?」 コーチの岡田武史が念を押すと、加茂はこう答えたという。
「岡ちゃん、もうええわい」

 ゲームプランの欠如が破局をもたらしてしまったのである。

※このコーナーでは各スポーツの栄光の裏にどんな綿密な計画、作戦があったのかを二宮清純が迫ります。全編書き下ろしで毎週金曜日にお届けします。



※二宮清純が出演するニッポン放送「アコムスポーツスピリッツ」(月曜19:00〜19:30)好評放送中!



◎バックナンバーはこちらから