「ガラパゴス携帯」という言葉がある。国内市場だけに特化して競争を繰り広げているうちに世界市場から取り残されてしまった日本製携帯電話のことを指す。
 サッカーのJリーグも、このままでは「ガラパゴスリーグ」になってしまうのではないか。そんな懸念が頭をよぎる。
 この3月、Jリーグ将来構想委員会(鬼武健二委員長=Jリーグチェアマン)は日本サッカー協会の犬飼基昭会長が提起していたシーズンの秋春制について降雪地でのインフラ不整備などを理由に「移行せず」と結論付けたことは記憶に新しい。だが犬飼会長の指示により、現在、再検討が進んでいる。
 再検討の背景には何があったのか。犬飼会長は語る。「(秋春制に)移行した場合のデメリットについていろいろな意見が出ましたが、どれも数字的な裏付けに乏しい。たとえば“観客が減る”というが、本当に減るのか。むしろ(移行した場合)デーゲームが多くなり観客が増えるという意見もある。それらを全て試算した上で10月に結論を出したいと考えています」

 選手のコンディションを考えた場合、猛暑の夏を避けることができる秋春制の方がいいに決まっている。にもかかわらず、事がすんなり運ばない裏には雪国対策がある。これがネックになっている。降雪や厳寒に耐え得るスタジアムのインフラ整備には莫大な資金がかかるといわれている。
 では、いったいどのくらいの資金が必要なのか。自治体が財政負担を嫌うのは想像に難くない。だが、これとていつかはやらなければならない問題だ。それでなくても日本のスポーツ施設は中身が貧弱だと言われている。不況対策のための公共投資として道路やダムに巨費を投じるのなら、少しはスポーツ施設に回してもらいたい。あるいはtotoの上がりをスタジアム整備に振り向けるという手もある。

 折りも折、米国のバラク・オバマ大統領とFIFAのゼップ・ブラッター会長は2018、22年に米国が招致しているW杯開催について会談を行なった。その席でブラッターは米国の春秋制がサッカー発展の阻害要因になっていることを指摘した。もはや他人事ではないと思ったのは、私だけか。

<この原稿は09年7月29日付『スポーツニッポン』に掲載されています>
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