21日、前期に続いての優勝を決めることができました。これもひとえに応援してきていただいたファンの皆さんのおかげです。本当にありがとうございます。そして、金森栄治監督が1年目からずっと言い続けてきた「ピッチャーを中心とした守り勝つ野球」を選手が実践してきたからこその賜物だと思っています。
 もちろん、打つ方も昨季以上の成長がうかがえます。特に、ここにきて集中打が出るようなりました。これは選手たちにつなぎの意識が強くなってきていることの表れ。技術もさることながら、チームバッティングを心がける選手が増えてきているのです。

 さて、後期優勝の最大のポイントとなったのは、8月28〜30日に行なわれた富山サンダーバーズとの3連戦。ここで2勝1敗と勝ち越したことが非常に大きかったと思います。とはいえ、簡単な試合ではありませんでした。3連戦の初戦は1−7の大敗。やはりピッチャーが大量失点をしてしまうと、強打の富山には勝つことはできません。試合後の金森監督の「まずは守りからいこう」という言葉に、チームは改めて自分たちが勝つには守備だという意識を強めたことでしょう。29、30日はともに接戦となりましたが、2試合ともに1点差を守り抜いて連勝することができました。そして、これで石川に優勝マジック10が点灯したのです。

 ちょうどこの頃、レギュラーの座を取り戻したのが座親孝一(福岡工大城東高−専修大)と佐野憲一(足羽高−福井工大)です。座親は開幕前から監督にも期待されていた選手の一人でしたが、なかなか調子が上がらず、前期終了間際からはレギュラーの座を外されていたのです。しかし、他の選手の調子が下がってきたことで、監督はもう一度彼をスタメンに起用し始めました。バットの方ではまだ本調子ではありませんが、同期でもある僕の目には確かな成長がうかがい取れます。

 実は座親を今季のキャプテンに推薦したのは僕です。もともと技術的には高いものをもっている選手ですが、精神面に弱さがありました。そこでもう一つステップアップしてほしいという願いから、彼をキャプテンにしてはどうかと監督に相談したところ、賛成してもらうことができました。

 キャプテンになった彼の言動は、昨季までとはまるで違います。例えば、これまで彼はスタメンから外れると、自分のことしか考えられず、ひどく落ち込んだりしていました。しかし、今ではたとえベンチにいても、選手たちに積極的に声をかけていますし、ゲームに出れば、ライトから声を張り上げて、周りを鼓舞しています。打順も1番であることが多い座親ですから、プレーオフではバットでもチームを引っ張ってくれることを期待しています。

 一方、佐野ですが、彼にはパワーがない分、コツコツと小技や足を使って相手ピッチャーが嫌がるようなバッターになってほしいと思っています。しかし、本人は遠くに飛ばしたいという思いが強く、大振りする傾向があります。せっかくいいものをもっているのに、それをいかしきれていない。非常にもったいないなぁと思っているのですが、選手にとって意識改革はそう簡単なことではありません。しかし、自分がどこを目指しているのかを考えれば、できるはずです。彼にはぜひ、粘ってピッチャーに球数を一球でも多く放らしたり、一昨年、盗塁部門でリーグ2位の足で塁上をかき回したり……そんな職人的なバッターになってほしいと思っています。

 さて、26日からはプレーオフが始まります。僕はリーグ初年度の一昨年、四国アイランドリーグ(現四国・九州アイランドリーグ)の優勝者、香川オリーブガイナーズとのグランドチャンピオンシップを経験しました。1勝3敗と優勝することはできませんでしたが、初めてのプレーオフで学んだことも数多くありました。なかでも最も重要だと感じたのはミスをしないこと。特に全て一番最初が肝心です。「初戦、初回、初球」。最初につまづいてしまうと、後手後手になってしまうのです。

 昨年、プレーオフを経験した富山もそのことはよくわかっていることでしょう。短期決戦ならではの難しい試合になると思いますが、「守り勝つ野球」をして、必ず頂点に立ちたいと思っています。みなさん、応援よろしくお願いします!

山出芳敬(やまで・よしたか)プロフィール>:石川ミリオンスターズコーチ
1983年4月3日、石川県出身。星陵高校、京都学園大学出身。卒業後は茨城ゴールデンゴールズに所属した。リーグ初年度の2007年、石川に入団。2年間、全試合に出場した。1年目の07年には全72試合に出場し、打率3割1分6厘、打点34、盗塁8(ベスト10)をマーク。チームの優勝に大きく貢献した。昨季限りで現役を引退し、今季よりコーチに就任した。

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