豊富なエピソードで読ませる

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 民主党・小沢一郎代表秘書が違法献金を受け取った疑いで逮捕された事件を受け、著者は自らのブログで皮肉を込めてこうつづっている。<無罪だろうが有罪だろうが正義の検察に睨まれた終わりだよ。(検察は)正義の味方なんだから>
 ライブドア事件とは、いったい何だったのか。同事件の容疑はすべて「証券取引法違反」で具体的には「有価証券報告書虚偽記載」と「偽計及び風説の流布」の二つ。<これらをすべて、私が先導して計画的に行ったというのが検察の描いたストーリーだった>と述べるが、それについての言及はさけたい。ただ<市場に悪影響を起こすことが確実は月曜日に強制捜査をした結果、東証は止まり、投資家のパニック売りが起こり、連鎖的な株安が起きた>との指摘は一理ある。
 時の人だっただけにエピソードも豊富だ。ニッポン放送株買収合戦の最中、産経新聞幹部がポストを条件に「ライブドアの見方になってもいい」と近付いてきた話、選挙で戦った亀井静香代議士から国民新党からの出馬を持ちかけられた話、あるいは拘置所では未だに粉歯磨きが使われている話。一読の価値あり。 「徹底抗戦」 ( 堀江貴文 著・集英社・952円)

 2冊目は「日本のスポーツはあぶない」( 佐保豊 著・小学館・1700円)。「練習中は水を飲むな!」スポーツの練習中、誰もが一度はこう言われたことがあるはずだ。無謀な根性論がいかに危険かを問い糺す目からウロコの一冊。

 3冊目は「かくもみごとな日本人」( 林望 著・光文社・1500円)。 世間的に光があたることはなかったとしても、手本となるような人生を歩んだ70名の「かくもみごとな日本人」から我々は何を学ぶか。混迷の時代ゆえに読んでおきたい。

<1〜3冊目は2009年3月11日付『日本経済新聞』夕刊に掲載されたものです>


成功体験を捨て、常に挑戦

 4冊目は「現役力」( 工藤公康 著・PHP新書・680円) 。 四十五歳という年齢は、もちろん現役最年長。ベイスターズの工藤公康は“長寿”の秘訣を<成功体験を捨てて、つねに新しいことに挑戦しなければ、第一線では生き残れない。変わるきっかけはそこらじゅうに転がっている>と説く。それに気が付くのも気が付かないのも本人次第だと。
 たとえばピッチングフォーム。工藤によれば二通りしかないそうだ。咀嚼して言えば、ひとつが「軸回転」。もうひとつが「タテ回転」――。どこかどう違うのか。以前、本人はこう語った。「『軸回転』はコマのように、体の軸を中心に回転する投げ方。一方の『タテ回転』は文字通り、上から下に腕を振り下ろす投げ方。これは背の高い投手に多いですね」。前者の代表は著者である工藤や桑田真澄、三浦大輔。一方、後者の代表はメジャーリーガーの野茂英雄、佐々木主浩、上原浩治。WBCで活躍したダルビッシュ有は長身ながら前者に属するそうだ。
 著者には夢がある。子供の身体づくりを目的としたアカデミーの創設だ。<理論に裏打ちされた、きちんとした身体の使い方を教わっていない子どもが少なくない>。引退後もやるべきことはたくさんある。

 5冊目は「丸山眞男を読みなおす」( 田中久文著・講談社・1600円)。 丸山眞男といえば戦後民主主義を代表する知識人とされる。その思想の本質とは何なのか。本書は主に丸山の日本思想研究に焦点を当てて検証する。よく整理された入門書だ。

 6冊目は「未熟者」( 藤川球児 著・ベースボール・マガジン社新書・762円)。北京五輪は「星野監督に、本当の意味で信頼されていなかった」。WBCでも胴上げ投手の座を譲った。日本一のクローザーの今の心境が気になる。

<4〜6冊目は2009年4月1日付『日本経済新聞』夕刊に掲載されたものです>
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