いよいよ開幕まで残り約3週間となりました。今月1日からはBCリーグ6球団がいっせいにキャンプインし、実戦モードに突入しています。我々福井ミラクルエレファンツも1日に三国球場でキャンプがスタートしました。しかし、天候に恵まれておらず、なかなかグラウンドで思いっきり練習することができません。狭い室内練習場を使っての練習となっていますが、それでも選手たちは元気いっぱいです。
 福井ではキャンプ前の2月に任意の合同自主トレを行ないました。集まったのは約15人。皆、昼間はアルバイトをしながらの練習でしたが、福井工業大学の室内練習場を借りることができたので、雪の日でもしっかりとトレーニングすることができました。

 昨年までと違うのは、選手それぞれが各自の課題をもって取り組んでいることでした。2年間の経験から、自分がどんなことをクリアしなければ試合に出場できるか否かということが彼らにはよくわかっていたのです。また、今年は新人選手に甲子園を経験者や全国屈指の強豪校でレギュラーを張っていた選手がいます。そのため、既存の選手に危機感が芽生えているのでしょう。「自分はこういうことがしたい」と自己主張してくる選手も出てきました。また、合同自主トレに参加していない選手も各自できちんとやってきたようです。なかなか動きも軽快で、キャンプ序盤に陸上競技場で走り込みを行ないましたが、ほとんどの選手が走れていました。

 福井は2年連続で地区最下位。チーム成績を見ても投手部門、打撃部門ともにふるいませんでした。もちろん、1年目よりも2年目の方がよくはなってきていますので、成長していないわけではありません。さらに言えば、選手の個々のレベルも他球団の選手とそう遜色ありません。あとは本番でいかに実力を発揮することができるか、なのです。

 まず彼らに必要なのは、ミスを少なくすること。例えば、ランナーが出た際に次打者がバントの失敗が多々ありました。しかも平気な顔でベンチに帰ってくるのです。そんな時に限って、2死になってからヒットが出たりするのです。「あの時、送ることができていたら、得点が奪えたのに……」という場面が何度もありました。送りバントは一つの例ですが、こういうところがきちんとできていれば、十分に勝つことができるのです。

 そしてもう一つ大事なことは前回言ったように野球を知ること。キャンプでは守備のフォーメーションやカバーリングなどを練習しています。試合ではこれらは瞬時に判断しなければいけません。そのためには、やらされるのではなく、しっかりと理解する必要があります。

 開幕は4月3日。まずは石川、富山と同地区の球団と、それぞれ2連戦が行なわれます。長丁場のレースを制するには、やはりスタートが大事になってきます。特に福井はこれまで一度も優勝経験がないチームですから、後から追い上げるのは至難の業。それこそ選手にプレッシャーがかかってしまいます。ですから、開幕から全力でいきたいと思っています。

 もちろん目標は優勝ですが、勝負というものはやってみないとわかりません。昨シーズンまでは選手たちの経験が不足していたということもあると思います。しかし、4期連続での最下位は選手たちも屈辱に思っていることでしょう。今シーズンは3年目ということもあり、経験者も多い。新人の中にも大舞台を経験した選手もいますから、今シーズンはこれまでとは違う福井ミラクルエレファンツをお見せできると思っています。


野田征稔(のだ・ゆきとし)プロフィール>:福井ミラクルエレファンツ新監督
1941年12月5日、長崎県出身。PL学園高校、PL教団を経て1963年秋に阪神に入団。70年には88試合に出場し頭角を表し始めると、翌年よりセカンドのレギュラーとして定着。72年にはリーグ最多となる21個の犠打をマークした、75年に現役を引退。その後は阪神のマネジャー、二軍コーチ、フロント、二軍監督、スカウトを務めた。2008年、福井ミラクルエレファンツの野手コーチに就任。今季より監督としてチームを率いる。
 


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