4月3日にBCリーグが開幕しました。石川ミリオンスターズは石川県立野球場で福井ミラクルエレファンツと対戦し、2−1と1点差を守り抜き、白星スタートを飾ることができました。僅差での苦しい試合となりましたが、大輔(七尾工業高−三菱ふそう川崎−横浜)、山崎猛志(洲本実業高−甲賀健康医療専門学校−シダックス−西濃運輸)、南和彰(神港学園高−福井工業大−巨人−カルガリーパイパース)の継投でなんとか逃げ切りました。チームが目指す「必死にボールにくらいつき、1点を取り、1点を守り抜く」ゲームができたと思います。
 しかし、それから3試合連続で負けを喫し、現在(14日)は1勝3敗の成績です。特に10、11日の群馬ダイヤモンドペガサス戦はどちらもあともう1本のヒットが出れば、あともう1点を抑えることができれば、流れはこちらに傾いていたという試合でした。とにかく過去を悔やんでも仕方のないこと。今すべきことは、次の試合で自分たちの力を出せるように努力することです。翌日から早速練習を行ないましたが、選手たちも気持ちを切り替えて各自が不足している部分を重点的に練習をこなしていました。

 さて私自身、指揮官として初めてのシーズンを迎えたわけですが、キャンプでは非常にいい手応えをつかんでいました。投手陣は昨シーズンとほぼ変わらない戦力を擁していましたし、野手陣もバットがよく振れていました。少々不安だったのが内野の守備でしたが、37歳ベテランの本間満(駒大岩見沢高−駒澤大−福岡ダイエー<現ソフトバンク>)がよくまとめてくれています。選手にとってはもちろん、私たち首脳陣にとっても心強い存在です。

 勝負のポイントとなる投手陣はキャンプからここまで順調な仕上がりを見せています。開幕を白星で飾った大輔ですが、2試合目となった11日の福井戦では5安打6四球4失点で4回途中で降板してしまいました。そして南、山下英(七尾工業高−名古屋学院大)も負け投手となりましたが、いずれも私としては全く心配していません。大輔はもともと四球が多いピッチャー。しかし、少しバテるのが早かったですね。ボール自体は走っていますので、あとは100球を超えてもバテないよう、投げ込んでいかなければいけません。

 南は7回を投げて13安打3失点。ヒットは打たれたものの、群馬の主力であるカラバイヨ、井野口祐介(桐生商業高−平成国際大−富山サンダーバーズ)に対しては完璧に封じたことは評価できます。しかし、大輔同様、南も終盤になって疲労からボールが上ずってしまいました。彼の課題もスタミナです。一方、山下は7回途中まで投げて7安打5失点。彼の場合は今季初登板という緊張のあまり、実力が出し切れなかったのでしょう。翌日にはリリーフとして最後の1イニングを投げましたが、先頭打者には四球を出したものの、後続をピシャリと抑えてくれました。これで彼も落ち着いたはずです。次の登板時には自信を持って投げてくれると思います。

 そのほかのピッチャーも順調です。現在はリリーフとして登板している山崎は、今後は先発としての起用も十分に考えられます。さらに今季から新加入した佐藤広樹(安田学園高−徳島インディゴソックス−信濃グランセローズ)は184センチ、85キロの体格の持ち主。全体的にまとまっていて、スピードもある程度ありますし、変化球も豊富で低目に投げるコントロールがあります。もっとトレーニングすればスピード、キレのアップも可能でしょうから、今後の成長に期待しています。

 前述したとおり、成績のうえでは負け越していますが、群馬戦では追い上げも見られ、チームとしては決して悪い流れではありません。本間のようなベテラン選手の味のあるプレーはもちろん、若手の一冬を越えて体力的にも技術的にも大きく成長している姿をぜひ球場で見てもらい、応援してほしいと思います。


森慎二(もり・しんじ)プロフィール>:石川ミリオンスターズ監督
1974年9月12日、山口県出身、岩国工高卒業後、新日鉄光、新日鉄君津を経て、1997年にドラフト2位で西武に入団。途中、先発からリリーバーに転向し、2000年にはクローザーとして23セーブを挙げる。貴重なセットアッパーとしてチームを支えた02、03年には最優秀中継ぎ投手に輝いた。05年オフ、ポスティングシステムによりタンパベイ・デビルレイズ(現レイズ)に移籍。2年間のメジャー契約を結ぶも、オープン戦初登板で右肩を脱臼。07年、球団から契約を解除されたものの、復帰を目指してリハビリを続けてきた。09年より石川ミリオンスターズのプレーイングコーチに就任。今季より金森栄治前監督の後を引き継ぎ、2代目監督としてチームの指揮を執る。



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