開幕から1カ月以上が経ち、そろそろ前期も折り返し地点の段階になってきました。12日現在、信濃グランセローズは8勝7敗。首位の群馬ダイヤモンドペガサスと3.5ゲーム差の2位につけています。開幕前の目標として10試合を消化した時点で最低でも勝率5割はキープしていたい、と思っていましたので、ここまではまずまずと言っていいでしょう。
 しかし、4月に一度3連勝して以降、一度も連勝することができていません。敗因の一つは守りのミスがあげられます。開幕前、ピッチャーを中心としたセンターラインの強化を一番に行なってきました。技術的にはオープン戦の段階で7、8割ほどの手応えを感じていたのです。ところが、いざシーズンに入ってみると、メンタル面での課題が浮上してきました。緊張から手や足が動かず、ミスが出始めたのです。ただ、レギュラーメンバーに新人が半数以上ですから、少々のミスは仕方ありません。経験を積むことで、上達していってほしいと思っています。

 さて、打線の方はというと、現在チーム打率はリーグ2位の2割8分9厘。もうこれは、上出来と言っていいと思います。また、内容としても、これまでなかなかチャンスにタイムリーが出なかったのですが、最近はようやくいいところで1本が出るようになりました。開幕からコンスタントに打っているのは、フミヒサ(山梨学院大付属高−日本大学−ワイテック)、大村有三(拓大紅陵高−明治大−NTT信越クラブ)、五十嵐竜亮(学法石川高−日本ウェルネススポーツ専門学校)です。3人とも、どんなタイプのピッチャーにも対応でき、広角に打てる器用さをもっています。

 なかでも1番・フミヒサは現在リーグ3位の打率3割8分3厘と、核弾頭の役割を十分に担ってくれています。守備では重要なセンターを守っていますが、NPBでも通用するほど、その技術は一級品です。課題は走塁。もう少し勇気を出して積極的な走塁を見せてほしいと思います。というのも、チームにはホームランバッターはいません。ですから、1点でも多く得点を稼ぐには足を使った攻撃をしていきたいのです。現在、チームでは今村亮太(佐久長聖高−東京経済大)が最も多く走っていますが、フミヒサや市川貴之(上田西高−松本大)あたりが走れるようになると、さらに攻撃力が増します。ピッチャーの些細な動きやタイミングのはかり方など、少しずつゲームの中で覚えていってほしいと思います。

 今シーズン、初めてBCリーグの監督として指揮を執っているわけですが、嬉しいことに予想以上に長野県には野球が好きな方が多いのです。ホームゲームはもちろんのこと、ビジターの試合にも遠方からはるばる球場に駆けつけ、選手たちを応援してくれるのです。そのファンの気持ちに応えるためにも、これからも若い選手が多いチームらしく、明るさと元気の良さを出して戦っていきたいと思います。

佐野嘉幸(さの・よしゆき)プロフィール>:信濃グランセローズ監督
1944年4月1日、山梨県出身。甲府工業高から1962年、東映フライヤーズ(現・北海道日本ハム)に入団。72年に南海へ移籍し、レギュラーに定着した。73年にはリーグ優勝に貢献する。75年のシーズン途中で広島に移籍し、同年チーム初のリーグ優勝に貢献。79年に現役を引退し、翌年から国内外の球団でコーチや二軍監督を務める。2001年〜03年にはMLBパドレスのスカウトに就任。04年〜08年は千葉ロッテのコーチを務めた。今季より信濃の監督に就任した。

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