プロ野球も前半戦が終了し、27日からは後半戦がスタートします。前半戦を振り返ってみると、今年は開幕が例年よりも早く、寒い時期が続いた影響からか、どのチームも主力選手が相次いで故障に見舞われ、苦しい戦いを強いられた印象を受けました。その中で前半戦を首位で折り返したのは巨人と埼玉西武でした。しかし、両者ともに2位の阪神、福岡ソフトバンクとわずか0.5ゲーム差です。果たして、後半戦はどんな戦いが繰り広げられるのでしょうか。
 後半戦で注目したいチームといえば、セ・リーグでは中日です。現在、順位は3位ですが、今最も波に乗っているチームと言っても過言ではありません。はじめは先発投手が安定せず、守備もミスが目立っていた中日でしたが、ここにきて白星が増え始めたのは、やはり投手陣が安定してきたことに尽きます。特にエース格のチェンが本来の力を発揮するようになってきたことが大きいですね。チェンは本来、腕をしっかりと振ってキレで勝負するピッチャーです。ところが、ボールが高目に浮いてしまうことを気にするあまり、手先だけでコントロールしようとしたためにキレが失われていたのです。それが今では腕が振れるようになり、低目にキレてきました。吉見一起や中田賢一にしても同様のことがいえます。中日は目下、6連勝中。しかもプロ野球新記録となる5試合連続無失点勝利という記録をうちたてました。ようやくエンジンがかかってきたというところでしょう。後半戦も楽しみですね。

 また、個人の活躍として楽しみといえば、やはり今季大ブレイクした前田健太(広島)ですね。現在は東野峻(巨人)と並んでリーグトップタイの11勝(4敗)をあげています。特筆すべきは防御率。セ・リーグではだんとつトップの1.81を誇っています。しかし、ここにきて多少、疲労が蓄積しているようですね。13日の横浜戦では4失点を喫し、一時は先発を回避しています。スタミナが勝負の後半戦、相手がどうというより、どこまで体力が続くのかが、彼にとっては勝負どころとなりそうです。

 一方、パ・リーグでは福岡ソフトバンクが勢いをつけてきましたね。もともと投打ともに優勝する実力は十分にあるチーム。これまで故障に泣いてきましたが、松中信彦、松田宣浩、小久保裕紀などが復帰し、万全の体勢で試合に臨める現在、ようやく本領を発揮してきたというところでしょう。また、両リーグあわせてトップの12勝をあげているのが和田毅と杉内俊哉。さらに守護神の馬原孝浩につなぐセットアッパーにはファルケンボーグがおり、投手陣も非常に安定しています。前半戦最後に成し遂げた7連勝は3季ぶりの快挙。故障者さえなければ、後半戦はますます強いソフトバンクが見られることでしょう。

 そして、追い上げてきたのが北海道日本ハムですね。春は最下位に低迷していましたが、交流戦を境に猛烈な勢いで盛り返してきました。今月に入って、少し負けがこんできたとはいえ、それでも一時は14もあった借金を完済し、勝率5割で前半戦を終えたわけですから、チームとしてはこれからというところでしょう。日本ハムは、06年から4年連続でAクラス入り。そのうちリーグ優勝3回、日本一1回というチームですから、選手は勝ち方を熟知しています。打線に本来の「つなぎ」が出てきたことで、ようやく日本ハムらしい戦いができるようになってきました。一発の怖さこそないものの、打率トップの田中賢介や糸井嘉男、小谷野栄一ら3割バッターを中心に粘り強さが出てきました。後半戦は気負いなく、自分たちのやるべきことをやりさえすれば、クライマックスシリーズ進出の可能性も十分にあります。

 さて後半戦、「台風の目」となりそうなチームといえば、オリックスです。なかでも現在、オーティズ(ソフトバンク)と1本差でホームラン王争いをしているT−岡田は楽しみですね。今シーズンは改名したこともあり、注目されていましたが、開幕直後はなかなか思うような成績が上がらず、一時は二軍に降格させられたこともありました。しかし、ここにきてようやく結果が出始め、自信が出てきたのでしょう。コンスタントに打てるようになってきました。まだ22歳ですから、伸びしろはたっぷりあります。後半戦も若さを前面に押し出し、パワフルなバッティングを見せてほしいものです。

 また、オリックスは投手陣も安定してきました。特に、目下自身4連勝中の金子千尋はエースとしての風格が出てきましたね。彼はテンポよく、どんどんストライクを投げてきます。ですから、打者としてはあっという間に追い込まれてしまい、考える余裕がないのです。それがうまくはまったことで、3試合連続の完封勝ちという結果につながったのです。先発にはそのほか木佐貫洋、山本省吾がいます。そして、リリーバーの平野佳寿、岸田護の存在は今のオリックスにとっては欠かせません。彼らが試合を壊さないからこそ、勝率も5割前後にふみとどまっていることができているのです。このチームの魅力である爆発力が発揮された時、上位を揺るがす台風の目となることでしょう。

佐野 慈紀(さの・しげき) プロフィール
1968年4月30日、愛媛県出身。松山商−近大呉工学部を経て90年、ドラフト3位で近鉄に入団。その後、中日−エルマイラ・パイオニアーズ(米独立)−ロサンジェルス・ドジャース−メキシコシティ(メキシカンリーグ)−エルマイラ・パイオニアーズ−オリックス・ブルーウェーブと、現役13年間で6球団を渡り歩いた。主にセットアッパーとして活躍、通算353試合に登板、41勝31敗21S、防御率3.80。現在は野球解説者。
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