第9回 歩くことがよりよい暮らしへの第一歩

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 近年、この国では未曾有のジョギングブームが起こっている。1周5キロの皇居外周は休日になると多くのランナーが集まり思い思いのペースで走りを楽しんでいる。高まる健康志向の中、ファッショナブルなトレーニングウェアも登場し、“美ジョガー”なる言葉も生まれた。

 ただし、夏場を迎え酷暑の中での運動は危険だ。常日頃から体を鍛えていても炎天下で激しい運動をした場合、熱中症になる恐れがある。言うまでもなく平日は会社勤めや家事におわれている人ならば、酷暑での運動はさらに危険性を増す。

 そこで注目を集めているのがウォーキングだ。特に高齢者でも夏場に無理なくできる運動として、屋内で歩くことをオススメしたい。郊外型の大型ショッピングモールなどは屋内でも十分な距離を歩くことができる。時間を選ばずに適度な運動ができるという点では、非常に優れた施設といえよう。

 骨盤を使えない現代人

「日本人は昔に比べて骨盤を使わずに歩くようになっています」。そう話すのは山本化学工業の山本富造社長だ。
「歩き方を気にされる方の大半は女性ですが、和装などをしなくなったために、男性と同じような歩き方に変化してきている。つまり、骨盤を使わずにダラッとした姿勢で歩いているんです。骨盤を使わずに歩くと両膝が外側にふくれて、いわゆる“O脚”を助長します。O脚になるとヒザにかかる負担が増し、ヒザ痛や腰痛を引き起こすのです」

 年をとると、人はそれぞれの部位でそれまで感じたことのない痛みと付き合っていくことになる。ヒザや腰の痛みに苦しんでいる高齢者は少なくない。しかし、この痛みは若い頃からの蓄積なのだ。ある種の“勤続”疲労といっていいだろう。

「年齢を重ねても自立した生活を送るためには“歩くこと”が重要」。そう考える同社は発達運動生理学を専門とする大阪大学の大山良徳名誉教授が監修する無料セミナーを実施し、正しい姿勢で歩く方法を高齢者施設や病院で教えている。このセミナーは歩くことを緊急に必要とする高齢者を対象としているものの、姿勢を正すことは若いうちから取り組むことで様々な身体トラブルを回避することを可能にするという。

 メーカーが運動法を提案する

 セミナーの内容の一部を紹介しよう。まず、左右の足の内側をつけて真っすぐに立つ。そして両足の親指をくっ付けて正面に向けて揃える。そのまま視線を下にして足の親指が隠れるまでヒザを曲げてみる。その時に両ヒザを開かずに足を曲げることができ、加えて足の親指の付け根に体重がかかっていれば、理想の左右バランスが取れていることになる。

 次にかかとを付けたまま、つま先は親指2本分開いて立ってみる。そのまま先ほどと同じようにヒザを曲げてみる。この状態が普段の生活の中で、我々がとっているバランス法になる。この時に足の外側に体重がかかっている人は、歩いている時にも同様に外側に力が分散されており、ヒザの内側へ負担がかかっている。この状態を放って置けばやがてO脚になり、膝の痛みを生じせしめる。

 また、歩く際の両ヒザの高さも左右バランスに影響を与える。左右の高さに違いが生じれば、バランスを崩し身体の軸もズレていく。片方のヒザ関節にかかる負担も大きくなり、ヒザ痛を引き起こす原因となる。

 そこで同社のセミナーではヒザと足の親指を進行方向に真っすぐ出すことを薦めている。普段から両足の親指が一直線になるように真っすぐ歩くことを意識するのだ。親指の付け根に体重がかかるこの歩き方を実践すれば、ヒザを進行方向へ向けて出していくことになり、ヒザのトラブルを回避できる。さらに前に出す足側の肩と腕を後ろに引きながら歩くことで、自然と骨盤を使いながら歩くことができる。このように身体全体を使いながら歩くことで、姿勢が改善されるだけでなく、運動量が大きくなりダイエット効果ももたらすことになるのだ。その上、ヒザを高く上げながら歩くことができれば崩れた左右バランスは改善され、ヒザの痛みや腰痛から解放されることになる。

 冒頭で記したように、商業施設の巨大化などで屋内を歩く機会も増えている。高度な技術を必要としないウォーキングは、場所を選ばずにできる効果的なトレーニングだ。同社は「1人でも多くの方が正しい姿勢で歩くことができるよう」手助けを行なっている。素材を作るだけでなく、人を幸せにする力を提供する。よりよい暮らしをプロデュースする試みが続いている。

 山本化学工業株式会社
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