オリックスの新外国人フランシスコ・カラバイヨと聞いてもピーンとくる人は少ないだろう。実は先日、イチロー(マリナーズ)が出演していたユンケルのテレビCMの相手投手役を務めていたことが判明した。ほんの一瞬、顔が映る程度だから気づかれないのも無理はない。

 この7月、独立リーグのBCリーグ、群馬ダイヤモンドペガサスから入団した。1軍登録された19日、東北楽天・山村宏樹から初ホームランを放った。
 カラバイヨは2001年にアストロズに入団したが、2A止まり。その後、米国やカナダの独立リーグを転々とし、09年に四国・九州アイランドリーグの高知ファイティングドッグスにやってきた。
 いったい、どんな男なのか。
「日本に来るのは初めてのはずなのに、2カ月でカタコトの日本語がしゃべられるようになり、半年後には、もう普通に会話をしていました。ウチには韓国人選手もいたので、韓国語にもチャレンジしていましたね。
 このように非常に勉強熱心な男です。バッテリーの攻めも自分で分析していましたし、体重が右足に乗っているか、体は突っ込んでいないか、よくアドバイスを求められました。プロで成功するタイプの人間だと感じましたよ」(高知・定岡智秋監督)
 アイランドリーグではホームラン、打点の2冠王に輝いている。

 今季、BCリーグの群馬に移籍。ヤクルトなどで活躍した群馬の監督・秦真司は「あんないい選手を高知は手放して大丈夫なのか」とびっくりしたという。
 ただ欠点もあった。
 秦の解説。
「構えた時の右足と左足の体重のバランスが5対5になっていた。つまり軸足に体重が乗っていなかったんです。他の外国人打者同様、テイクバックが小さいタイプなので、これでは体重移動がスムーズにできず、力を伝えづらい。上半身のパワーだけで打っている印象を受けました」
 そこで3月のキャンプインから後ろの右足に7、前の左足に3の割合で体重をかけ、右の股関節のところにユニホームのシワが寄るような構えを意識させた。
 これが功を奏し、シーズン途中ながら打率3割5分4厘、15本塁打という好成績を記録、オリックスのスカウトの目に止まった。

 NPBで活躍するための条件は何か。
 秦は続ける。
「インコースへの対応でしょうね。BCリーグのピッチャーが投げる140キロそこそこのボールでも詰まらされていました。外国人は腕が長いので、伸ばして打ちたがる。すると前の左肩が上がって左脇が空いてしまう。必然的にバットのヘッドが下がってしまうんです。
 前期シーズンのなかばから左脇を締めて、しっかりと壁をつくり、バットを体に近い場所で抜く打ち方に取り組んだのですが、まだ完全じゃありません」
 課題が多い分、“伸びしろ”もあるということか。

<この原稿は2010年8月15日号『サンデー毎日』に掲載されたものです>

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