後期が開幕して1カ月が過ぎました。11日現在、信濃グランセローズは16試合を終えて6勝9敗1分、上信越地区最下位です。後期開幕直後は引き分けをはさんで4連勝と非常にいいスタートを切ることができました。ところが、7月末から連敗が続いており、現在は今季最多の7連敗です。とはいえ、完敗というゲームはなく、接戦での敗戦ですから、決して他球団と差があるわけではありません。終盤での逆転負けやサヨナラ負けが多いことからも、「勝たなければいけない」というプレッシャーがプレーに出てしまっているのでしょう。若いチームですから、何かきっかけがあれば勢いに乗れるはず。これから挽回していきたいと思っています。
 さて投手陣ですが、正直言って、前期から私が期待していた通りにはいっていないというのが現状です。開幕前の構想としては、昨季からのメンバーである大竹秀義(春日部共栄高)、給前信吾(横浜商大高)、鈴木幸介(成立学園高)の3人に加えて、新加入した杉山慎(市立船橋高−日本大−全足利クラブ)、徳永雄哉(小倉東高−愛媛第−福岡RB)が主力として計算できそうだと踏んでいました。しかし、いざ開幕してみると、なかなか構想通りにはいきませんでした。特に痛かったのは大竹の退団です。手術をし、今季いっぱいの復帰はできないため、治療に専念することにしたのです。大きな期待を寄せていた選手だけに、本当に残念です。

 そして、実力を発揮できていないのが鈴木です。彼はストレートの力強さが魅力のピッチャーです。ところが、ボールに勢いがある時とない時との差が大きく、いい状態を持続させることができていません。特にフォームが崩れているというわけではなく、技術的には昨季とはほとんど変わったところはないのです。

 実は鈴木はこれまでほぼストレート1本で勝負してきたピッチャーです。確かに彼の140キロ台のストレートは打者の手元でグンと伸び、とてもいいボールです。とはいえ、それだけで押せるほど、BCリーグのレベルは低くはありません。昨季、結果が出たのは途中入団でしたからデータがなかったこともあったと思います。やはり、ストレートを活かすことのできる変化球は不可欠。

 そこで、昨年オフには変化球の習得を課題として出しました。もちろん、彼自身も必死でやってきたとは思いますが、キャンプからいろいろ試してはいるものの、まだモノにできてはいません。これが一つでも自信のある変化球を持つことができれば、投球の幅も広がり、彼のピッチングも変わってくることでしょう。まだ22歳と若いピッチャーですから、これからの成長に期待したいと思っています。

 一方、大きな成長を見せてくれているのが給前です。彼は投手陣では創設時からいる唯一の選手。入団当初から素質は高く評価されており、期待されてきたピッチャーでした。しかし、精神的な面で甘さがあり、試合では四死球などで自滅することも少なくありませんでした。ようやく高い意識が芽生え、今年こそはやってくれるのではないかと思っていた昨季はケガに泣きました。

 しかし、今季は先発ローテーションにしっかりと入り、現在6勝5敗と杉山とともに主戦として頑張っています。これまでとの一番の違いは、どの球種でもストライクをとれるようになったこと。ですから、たとえカウントが0−3になっても、簡単には四球を出したりしなくなったのです。そのおかげで四球も激減しました。ランナーを出しても、マウンドで切り換えることができるようになってきましたし、練習への意欲からもう全然違います。センスだけでやってきた彼も、ようやく上にいくためには何をすべきかがわかってきたのでしょう。

 さて、投手陣全体の課題をあげるとすれば、ピンチになると、失点してしまっていること。つまり、相手にワンチャンスを確実にモノにされていては、勝てる試合も勝てません。ピンチを切り抜くことができれば、攻撃にもいいリズムが生まれます。また、たとえ守備のミスから生じたピンチでも抑えれば、野手も奮起することでしょう。チームワークを考えても、やはりピンチこそ抑えてほしいと思います。

 まだまだ暑い日が続きますが、初めてのプレーオフ進出を目指して、頑張っています。最後まで諦めない彼らのプレーをぜひ球場に見に来てください。応援、よろしくお願いします。

島田直也(しまだ・なおや)プロフィール>:信濃グランセローズピッチングコーチ
1970年3月17日、千葉県出身。常総学院時代には甲子園に春夏連続出場を果たし、夏は準優勝に輝いた。1988年、ドラフト外で日本ハムに入団。92年に大洋に移籍し、プロ初勝利を挙げる。94年には50試合に登板してチーム最多の9勝あげると、翌年には初の2ケタ勝利をマーク。97年には最優秀中継ぎ投手を受賞し、98年は横浜38年ぶりの日本一に貢献した。01年にはヤクルトに移籍し、2度目の日本一を経験。03年に近鉄に移籍し、その年限りで現役を引退した。日本ハムの打撃投手を経て、07年より信濃グランセローズのピッチングコーチに就任した。

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