7月4日に後期が開幕しました。28日現在、新潟アルビレックスBCは9試合で5勝4敗とまずまずのスタートを切りました。負けた試合は全て3点差以内と内容的にも悪くありません。蒸し暑さが増すこれからが正念場。チーム全員で乗り切り、後期優勝をつかみたいと思っています。
 前期は10勝22敗4分で上信越地区最下位に終わりました。僕自身、コーチ1年目ということもあり、投手陣ひとり一人の特徴をつかみながら、どの選手がどのポジションに適しているかを把握するためにいろいろな起用を試していました。というのも、10試合を予定していたオープン戦が悪天候によって半減し、試すことができなかったのです。しかし、その前期の甲斐あって、後期は各投手の役割が明確になりました。まず、先発の3本柱は長坂秀樹(東海大三高−東海大−海外独立リーグ)、石渡大介(岩倉高−城西国際大−伯和ビクトリーズ)、寺田哲也(作新学院高−作新学院大)です。

 5月半ばに入団した長坂は何といっても真っ直ぐの質が高い。キレに加えて、手元でドンとくるような重みがあります。打者としては相当打ちづらさを感じていることでしょう。さらに独特の“間”がとれるピッチャーですね。よく打者を見て、タイミングをずらしているのです。

 彼は海外のチームをいくつも渡り歩いてきました。そのためでしょう、チームに遅れて入ってきたにもかかわらず、すぐに馴染んでしまいました。チームでは年齢が一番上ということもあり、グイグイとみんなを引っ張っていってくれています。また、考え方にもメリハリがあります。チームワークはあるのですが、全て他人と同じことをやろうとしません。その日の自分の体とコミュニケーションをとり、やる必要のないことはやりませんし、逆に不足していると思えば徹底的にやります。そんなプロ意識の高さに感心させられることがしばしばです。

 石渡はとにかくタフな投手ですね。馬力がずば抜けていて、この猛暑の中でも最後まで投げ切ることができます。18日の石川ミリオンスターズ戦では7安打を打たれながらも要所を締めて完封しました。また、社会人出身ということもあって、試合にかける気持ちが強い。それが自身ピッチングにあらわれているのはもちろん、たとえベンチにいても「踏ん張りどころ」の場面では、グラウンドに向かって声を出し、チームを鼓舞するのです。練習では厳しいメニューほど、「ここは力を抜いてはいけない」と全力でやろうとします。そういうストイックさがあるからこそ、試合でピンチであればあるほど、気持ちのスイッチが入るのです。

 そしてもう一人は182センチの長身、寺田です。実は彼は当初、リリーフで起用しようと考えていました。というのも、ストレートのほか、変化球はカーブとスライダーと球種が少なかったからです。しかし、彼は非常にマイペースな性格で、短いイニングで集中的に投げるよりも、長いイニングで調整していくタイプ。そこで先発で起用することにしたのです。寺田は前述したように球種は少ないのですが、球もちがよく、ボールにキレがあります。加えて、和田毅投手(福岡ソフトバンク)のようにボールのでどころが体に隠れていてわかりにくいので、打者はスピードガンの数字以上に球速を感じていることでしょう。

 一方、リリーフの中心は雨宮敬(山梨学院大付−山梨学院大)、間曽晃平(横浜商高−神奈川大)、谷合伸郷(法政二高−青森大−ウェルネス彩)です。雨宮は本来なら先発で起用したい投手なのですが、チーム事情を考えて後期は主にリリーフとして頑張ってもらうことにしました。というのも、前期の先発と中継ぎとの防御率を比べると、先発が3.2に対してリリーフは3.7。内容的にもリリーフのミスで負けた試合が少なくありませんでした。そこで、後期にはリリーフのテコ入れが不可欠だと考えたのです。

 夏本番のこれからはスタミナが消耗し、疲労もたまりやすくなります。そんなとき、リリーフに絶対的エースがいれば、早めにスイッチすることができます。そのエースが雨宮です。彼は直球のほか、スライダー、シュート、カーブ、チェンジアップ、フォークと変化球も豊富です。本人はスライダーに最も自信をもっているようですが、僕としてはフォークのキレに魅力を感じています。ただ、フォークはやや制球に難があります。これが狙ったところに決まるようになれば、さらに飛躍するはずです。

 右の本格派・間曽は2種類のスライダーとフォークが武器です。特に縦に落ちるスライダーとフォークには自信を持っており、縦に弱い打者にはもってこいの投手ですね。彼はマウンドでは一見クールなのですが、実は繊細な性格の持ち主。特にフォームを気にしすぎるところがあり、マウンド上でも考え込んでしまうことがあるのです。そうなると、自分自身のことで頭がいっぱいとなり、対打者のピッチングではなくなってしまいます。ですから、いつも僕は「バッターと勝負してこい!」と言って送り出すのですが……。もともと力のある投手ですから、メンタル的な部分が変わるだけで大化けすると思うのです。それこそ、彼をリリーフのエースとしてたて、雨宮を先発に戻してもいいとさえ思っています。

 さて、入団4年目となった谷合は、リーグの打者についても詳しく、経験も豊富ですから、安心して任せることができます。彼は以前は先発として活躍したこともあります。しかし、彼は先発となると、最低でも5回は投げなければいけないという責任感から、力を温存して投げてしまうのです。しかし、中継ぎとして短いイニングであれば、後のことを考えなくていいわけですから、最初から彼の最大限のパフォーマンスを出すことができる。ですから、今季は中継ぎとして頑張ってもらおうと思っています。

 そのほか、まだ結果は残していないものの、今後が楽しみな投手といえば、高卒ルーキーの望月雅史(身延高)ですね。彼は現在、肩とヒジを故障しているため、主に体力強化を行っています。調整は順調で、このままいけば8月半ばには試合で投げられるようになるでしょう。彼の魅力は何といっても打者に向かっていく気持ちの強さにあります。貪欲さはチームでも随一。ですから、たとえば敗戦ムードになったり、押され気味の試合で、彼を投入すれば、流れを変えてくれるのではないか、そんな期待を抱いています。

 プレーオフに進出するためには、後期での優勝が絶対条件となります。優勝のカギはやはり投手陣にあります。先発、リリーバーがそれぞれの役割を果たし、総力戦で戦っていきたいと思います。

中山大(なかやま・たかし)プロフィール>:新潟アルビレックスBCコーチ
1980年7月13日、新潟県出身。新潟江南高校、新潟大学出身。大学時代は1年時から左腕エースとして活躍。卒業後はバイタルネットに入社し、硬式野球部に所属した。リーグ初年度の2007年、新潟アルビレックスBCの球団職員となる。翌年、現役復帰し、同球団の貴重な左腕として活躍。1年目には先発の柱として9勝、リーグ4位の115奪三振をマークし、球団初となる前期優勝に大きく貢献した。09年限りで現役引退し、今季よりコーチに就任した。

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