昨日(6日)までのビジター5連戦は5連敗。三重、大阪、高知、愛媛と連日、移動してのゲームだった上に、退団者やケガ人もあって投げられるピッチャーが6人しかいなかったため、苦しい結果となってしまいました。特に勝ち頭(7勝)の石田大樹が背中の張りを訴え、離脱したのは痛かったです。幸い症状は改善し、今週末からは戦線復帰の予定です。
 夏場を迎え、チームでは投手陣の再編を行いました。先発を任せていた土田瑞起を抑えに戻し、逆に抑えだった小林憲幸を先発に回したのです。土田の抑え復帰は、本人の希望によるもの。今季は長冨浩志前監督が「長いイニングを投げて経験を積ませたい」との意向で先発をしていました。ただ、本人には「短いイニングで真っすぐをアピールしたい」との気持ちもあったようです。彼は今季が高卒3年目。入団当初からNPBのスカウトも注目しており、上に行くチャンスを広げるためにも、希望を尊重することにしました。

 土田は能力的に素晴らしいものを持っています。とはいえ、もうワンランク上を目指すには、単にマウンド上での内容や結果のみならず、グラウンド全体での振る舞いもしっかりしてほしいと感じています。スカウトは、そういった姿勢に伸びしろが感じられるかどうか、目を光らせているからです。彼は彼なりに一生懸命頑張っているつもりでも、見る人にそう受け取られなくては意味がありません。もちろん、本人にもこの話は伝えていますが、より一層の自覚を促したいものです。

 一方、小林の先発転向にも狙いがあります。彼は徳島、千葉ロッテとずっとリリーフをやってきました。速球で押すスタイルが持ち味とはいえ、力任せに投げすぎるのが欠点。調子が悪いと、とたんに崩れてしまいます。ロッテを戦力外になったのも、こういった不安定感を払拭できなかったからでしょう。彼がNPB復帰を狙うなら、力だけでなくテクニックも身につけなくてはなりません。

 先発で投げるとなると、すべてを力勝負で抑え込むのは不可能です。打たせるところは打たせるメリハリが求められます。まだ先発では結果を残せていませんが、これは彼だけの責任ではありません。投手の頭数が不足しているため、こちらがイニングを引っ張りすぎている試合もあります。ですから、今後も基本的に小林は先発で使うつもりです。「追い込んだら三振」という発想ではなく、「三振でもゴロでもアウトはアウト」という考え方を身につければ、もっと投球の幅は広がると信じています。

 投手陣の中で、このところ良くなってきたのは、カープドミニカアカデミーからやってきたラウリアーノです。8月29日の高知戦では、リリーフで3回3分の1を投げて無失点に封じ、初勝利をあげました。彼は194センチの長身から投げるいい真っすぐを持っています。コントロールもまずまずです。ただし、走者を背負っての投球には課題があります。走者を気にするあまり、自滅してしまうのです。経験を積んで、この点を解消できれば、いい右腕になるでしょう。

 残念ながら、現在の成績では逆転優勝は非常に難しい状況になっています。本来であれば、来季を見越した戦い方をする時期なのかもしれません。ところが、チームは経営的に来季も継続できるのか微妙なところ。何を目標に戦っていけばよいのか正直、迷っています。それでも試合は待ってくれません。残り8試合、お客さんに満足していただける野球をみせることが大切です。いつ、いかなる時でもプロとしてのプレーを全うすることが、ユニホームを着続けることにつながる。そのことを選手たちには噛みしめてほしいと感じています。

 なんだか寂しい話になってしまいましたが、今季ラストのホームゲームは18、19、23日と開催されます。結果はともかく精一杯プレーする姿を皆さんにお見せすべく頑張ります。ぜひ、佐世保野球場に来ていただけるとうれしいです。


古屋剛(ふるや・つよし)プロフィール>:長崎セインツ監督
1970年4月13日、東京都出身。駿台甲府高、拓大、新日鉄君津を経て1997年、ドラフト7位で内野手として西武に入団。翌年、1軍デビューを果たし、8年間のプロ生活で79試合に出場した。04年限りで戦力外通告を受け、現役引退。通算成績は打率.187、1本塁打、6打点。09年から長崎のコーチに就任し、10年5月から長冨浩志前監督の解任に伴い、監督に昇格した。
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