後期も残りわずかとなり、首位争いが激しくなってきています。現在、福井ミラクルエレファンツは首位の石川ミリオンスターズと1.0ゲーム差の2位です。残りは9試合ですが、なかでも4試合ある石川との直接対決は優勝に向けての大きなヤマ場となることでしょう。後期での石川との対戦成績は4勝4敗の五分。開幕からやってきた「一戦必勝」野球でなんとか乗り切りたいと思っています。
 今シーズンは藤井宏海(福井高−千葉ロッテ−三菱自動車岡崎)、岩井昭仁(岐阜総合学園高−愛知学院大−ヒタチエクスプレス)、高谷博章(北海高−浅井学園大)の3人のピッチャーの3本柱を中心に組み立ててきました。3人とも先発、中継ぎ、抑え問わずに、頑張ってくれています。

 リーグ最多の13勝をマークしている藤井は、平均球速140キロ前後のストレート、キレのあるスライダーでカウントを整えることも、勝負することもできます。さすがは元NPB選手。32試合を投げ、防御率はリーグトップの1.69と安定感は群を抜いています。

 また、140キロ前後のストレートにキレがある岩井は、昨シーズンは主に抑えとして起用されていました。しかし、今シーズンは新たに緩いカーブを習得したことで緩急がつけられるようになり、ピッチングの幅がグンと広がりました。そのため、先発として試合がつくれるようになり、チームでは藤井に次いで8勝をマークしています。もともと安定したピッチングが身上の岩井。23試合を投げ、防御率はリーグ2位の2.07を誇っています。

 後期に入って頑張ってくれているのが、開幕後に入団した高谷です。高谷もスライダー、ツーシームと変化球を覚えたことでピッチングの幅を広げました。現在はチーム最多の35試合を投げ、チームに貢献してくれています。

 私がキャンプから投手陣に口を酸っぱくして言ってきたことは、低目に投げること、ランニングを怠らないこと。そして、1球1球魂を込めて投げること。これらを本当に理解し、実践することができるようになったのが藤井、岩井、高谷の3人。今後は負けられない試合が続きますが、3人をうまくまわしながら戦っていきたいと思っています。

 さて、前述したように優勝に向けてポイントとなってくるのが石川との4試合。これを少なくとも2勝2敗にもっていきたいと思っています。石川は足を絡ませたりと、細かい野球に長けているだけでなく、長打力もあります。ですから、勝つためにはいらないミスをしないことと、失投を少なくすること。とにかく粘り強く投げ、最少失点に抑えることが求められます。

 福井は藤井、岩井、高谷の3人が先発、中継ぎ、抑えとフル稼動できますから、先発が5回までに1点に抑えれば勝機はグッと近づいてきます。あとは後ろに信頼できるピッチャーが2人そろっていますし、リーグ2位のチーム打率(2割6分7厘)を誇る打線が何とかしてくれます。

 泣いても笑っても残り9試合。初優勝に向けて全力で頑張っていきたいと思っていますので、ぜひ球場に足を運び、選手たちを後押ししてあげてください。


谷村智啓(たにむら・ともひろ)プロフィール>:福井ミラクルエレファンツピッチングコーチ
1947年8月3日、兵庫県出身。報徳学園高、関西学院大出身。鐘淵化学を経て1971年、ドラフト1位で阪神に入団した。2年目には11勝を挙げ、オールスターに出場。79年オフに交換トレードで阪急に移籍し、85年限りで現役を引退した。その後は阪急、オリックスのスカウトや編成部長などを歴任し、2004〜06年にはオリックス2軍のサーパス神戸の投手コーチを務めた。今季より福井ミラクルエレファンツのピッチングコーチに就任した。

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 今回は福井・谷村智啓コーチのコラムです。「期待の星・橋本に注目!」。ぜひ携帯サイトもあわせてお楽しみください。
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