今シーズンも残り4試合となりました。22日現在、富山サンダーバーズは13勝15敗4分で前期同様、北陸地区の最下位に沈んでいます。今シーズンを振り返ると、故障者が続出し、レギュラーも打順もなかなかメンバーを固定できませんでした。苦しい戦いを強いられた中、なんとかここまでやってきたという感じです。
 特に痛かったのは下島孝之(岐阜三田高−朝日大−CL岡山)の故障です。彼が戦列から離れたことで、内野の布陣を変えらざるを得ず、安定した守備を敷くことができませんでした。また、今シーズンを勝負の年と見据えていた町田一也(倉吉北高−NOMOBC)の不調も痛かったですね。彼の今シーズンにかける思いは強く、オフは上田真幸(福井工大付高−浜松大)と一緒に一番最後まで富山に残って練習をしていたのです。キャンプでも調子がよく、それこそ開幕が待ち遠しいという感じでした。私も大きな期待をしており、少しでもスカウトから注目してもらおうと、今シーズンはセンターを守らせようと考えていたのです。

 しかし、シーズン途中で故障し、復帰してからも、町田の調子は上がりませんでした。本来ならばクリーンアップを打ってほしい選手なのですが、現在の打率は1割8分5厘。結局、這い上がることができなかったのです。彼自身も不本意なシーズンを送ってしまい、悔しい気持ちがあることでしょう。私も期待していただけに本当に残念でなりません。ですから、来年こそは「最後の勝負の年」として、チームの支柱となる活躍を見せてほしいと思っています。

 とはいえ、センターをはじめ、レギュラーのポジションが確約されているわけではありません。優秀な新人選手も入ってくるでしょうし、既存選手も努力することでしょう。ですから、彼自身がポジションを奪い取っていかなけれなりません。そのためにも故障して以降、見えなくなってしまった強い気持ちを前面に出して頑張ってほしいと思います。

 一方、昨シーズンに続き、今シーズンも打率3割台をキープしているのが恭史(松商学園高−住友金属鹿島−宮後工業)です。開幕から好調だった彼ですが、シーズン途中には不調に陥った時期もありました。彼はファーストストライクを積極的に振ってくるバッターです。ですから、彼が早いカウントで勝負するということを知っているピッチャーは、ストライクゾーンから少し外したところに投げてきます。そのため、恭史は凡打の山を築き、なかなかヒットを打つことができなくなってしまいました。そこで、逆方向を意識してボールをとらえるようにさせました。自分のバッティングを取り戻すには、この方法が最も効果的なのです。恭史も徐々に復調し、現在はリーグ5位となる打率3割1分4厘をマークしています。

 また、自信をつけたのが塚本雄一郎(富山商高−三晶技研)です。きっかけは5月12日に行なわれたNPBフューチャーズとの交流戦です。この試合、塚本はBCリーグ選抜の「1番・センター」で先発出場し、二塁打を含む4打数2安打と結果を残したのです。そこでつけた自信をきっかけにバットコントロールがうまくなりました。これまで彼は無理やり引っ張ることが多く、右方向へのバッティングが弱かったのですが、今では逆らわずとらえられるようになりました。一昨年、昨年と出ていなかったホームランを2本も打てているのは、その成果に他なりません。今後の課題は全体的なレベルアップ。守備はNPBのファームクラスほどはあるものの、一軍でとなるとまだまだ練習が必要です。そして、バッティングは着実に成長はしてはいますが、もう少し力強さと確実性が欲しいところ。来シーズンは5年目。さらなる飛躍を期待したいですね。

 6月に新加入後、外野のレギュラーの座を勝ち取ったのが坂本斗志(上宮太子高−IPB)です。彼は身長182センチ、体重89キロの体格の持ち主。真っすぐには滅法強く、当たれば飛ぶというパワーを持っています。しかし、まだ荒削りなところがあり、特にボールの変化に弱いのです。ちょっとキレるボールや変化球でタイミングを狂わされると、途端に崩れてしまう。素質はいいものを持っている選手ですから、実戦を通して徐々に慣れてくれればと対応できることでしょう。性格的にもいい意味での図太さがありますから、これに勝負強さが兼ね備えられれば、クリーンアップを任せることができるでしょう。そのためにも、たとえ追い込まれても、際どいコースのボールをカットすることができるようになってほしいですね。

 チーム全体的に見ると、他球団と比較して、今シーズンの富山には球際での強さがなかったように感じます。つまり、ボールへの必死さが足りないのです。もう少し必死で飛びつけば、取れただろう打球に喰らいついていかない富山の選手に対し、他球団は「これはヒットになる」といった打球にも飛びついてアウトにしてしまう。この差が成績にも表れたのではないかと思っています。残り4試合は、ファンの皆さんのためにも少しでも必死さを見せられるゲームをしたいと思います。

小牧雄一(こまき・ゆういち)プロフィール>
1967年5月2日、鹿児島県出身。鹿児島商卒業後、三菱自動車水島を経て91年にドラフト5位で日本ハムに入団。出場機会に恵まれなかったことから、2000年オフに退団。西武の入団テストに合格し移籍した。03年のシーズン限りで現役を引退し、翌年同球団のチームスタッフに就任。05年からは四国アイランドリーグの高知ファイティングドッグスのコーチを務め、08年より富山サンダーバーズのコーチに就任した。


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