Jリーグもいよいよ終盤戦に差し掛かりつつあるが、一つ下のカテゴリーとなるJFLでは、ガイナーレ鳥取が早々に優勝を決めた。
 Jに昇格するチームのほとんどが、JFLを短い期間で通過していく中、鳥取は実に10シーズンもこのカテゴリーで戦ってきた。加入当初は全国リーグの壁にはね返され、ここ数年は土壇場で昇格を逃がすということを繰り返してきた。それだけに、ようやくJへのチケットを手にした感激は、関係者、選手、ファンともにひとしおだろう。

 だが、ここから先は相当に険しい道が待ち受けている。
 これまでも多くのチームをJに送り込んできたJFLだが、J2を乗り越え、J1にまでたどりついたチームはたった1チーム、横浜FCしかない。J1から転落してきたチームと、JFLから昇格してきたチームとの間には、同じカテゴリーで戦うチームとは思えないほど大きな、そして多くの違いがある。今季も、J2の上位を占めているのはいずれもJ1での経験があるチームばかりである。

 J1から転落してきた者にとってはみすぼらしく感じられるJ2も、JFLから見上げる者からすれば輝けるJの舞台である。すぐにでもJ1に戻るべく、高い理想を持ち続ける元J1勢と、J2の舞台に上がれただけで大満足の元JFL勢では、サッカーの質に差が出てくるのも当然と言える。
 だが、かすかではあるが変化の気配も現れてきている。今季のJ2には、元J1のチームが8チーム所属しており、そのうち6チームが上位を争っている反面、札幌と大分の2チームは元JFL勢の後塵を拝しているのである。
 つまり、厚かった元J1勢の壁に、わずかではあるがヒビが入りつつある。

 現状の勝ち点から考えて、熊本、栃木、徳島、岐阜が今シーズンのJ1昇格をなし遂げる可能性は低い。だが、札幌、大分よりも上の順位でシーズンを終えることができれば、来年以降のJ2勢力図は大きく変わっていくかもしれない。

 あまりにも厚かった元J1の壁は、J2を目指すJFL勢から志を奪ってしまっていた。どうせJ1には上がれない。そんな思い込みがどこかにあった。だが、JFLからJ1への昇格が一般化してくれば、最初から高い志を持ったチームが現れる可能性がある。JFLだけでなく、J2も一気に駆け抜けるような存在。元Jリーガーの寄せ集めではなく、無名の選手を育てた魅力的なチーム。欧州ではたまに出現するそんな存在が、そろそろ日本にも出てきてもいい。

<この原稿は10年10月28付『スポーツニッポン』に掲載されています>

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