今回、アイランドリーグに加盟した三重で監督を務めることになりました。5月に長崎の監督を解任されて以降は就職活動の日々。どこかで野球に携われるところがないか探していたところ、三重の松岡弘監督が休養したとの話を聞きました。松岡監督は投手出身で他のコーチ陣は野手出身です。「投手コーチをやらせてもらえないか」。壁矢慶一郎代表にそうお願いに行きました。すると何度かお会いするうちに、今度は「監督を」とのオファーをいただいたのです。代表の考えをしっかり伺った上で、ほぼ二つ返事で指揮を執ることを決めました。
 長崎時代、三重と対戦した際に感じた印象は「1年目のチームにしてはレベルが高い」というもの。エースの洪成溶は球に力があり、コントロールが良かったですし、打線も長打力には欠けるものの巧打者が何人もいました。アイランドリーグ相手にはなかなか勝てなかったとはいえ、8月後半には6連勝。チーム力も上がったと聞きました。今季、プレーした選手たちが来季も多く残留するため、ベースは変えずにシーズンを戦えそうです。

 早速、攻撃陣ではBCリーグの群馬から丹羽良太、香川から大松陽平を補強しました。2人とも今季、打率2割8分台をマークしたように、打撃ではいいものを持っています。力を発揮してくれれば、打線の核になりそうです。僕は長崎の監督に就任した際、あえて長打で点のとれるチームづくりを目指し、根鈴雄次、末次峰明をBCリーグから獲得しました。できれば今回も、似たようなチームづくりができればと考えています。

 ただ、長崎の時と比較すれば、丹羽や大松を補強しても打線の迫力不足は否めません。それならば、つなぎの野球でコツコツ点を取っていくしかないでしょう。目指すは今季、日本一になったロッテの野球です。現在行われている合同トライアウトでは、内野手を獲得できればと考えています。

 投手陣には洪という柱がいますから、あとは2番手、3番手の投手がどれだけ機能するかがポイントになります。洪はあと5キロ球速が速くなれば、NPB行きも夢ではありません。相手ベンチから見ていると、彼は本格派左腕になれる要素があるにもかかわらず、少し小手先の技術に走る傾向がありました。相手のタイミングを外そうとしてか、フォームが手投げになったり、自らいい状態を崩してしまうのです。来季は、自分のピッチングを貫いて、より上のレベルを狙ってほしいと感じています。

 加えて中継ぎ、抑えを任せられる投手の台頭も重要です。そうすれば先発は6、7回まで頑張ってくれれば勝つ確率が高まります。この点は、春のキャンプや実戦を通じて見極めていきたいと思っています。

 アイランドリーグへの参入は1年目でも、交流戦で対戦し、選手たちもライバルチームのレベルは分かっているはずです。各チームとも主力が抜けていますから、戦力差は縮まっていると感じます。昨年、長崎が前期優勝した時のように、開幕ダッシュに成功すれば三重にもチャンスは出てくるでしょう。

 せっかく参戦するのですから、チームとしては、もちろん優勝を狙います。その中でNPBに行ける選手が1人でも2人でも出てくることが理想です。三重のみなさん、来シーズンは熱い応援をよろしくお願いします。
 

長冨浩志(ながどみ・ひろし)プロフィール>:三重スリーアローズ監督
1961年6月10日、千葉県出身。千葉日本大学第一高卒業後、国士舘大、NTT関東を経て86年、ドラフト1位で広島に入団。1年目から2ケタ勝利をあげてリーグ優勝に貢献し、新人王に輝いた。MAX150キロのストレートを武器とする本格派右腕として、その後も広島の投手陣の要として活躍。95年に日本ハムにトレード移籍し、技巧派リリーフ投手に転じた。98年にダイエー(現ソフトバンク)に移籍し、2連覇に貢献。2002年に現役引退。ダイエー、ソフトバンクコーチを経て、07年からBCリーグ・石川のコーチとして初年度のリーグ制覇を支えた。09年より長崎の監督に就任。1年目でチームを前期優勝に導いた。11年からは三重で指揮を執る。
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