4年目のシーズンも無事に終了しました。これもひとえに地域やファンの皆様のおかげだと思っています。本当にありがとうございました。さて、シーズンを振り返ってみると、今季はリーグの代表として反省する点が多々ありました。その一つが最大の目標として掲げていた試合時間の短縮を達成できなかったことです。
 BCリーグはリーグ設立以来、1試合の観客動員数が前年度を下回っています。今季こそは挽回とばかりに意気込んでシーズンに突入しましたが、終わってみれば、昨季よりもさらにマイナスという結果となり、総動員数も約5万5000人減となりました。なかでも大幅に減少したのは新潟アルビレックスBCと富山サンダーバーズです。新潟は昨季、オープンした新球場「HARD OFF ECOエコスタジアム新潟」効果で観客動員数がグンとアップしましたが、今季はその煽りを受けたかたちとなってしまいました。富山はというと、優勝争いをしていた昨季までとは一転、今季は前後期ともに北陸地区の最下位に陥りました。そのチーム成績がそのまま観客動員数にも影響したのです。

 一方、こうした厳しい状況の中、観客動員数を伸ばしたチームもあります。福井ミラクルエレファンツと群馬ダイヤモンドペガサスです。チーム創設以来、最下位と低迷が続いていた福井は今季、後期に優勝し、初めてプレーオフにも進出しました。チームが優勝争いに加わわれば、自ずと応援する気持ちが強まるもの。今季の福井は、そのことを改めて証明してくれました。また、昨年経営陣が刷新したこともあり、メディアを活用した積極的な事業展開が行なわれたことも大きかったですね。メディア側も予想以上に大きく取り上げてくれたので、チームの認知拡大につながったのだと思います。そして群馬は、試合会場の点でひと工夫がなされました。人口が集中している地域、特に高崎市内でのゲームを増やしたことが功を奏したようです。それでもトータルで見ると、連続での減少という結果はリーグにとって危機的状況と言っても過言ではありません。

 今季、観客動員数アップのために私が一番重要視していたのはスピーディなゲーム展開でした。具体的な目標としては1試合平均試合時間を昨季よりも34分減の2時間半にすること。このモデルケースとしたのが、地域コンテンツとしては最高価値を誇る高校野球です。真夏の炎天下でも、地区予選からあれだけの観客が集まるのは、試合が“間延び”せず、高校球児の一生懸命な姿に熱中できるからだと思うのです。ところが、同じ地域コンテンツでありながら、BCリーグは昨季、1試合平均が3時間4分でした。NPBが3時間13分ということを考えても、やはりこれは長すぎると言わざるをえません。そこで、少しでも高校野球に近づけようと、2時間半という高い目標を立てたのです。しかし、残念ながら目標達成とはいきませんでした。結果は3時間。昨季より減ったとはいえ、2時間台にもできなかったのです。

 2時間半という高い目標を達成するためには、イニングまでのイベントの短縮、監督からのブロックサインやキャッチャーからのフォーメーションに対するサインの短縮、そして審判は試合を円滑に進めなければなりません。つまり、「球団フロント」、「現場(監督・コーチ・選手)」、「審判」という3つの要素においての協働作業が必要なのです。

 そこで、開幕前にはこのことについて理解と協力を求め、それぞれが何をしなければいけないのかを確認しました。さらにはインターバルや審判への抗議の時間など、具体的な目標数字を細かく設定し、提示したのです。しかし開幕後、本当に実行できているかどうか、逆に何ができていないのかを検証するという作業が中途半端となり、時間短縮への意識を徹底しきれませんでした。そのため、うやむやなままにシーズンを終えてしまったのです。

 私自身は、独立リーグというコンテンツの価値をどのようにして作り出していくかにおいて、その最大の要素が時間短縮にあるという気持ちに今も全くブレはありません。繰り返しになりますが、私たちが活動する地域における最大の野球コンテンツは高校野球であり、そのの魅力は選手のひたむきさと一生懸命さにあります。独立リーグの選手は「プロ野球」と名乗ってはいますが、NPBの1軍で活躍するような150キロを超えるストレートを投げる投手や、場外にホームランを放つ打者は皆無に等しい。そんなBCリーグが地域で認めていただくには、高校野球選手以上の一生懸命さ、ひたむきさ、きびきびとプレーをする姿勢が必要なのです。

 しかし、それがなぜ必要なのか、重要視するのかを球団のフロントや監督・コーチ・選手に本当に理解してもらっていたかというと、正直、疑問を抱かざるを得ません。つまり、リーグ全体に時間短縮への意識を浸透させることができなかった。その努力が不足していたことが目標達成に至らなかった最大の原因であり、それをやりきれなかったことはすべて私自身の責任です。来季は目標数値の設定だけでなく、検証作業においても細かくシステムづくりをしていきます。

 一方、経営面では成果が生まれ始めています。初めて数球団が単年度で黒字転換しました。安定的な収益システムをつくるという各球団の努力が少しずつ実ってきているのです。とはいえ、フロントやスタッフ、さらには現場の監督やコーチに対して十分な報酬が与えられているとは言えず、彼らの情熱に頼って成り立っているというのが現状です。ですから、その情熱が報われるように、さらなる経営努力が必要です。来季はこうした今季、とりこぼした課題について引き続き取り組んでいこうと思っています、

 そして、私たちが取り組まなければならないもうひとつの大切な要素は、地域の人たちとの関わりです。私たちは、多くの人々からの支えがあって野球をさせていただいています。選手が夢を叶える為に一生懸命トレーニングをすることは当然ですが、監督、コーチ、選手達が、地域のお年寄りや体が不自由な方々の施設に伺い、勇気や元気を与えられるような活動を続けること、小中学校を訪問して子供たちと一緒に汗を流し、彼らがスポーツで培った礼儀や挨拶、マナーを伝えていくこと。これをやり続けて初めて地域社会から必要な存在と認めていただけるのです。ですから、来季もこうした地域での活動を大事にし、地域に根ざしたリーグを目指していこうと思っています。

 また、新たな目標としては選手強化があげられますが、そのためにはNPBとの交流が不可欠となります。確かにこれまでもNPBとチームとは交流試合を行なってきました。しかし、来季以降はそれをきちんとしたシステムの下で行ない、リーグの強化プログラムとして取り組んでいくことが必要だと感じています。

 さて、既に行なわれた3会場でのトライアウトはどこも盛況で、多くの選手が参加をしてくれました。BCリーグが全国から認められた存在になっていることを改めて実感させてもらい、非常に嬉しく思っています。10日にはドラフト会議が開催されますが、そこで指名されたルーキーたちが新しい風を吹かせ、各チームを活性化させることでしょう。果たして2011年はどんな戦いが見られるのでしょうか。5年目のBCリーグをぜひ期待していてください!


村山哲二(むらやま・てつじ)プロフィール>:BCリーグ代表
新潟県出身。柏崎高校では野球部に所属。同校卒業後、駒澤大学北海道教養部に進学し、準硬式野球部主将としてチームを全国大会に導いた。2006年3月まで新潟の広告代理店に勤め、アルビレックス新潟(Jリーグ)の発足時から運営プロモーションに携わる。同年7月に株式会社ジャパン・ベースボール・マーケティングを設立し、代表取締役に就任した。
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