横浜リクシルベイスターズに、東京サイバースワローズ?
 このオフ、セ・リーグの下位球団に相次いで売却騒動が持ち上がった。

 横浜は親会社のTBSホールディングスが2010年3月期連結決算で23億円の純損失を計上。赤字が年間20億円を超える球団を保有するのが厳しい情勢になっていた。そこで住宅設備大手の住生活グループへの売却を画策したが、不調に終わった。
 東京ヤクルトは一部スポーツ紙でインターネット総合サービス大手のサイバーエージェントが売却先の有力候補と報じられた。球団側は「事実無根」と否定したものの、こちらも年間20億円弱の赤字を抱えている。

 2009年度の12球団の最終損益で赤字となったのは4球団。見かけ上、プロ野球の経営はさほど悪くないように映る。しかし、親会社からの支援がなくても単体で黒字を維持できるのは、巨人、阪神、広島の3球団しかない。
 これまで特にセ・リーグの各球団はこれまで巨人戦の放映権料を当てにしたビジネスモデルを構築してきた。かつて、その額は1試合1億円と言われ、年間10億円以上の収入がテレビ局からもたらされていた。しかし、今や巨人戦が地上波で放送されることはめったにない。放映権料の減少は球団経営を圧迫する、ひとつの原因になっている。

 さらに本拠地球場の高額な使用料が追い打ちをかけた。現在、横浜はホームグラウンドの横浜スタジアムに年間約8億円の使用料を支払っているとされる。その上、球場内での売店や広告看板の収入は、ほとんど球団側に入ってこない。
「最終的には球場の問題がネックになったのでしょう。プロ野球の経営はスタジアムで得られる入場料や売店での売上などの収入が入ってこないと苦しい。(横浜は)本拠地を移転しない限り、黒字経営は難しいでしょう。それでも本拠地は横浜で継続してほしいという話では、交渉はまとまらないですよね」
 6年前、近鉄買収、新球団設立に名乗りをあげた堀江貴文氏は、今回の横浜の破談劇をこう分析する。

 一方、2005年に新規参入した東北楽天は1年目で1億5千万円の黒字を計上し、球界関係者を驚かせた。その最大の要因は球場の改修費用約70億円を楽天側が負担する代わり、球場使用料を約5千万円と安く抑え、売店や看板などの収益が球団に入る仕組みにしたことがあげられる。
 放映権料頼みから入場料収入を柱とする経営に時代は移りつつある。チームの成績にかかわらず、いかに多くの観客に来場してもらうかが重要なのだ。楽天では入場料が平日の試合が通常よりも安く設定されている一方、人気カードや休日だと割高になる。このように観客動員と収益の双方がアップする工夫がなされている。
 球団経営よりも、まずは球場経営。プロ野球の経営改善をはかるには、まず、ここから手をつけなくてはならない。

<この原稿は2011年1月号『商工ジャーナル』に掲載されたものです>

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