明けましておめでとうございます。監督として2シーズン目となる今シーズンは、ぜひBCリーグ初の日本一の座をつかみたいと思っています。初めて指揮を執った昨シーズンを振り返ってみますと、チームは2年ぶりにリーグ優勝することができましたが、私自身、監督としてはまだまだ手探り状態。どうすればチームがさらに強くなるのか、今もまだ模索中です。
 昨シーズンは自分が現役だった頃を思い出しながら、選手が力を発揮することができる環境づくりを重点的にやりました。各選手によって様々ですが、とにかく不安が残ったままの状態で試合に臨むようなことにはならないように心がけました。それがリーグ優勝という結果につながったのではないかと感じています。

 とはいえ、最初からうまくいっていたわけではありませんでした。4月、開幕戦はなんとか1点差を凌いで白星スタートを切ったものの、2戦目からなんと5連敗。さすがに5連敗目を喫したときには「なんとかしなくてはいけない」と思ったものです。連敗を重ねている時の選手たちは緊張からなのか焦りからなのか、普段の練習で見せている動きや雰囲気が、試合では全く出せていませんでした。

 ようやく力を発揮できるようになったのはGWの頃です。4月29日から7連勝し、チームは一気に勢いに乗りました。ようやく選手たちも自分たちの力を出せば勝てるということがわかってきたのでしょう。チーム全体に「よし、今年はいける!」という自信がみなぎっていました。

 結果的に前期で優勝し、後期はわずか0.5ゲーム差で福井ミラクルエレファンツに首位の座を渡してしまいましたが、プレーオフで福井、そして上信越地区チャンピオンの群馬ダイヤモンドペガサスに勝って2年ぶりに優勝することができました。そのプレーオフは全7試合が2点差以内の接戦。勝負がどちらに転んでもおかしくない試合ばかりでした。しかし、私も選手も全く焦ったり諦めたりするようなことはありませんでした。というのも、シーズン中から接戦が多く、どうすれば勝つことができるかはわかっていたからです。

 一方、悔しかったのはBCリーグチャンピオンとして臨んだ、四国・九州アイランドリーグとのチャンピオンシップです。確かに対戦相手の香川オリーブガイナーズは強打者揃いの強豪でした。試合前の練習だけで、石川のバッターとのスイングの強さの違いは一目瞭然だったのです。そして初戦、石川の投手陣は4本ものホームランを浴び、8−3と完敗してしまいました。

 しかし、私自身は「チーム力でいけば、勝機はある」と踏んでいました。というのも、固い守備を誇る石川に対して、香川には記録には残らないミスがいくつもあったのです。2戦目は延長サヨナラ負けを喫したものの10回まで粘った末の1点差。3戦目も延長となり、今度は石川がサヨナラ勝ちを果たしました。これで1勝2敗。そして臨んだ4戦目、2回に2点を失ったものの、その後は追加点を許さない展開でした。最少失点に抑え、終盤で追いつくのが石川の勝ちパターンだけに、その試合も流れ的には決して悪くありませんでした。ところが、不運にも豪雨に見舞われ、7回コールド負け。3勝1敗とした香川の日本一が決定したのです。私も選手も「勝てる」と信じていただけに、本当に悔しい結末となってしまいました。それだけに選手も今シーズンにかける思いは強いはずです

 さて、毎年のことながらオフには選手が激しく入れ替わりました。12月にはドラフト会議が行なわれ、石川は投手2人、捕手1人、内野手2人、外野手2人の計7名を指名しました。今回の補強ポイントとしては主に2つ。年齢層が高くなってきた投手陣の若返り、そして石川の課題となっている長打力です。また、他球団と比べると、地元選手が少なかったこともあり、チームの活性化という意味でも今回は3名の地元出身者を指名しました。彼らが活躍することで、今シーズンの福井のようなチームとファンとの一体感がより得られるのではないかと思っています。

 その3名の中で最年少の中川貢輔は今年3月に金沢市立工業高校を卒業する18歳。球速はそれほどありませんが、トライアウトで見た限りでは球自体に力強さが感じられました。スライダーのキレもありますし、今のままでも十分に活躍が期待できます。とはいえ、まだ18歳。体づくりはもちろん、チームや試合に慣れることが先決です。実際に試合で投げ、打者を抑えることで自信がつき、自分の力を発揮することができれば、面白い存在になるでしょうね。

 3月のキャンプを前に石川では2月1日から合同自主トレーニングを始めます。選手枠が少ないBCリーグでは故障は大敵。ですから、少しでもケガのリスクを減らせるよう、ゆっくり、しっかりと体づくりをして開幕を迎えるつもりです。今シーズンの目標は前述したとおり、日本一。昨シーズン、もう少しのところまでいっただけに、選手たちにもより現実的な目標としてイメージができているはずです。その目標を達成するためにもまずはオフでの準備が重要です。2カ月間、しっかりと1シーズンを乗り越えられるチームに仕上げていきたいと思っています。


森慎二(もり・しんじ)プロフィール>:石川ミリオンスターズ監督
1974年9月12日、山口県出身、岩国工高卒業後、新日鉄光、新日鉄君津を経て、1997年にドラフト2位で西武に入団。途中、先発からリリーバーに転向し、2000年にはクローザーとして23セーブを挙げる。貴重なセットアッパーとしてチームを支えた02、03年には最優秀中継ぎ投手に輝いた。05年オフ、ポスティングシステムによりタンパベイ・デビルレイズ(現レイズ)に移籍。2年間のメジャー契約を結ぶも、オープン戦初登板で右肩を脱臼。07年、球団から契約を解除されたものの、復帰を目指してリハビリを続けてきた。09年より石川ミリオンスターズのプレーイングコーチに就任。10年からは金森栄治前監督の後を引き継ぎ、2代目監督としてチームの指揮を執っている。
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