古賀紗理那、全SVリーガーへの“提言” ~引退セレモニー~
バレーボールの新トップリーグ・SVリーグ女子が12日、各地で開幕節を迎えた。昨季優勝(Ⅴ1リーグ)のNECレッドロケッツ川崎は埼玉上尾メディックス(同昨季3位)と川崎市とどろきアリーナで対戦し、0-3のストレート負けを喫した。試合後には、今夏のパリ五輪をもって現役を退いた古賀紗理那の引退セレモニーが開かれた。古賀は同セレモニー後の会見では、現役選手たちへの辛口な注文もした。
試合は0-3ながら白熱した展開だった。試合後、古賀の引退セレモニーを見るためにクルー(NEC川崎ファンの愛称)はもちろん、多くの埼玉上尾のファンもアリーナに残った(試合時の観客数は3280人)。
体育館の熱気を冷ますように場内が暗転する。スクリーンには代表初選出から約11年間、トップレベルでプレーした古賀を称える映像が流れた。9年で6度の大会MVP、4度の国内リーグ制覇に貢献。パリ五輪で記録した52得点はチーム最多を記録した日本の大エースだ。
映像が終わると、コート内に立つ古賀にスポットライトが当たるとアリーナは温かい拍手に包まれた。そして、NEC川崎で古賀とともに汗を流したチームOGの廣瀬七海と上野香織が登場し、MC役としてトークショーが行なわれた。廣瀬の「なぜ、多くのオファーからNECを選んだのか」という問いに日本のエースは「チーム力で戦っているのがNECだった。それが決め手になった」と語り、こう続けた。
「(NEC川崎には)ネチネチしている人がいなくて。私、ネチネチしている人が本当に嫌いなんで助かりました(笑)」
先輩・上野は「試合前に腕立て伏せをしていた。良く言えばストイックやけど、悪く言えば“コイツ、変態やなぁと思った」と古賀の現役時代を振り返った。
コートの内外で長く時間をともにした者にしか引き出せないトークを展開し、両チームファンの爆笑を誘った。その後は、現NEC川崎キャプテン・澤田由佳と古賀の母がコートに現れて花束を贈呈。母は日本を引っ張り続けた娘を労うように抱きしめた。
母からバレーボールを手渡された古賀はファンの前で見事、ラストサーブを1回で成功させ、フィナーレを迎えた。
セレモニー後、記者会見で古賀は感謝の気持ちとともに全SVリーガーに向けて辛口アドバイスを送った。以下、主要な一問一答。
古賀「SVリーグ開幕戦という素晴らしいタイミングで、引退セレモニーをしていただき本当に感謝しています。たくさんのファンの方が残ってくださり嬉しく思います」
――引退してからの日々はどんな時間を過ごしているか。
古賀「私はいつも、アスリートのときは朝からバタバタして体育館に行き、自分の体のために時間を使うことが多かった。最近はそういう事をする必要がなく、家事をしたりペットを飼い始めたのでペットの世話など日常を楽しみながら過ごしています」
――どんな気持ちでラストサーブを打ったのか。現役時代、思い入れのあるサーブは?
古賀「元々あまりサーブが得意じゃないので、チームに入ってから2〜3年目まで昔の山田監督に怒られていたイメージがあります。そこからサーブはすごく成長したなと感じます。常に攻めることを意識してサーブを打ち続けてきた。
最近で一番印象に残っているのは、パリ五輪のブラジル戦。向こうがマッチポイントの時、こういうところで、逃げ腰のサーブを打っても全く次にも繋がらないし、意味がないと思い、とにかく強気でサービスエースを取りに行くくらいの気持ちで打ったサーブが、サービスエースを取った。成長したなと感じました」
――今後、女子バレーボール界への提言があれば。
古賀「最近はSNSの時代になり、人気獲得のために各チームいろんなことをされていると思います。しかし、選手の一番の仕事は試合をして勝つことだと私は思っています。たまにSNSに出てくる楽しそうにしているものとか、それはそれで良いと思うが、選手である以上は責任がある。コートの中で自分の役割に徹することは、すごく大切なことだと思っています。“私のこの1試合が日本を変える、チームを変える”くらいの気持ちを持ってほしい。そういうプレーをファンの皆様は見たいと思っている。責任あるプレーを期待したいです」
――ホームの空気感をどう味わったか。
古賀「今年からSVリーグになりましたが、去年に引き続きとても良い雰囲気で試合を進められているなと、感じました。去年のとどろきでの私自身の最終戦では負けて終わったので、ラストサーブを打たせていただきとても嬉しかったです。最後にファンの皆さんの前で、私の言葉で話せたことはとても嬉しく思います。ありがとうございました」
日本のエースが、全SVリーガーへ求めたものはコート内での責任感あるプレーだった。
(文・写真/大木雄貴)