バレーボールV・プレミアリーグ男子は後半戦に突入した。熱戦が繰り広げられるなか、JTサンダーズは9日現在、16試合を終えて9勝7敗。ファイナルラウンド進出圏内の4位につけている。チームを率いるのは今シーズンから新指揮官に就任した久保義人監督だ。4シーズン連続でファイナルラウンド進出を逃したチームの再建に乗り出した指揮官に、スポーツジャーナリスト二宮清純が直撃。さらに、久保監督に信頼を寄せ、自らもキャプテンとしてチームを牽引する徳元幸人、久保監督から将来のエースとして期待を寄せられているルーキー八子大輔にもインタビューを敢行。果たしてJTサンダーズは生まれ変わるのか――。

 オフェンスに磨きをかけた前半戦の戦い

二宮: 現在、JTサンダーズは4位の位置につけています。チームの手応えはいかがですか?
久保: ファイナルラウンド進出の権利を与えられる4強に残るには過去のデータから見ても、15、16勝といったところがボーダーラインになると見ています。サンダーズは前半戦8試合を終えた時点で8勝(6敗)。まずは最低限の数字をクリアして折り返すことができたと思っています。とはいえ、もちろん決して余裕はありません。

二宮: 今シーズンは大差で負けることはほとんどなく、逆に惜しい試合を落としているように感じられます。
久保: そうですね。もう少し試合の組み立て方や流れをうまく引き寄せることができれば、特にフルセットに持ち込んだ試合なんかは取れていたなと思いますね。ただ、8チームの中で唯一、ストレート負けがないというのは安定している証拠。上位チームとやっても、ほとんど力の差は感じていません。

二宮: 今シーズンの戦いについてはどのように評価していますか?
久保: 開幕直後は攻撃面での数字がなかなか上がらなかったんです。サーブレシーブ、ブロック、サーブについては他チームと比較しても割と上位にありましたので、攻撃面での改善が今シーズンのポイントになるだろうと考えていました。実際、前半戦を終えた時点で開幕から比べると5%ほど上がりました。スパイク決定率も徐々に上位チームに迫ってきていますので、それが4位という成績につながっているかなと思います。

二宮: 攻撃面での改善が図れた要因は何だったのでしょう?
久保: 攻撃面での軸となるのは、やはり司令塔のセッターです。今シーズン、開幕は191センチ長身の井上俊輔を起用していたのですが、チームが波に乗り切れないという状況が続いていました。そこで少し流れを変えようと、今年1月に入ってからは菅直哉をスタメンに起用したんです。おそらくチーム自体も試合数をこなしていく中で、徐々に力が発揮できるようになったタイミングとも重なったのでしょう。これを機にチームの勝ち星も増えてきました。ですから、菅が今のチームのキーマンになっているんだろうと思います。

 新風吹き込むルーキーの活躍

二宮: 1月29日の大分三好戦からは東海大学主将として活躍した八子大輔選手が加入しました。
久保: 八子が入って、いきなりチームが連勝できたことも大きいですね。後半戦に向けてチームの起爆剤となってくれることを期待しています。

二宮: 八子選手はチームにはもう慣れましたか?
八子: そうですね。チームの雰囲気にもだいぶ慣れてきました。先輩方がやりやすい環境をつくってくれていることに感謝しています。

二宮: 高校、大学と全国優勝を何度も経験し、ジュニアではアジアや世界代表として国際大会にも出場しています。大学卒業後の進路としてたくさんの企業チームからオファーがあったと思いますが、その中でJTサンダーズを選択された理由は何だったのでしょう?
八子: サンダーズには大学時代から合宿で相手をしてもらったりして、お世話になっていました。そうした中で雰囲気のいいチームだなという印象をもっていましたので、自然と「このチームでやってみたい」と思ったんです。また、練習環境が非常に充実しているところにも魅かれました。

二宮: 実際にプレミアリーグでやってみて、どのあたりに大学リーグとの違いを感じていますか?
八子: スピードが全く違いますね。特にサーブが速い。自分自身がまだプレミアリーグのスピードに追いつけていないことを実感しています。

二宮: とはいっても、1月30日のパナソニックパンサーズ戦では初めてスタメン起用されて大活躍しました。
久保: これまでパナソニック戦では全日本エースの清水邦広選手にいいようにやられてしまうケースが多々あったのですが、30日の試合では八子がその清水選手とマッチアップして、ブロックでプレッシャーをかけてくれました。彼はジュニア時代にセンターをやっていたこともありますので、ブロックにも非凡なものを持っているんです。ブロックポイントは1本でしたが、止められないまでもワンタッチをとって1本で決めさせなかった。こうなると相手セッターにとってもプレッシャーになるんです。

二宮: パワーで勝る相手にはブロックでワンタッチをとり、ラリーに持ち込むと。
久保: はい。うちはラリーには強いですからね。どこが相手でもラリーの応酬となると、高い確率でポイントを取っているんです。ですから、とにかく相手の攻撃を1本で決めさせないということが一つのポイントとなるわけで、パナソニック戦でも八子のワンタッチで何本もラリーに持ち込んだことが勝因になったと思います。

 植田監督に学んだコミュニケーション法

二宮: 久保監督はコーチ1年間を経て、昨年4月に監督に就任されました。約1年が経とうとしていますが、いかがですか。
久保: 私はサンダーズの前は旭化成スパーキッズ(2006年廃部)の監督をしていました。旭化成は隣の岡山県に本拠地がありますので、サンダーズともよく練習や試合で接することが多かったんです。外から見たサンダーズはどちらかというと淡白なイメージがありました。しかし、実際チームの中に入って一緒に練習したり、選手と話をしてみると、バレーボールや勝負に対して熱いものをもっているんだなということがわかりました。ただ、それをチームとしてどう表現していくべきなのか、どうコミュニケーションをとればいいのか、そういうことに関してはあまり得意ではなかったのかもしれませんね。私は時には感情的に気持ちをぶつけることもあります。その方がストレートに思いが伝わりますし、逆に選手側からも遠慮なく私に意見を言うことができると思うんです。今では監督と選手、選手と選手がコミュニケーションをきちんと取れるチームになったなと感じています。

二宮: 2008年の北京五輪では植田辰哉監督の下で全日本のコーチをされました。植田監督から学んだことは?
久保: 私が植田さんの指導を見ていて感じたことは「監督はストレートに自分を表現してもいいんだな」ということでした。時には「バカやろう!」「このやろう!」という雰囲気になることもありますが、むしろそのくらい思っていることをストレートに出さないと、選手にも自分の気持ちは伝わらないんだなと。それに、たとえその場で感情的になったとしても、後で修復はいくらでもできるんです。私は今、独身選手と一緒の合宿所に住んでいますが、練習後には選手とお風呂に入るんです。その時に「ちょっと今日の練習では感情的になっちゃったけどさ」というひと言があれば、全て流すことができるんですよね。

二宮: 衝突を怖れるなと?
久保: はい。実は旭化成で初めて監督に就任した時、私は選手にものすごく気をつかっていたんです。どういうふうに話をすべきだろうかと、悩んだり迷ったり……。しかし、植田さんのもとでコーチをやった時に「言うべきことは言わなければいけないんだ」ということがわかったんです。ですからサンダーズではあまりアレコレ考えずに、思ったことや閃いたことはストレートに口に出すようになりましたね。

二宮: 徳元選手は12年間、JTでプレーをされていますが、久保監督に代わってからのチームをどう見ていますか?
徳元: 前監督が外国人だったということもあって、久保さんに代わってからは随分とチームの雰囲気も変わったと思います。監督自ら声を出したり動いたりして体を張っていて、怒るときも遠慮なく怒りますから結構怖いんです(笑)。でもその分、裏表がなく、腹を割って話すことができますので、選手にとっては非常にやりやすいと思います。

二宮: サンダーズはVリーグでは今や一番の古株。日本リーグの専売広島時代には故・猫田勝敏さんという名セッターを輩出した伝統と歴史のあるチームです。しかし、意外にもまだ一度も優勝経験がない。
徳元: 僕自身も12年間で3度、決勝に進出したのですが、いずれも負けてしまいました。プレッシャーに弱いのか、なぜかいつも決勝では力を発揮することができずに終わってしまうんです。来年はチーム創立80周年の記念の年でもありますから、その前になんとか優勝したいと思っています。

(後編につづく)

久保義人(くぼ・よしと)プロフィール>
1969年4月12日、山口県生まれ。宇部商業高校出身。88年、旭化成工業(現・旭化成)に入社し、サイドアタッカーとして活躍。旭化成スパーキッズコーチを経て、2002年より同監督に就任。05年からは全日本男子チームのスタッフとして指導し、08年北京五輪ではコーチを務めた。09年、JTサンダーズコーチとなり、昨年4月に監督に就任。同年サマーリーグ優勝、天皇杯準優勝に導いた。

徳元幸人(とくもと・ゆきと)プロフィール>
1976年10月9日、沖縄県生まれ。中央大学2年時には全日本インカレで優勝経験を持つ。99年、JTサンダーズに入団。2年目からレギュラーを獲得し、2000-01シーズンにはベスト6を受賞。02年には全日本代表に選手され、アジア大会に出場した。06−07シーズンにサーブレシーブ賞を獲得した。09年よりキャプテンに就任。昨シーズンにはリーグ戦通算230試合出場を達成し、Vリーグ栄誉賞を受賞した。

八子大輔(やこ・だいすけ)プロフィール>
1988年10月7日、埼玉県生まれ。深谷高校では選抜優勝大会、インターハイ、国体で優勝4回、準優勝2回。3年時にはアジアジュニア代表、世界ジュニア代表に選出される。東海大学3年時には全日本代表に初選出され、銅メダルを獲得した09年ワールドグランドチャンピオンズカップでデビューを果たす。4年時にはキャプテンを務め、天皇杯でベスト8進出の立役者となり、若鷲賞(最優秀新人賞)に輝いた。

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(構成・斎藤寿子)
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