二宮: 久保監督が目指すバレーボールとは?
久保: 一部分だけが突出しているというのではなく、全ての面において上位に位置していることが重要だと考えています。例えば、スパイク部門ではトップだけれども、サーブやサーブレシーブがワースト、というようなチームでは頂点を取ることは難しい。ましてやレギュラーラウンドはリーグ戦ですから、28試合戦ったうえでベスト4に入らなければならない。そう考えると、やはりトータル的にバランスの取れたチームでないと、なかなか上位には入れない。プレーヤー一人ひとりの特性として、スパイクが得意な選手もいれば、サーブレシーブが得意な選手もいるというのはいいのですが、その一つ一つのピースをチームとして当てはめたときに、トータル的に上位のチームにしたいと思っています。

二宮: 現在(11日)、アタック決定本数は8チーム中トップ。そのほかサーブ効果率3位、サーブレシーブ効果率は4位と、データを見ても目立って悪いというものはないですね。
久保: そうですね。それが4位につけている要因かなと思います。あとは中位に位置している部分を、いかに上げるかが今後の課題です。

 求められるミスのないパワーバレー

二宮: 昨シーズンは優勝したパナソニックパンサーズには4戦全敗しましたが、今シーズンは2勝0敗(11日現在)と勝ち越していますね。
久保: これまでパナソニックになかなか勝つことができなかった最大の要因は、攻撃面での差でした。そこで今シーズンは攻撃のスピードアップと、バリエーションを増やすことで万遍なくどこからでもスパイクを打てるようにと改善してきました。それがパナソニックの攻撃を上回る要因になっていると思います。

二宮: 今シーズン、トップの座をキープしている堺ブレイザーズにも1勝1敗(同)と五分の成績です。
久保: 堺に対してはフルセットにもつれこんだ1試合目は勝ちましたが、2試合目はセットカウント1−3で負けてしまいました。2試合目の敗戦の要因はサーブにありました。現在、男子で主流となっているジャンプサーブでは115キロ以上出ると、いくらサーブレシーブの巧いリベロでも手に当てるのが精一杯でしょう。野球で言えば、160キロのストレートを受けているような感覚です。2試合目の堺との試合ではサーブでのポイントがサンダーズが6本だったのに対し、堺は9本と3本の差がありました。実際に測定データを見ると、堺のサーブポイントには115キロ以上が6本。118キロが2本あったのに加えて、「測定不可能」が1本あったのです。おそらく118〜119キロのスピードが出ていたのではないかと思います。それに対して我々はMAXで115キロ。他のスパイクやサーブレシーブ、ブロックに関してはほとんど差がなかっただけに、その試合に限っては堺のパワーバレーに屈したなと。ですから、我々もパワーを身につけないことには今シーズンの優勝はないなということがはっきりしましたので、今ではかなりの時間を筋力トレーニングに費やしています。

二宮: ジャンプサーブはパワーはありますが、それと引き換えにミスも多い。試合でも「あのサーブミスがなければ……」ということがしばしばあります。かといって、思い切り打たなければパワーバレーには対応できない。バランスが難しいところでもありますね。
久保: 本当にその通りです。パワーもあって、なおかつミスも少なくするということが求められているんです。その点、エルナルド・ゴメスや八子はスピードもありますが、ミスが非常に少ない。他の選手もサーブミスはあまり出しませんので、サーブでの失点は8チームの中でも最少なんです。ラリーポイント制を戦ううえでは、大きなアドバンテージになっていると思います。

二宮: パワーバレーを支えるにはセンターからの攻撃が必要ですね。
久保: その通りです。もっとコートの中央を支配したいですね。というのも、センターからの攻撃が多ければ多いほど、ブロッカーの意識は中に集まってきます。そうなると、両サイドの速い攻撃が生きてくるんです。逆にサイドからの攻撃が多くなれば、ブロッカーもそこを狙ってくる。そうなった時にはまた、センターで攻める。そういったセンターとサイドの出し入れを先手でとっていきたい。そのためにもセンターからの攻撃を機能させていきたいんです。

二宮: 徳元さんはV・プレミアリーグで12年間プレーしていますが、最近のバレーボールで変化を感じることはありますか?
徳元: 歳をとったせいか、どの選手もすごく見えてきましたね(笑)。それこそルーキーの八子なんか見ていると、本当にすごいと思いますよ。バレーボール自体もどんどん高速化してきていると思います。オープンバレーではなく、両サイドには速いトス回しが必要ですし、クイックやバックアタックも随分多くなってきました。もう、どの選手もどこからでもスパイクを打ってくるという感じです。

 苦しいときこそ重要なムードメーカー

二宮: さて、第3レグがスタートし、レギュラーラウンドも佳境に入ってきました。JTサンダーズは現在(同)、フィナルラウンド進出ぎりぎりの4位につけています。これからが正念場となるわけですが、今後の戦い方についてはいかがですか?
久保: とにかく目の前の1試合1試合を取っていくこと。そのためにも苦手なチームを作らないということが重要になってくるかと思います。苦手意識があるとスタートの部分で既に差がついてしまいますから。

二宮: 苦手意識のあるチームは?
久保: 私としては全くないですね。昨シーズンまでは高さや力強さという点で不利な試合をすることも少なくなかったのですが、今シーズンはどことやってもそういったことは感じられません。相手がどうこうというよりも、自分たちがどれだけ高い確率でチャンスをモノにできるか。それが勝敗を分けるカギになっていると思います。

二宮: 一番怖いのはケガだと思いますが、選手のコンディションはいかがですか?
久保: おっしゃるように、怖いのは突発的なケガ。それには十分に気をつけたいと思っていますが、今シーズンは肉体的な強化、改造を徹底的にやってきましたので、それにも十分対応できるだけのコンディションに仕上がっているかなと思います。

二宮: 八子選手はデビューして間もないわけですが、既にレギュラーの座を獲得し、監督やチームメイトからの信頼も厚い。相手チームにとっては脅威のルーキーでしょう。
八子: 僕はチームで一番の若手なので、とにかく元気に走り回ることでチームに勢いをもたらせたいと思っています。もちろんプレーでも貢献したいと思っていますが、苦しい場面で声を出してチームの雰囲気を上げること。そのことを一番に意識してやっていきたいと思っています。

二宮: ベテランの徳元選手は後半戦の戦い方を熟知していると思います。ここからはどんなことがポイントになりますか?
徳元: 後半戦になってくると、どのチームもものすごく気合いを入れてくるんです。前半戦以上に激しい戦いが続くことが予想されます。そんなとき、一番大事なのはチームのムード。ムードが悪いと、せっかくいいプレーが出ても盛り上がらない。キャプテンとして苦しいときにこそ、しっかりとみんなのお尻をたたいていけたらと思っています。

 進化し続けるチームへ

二宮: 久保監督は就任1年目で大きなチャンスを迎えているわけですが、ファイナルラウンド進出、そして初優勝達成には何が重要になると考えていますか?
久保: まずは勝ち星を重ねていかないことにはファイナルラウンド進出はないわけですが、それと同時にチームが成長していってほしい。常に進化し続けなければ、最後にトップには立てません。監督としてそうなれるように、しっかりとサポートしていきたいと思っています。

二宮: 会社側から掲げられているミッションとは?
久保: 常にトップをとることがサンダーズの存在意義だと思っています。我々が勝つことによって、社員の皆さんとも喜びを分かち合い、夢や希望を与えられると思っています。また、広島はバレーボールが盛んな地域ですから、我々の活躍がバレーボールの底辺拡大にもつながってくる。そういう意味では皆が大きなミッションを抱えているという意識を共有して戦っています。

二宮: 会社や地元からの応援はチームの力になるでしょうね。
久保: 本当にその通りです。会社は我々が常に力を発揮できるようにと、現場にとても協力的ですし、地元の人たちからも「いつも応援しているよ。今年こそは優勝を楽しみにしているからね!」などと声をかけられることもよくあるんです。我々はそういった皆さんの期待に応えるためにも、結果を出さなければいけないと思っています。

二宮: まだ一度も優勝経験がないということは、初優勝したら会社も地元も盛り上がるでしょうね。
久保: はい。来年で創部80周年ですから、それまでには何とか優勝したい。そういう意味では今シーズンは大きなチャンスだと思っています。「今シーズンのJTは何か違うぞ」と思ってもらえるように、ファイナルラウンド進出、さらには初優勝を目指してチーム一丸となって戦っていきたいと思います。

(おわり)

久保義人(くぼ・よしと)プロフィール>
1969年4月12日、山口県生まれ。宇部商業高校出身。88年、旭化成工業(現・旭化成)に入社し、サイドアタッカーとして活躍。旭化成スパーキッズコーチを経て、2002年より同監督に就任。05年からは全日本男子チームのスタッフとして指導し、08年北京五輪ではコーチを務めた。09年、JTサンダーズコーチとなり、昨年4月に監督に就任。同年サマーリーグ優勝、天皇杯準優勝に導いた。

徳元幸人(とくもと・ゆきと)プロフィール>
1976年10月9日、沖縄県生まれ。中央大学2年時には全日本インカレで優勝経験を持つ。99年、JTサンダーズに入団。2年目からレギュラーを獲得し、2000-01シーズンにはベスト6を受賞。02年には全日本代表に選手され、アジア大会に出場した。06−07シーズンにサーブレシーブ賞を獲得した。09年よりキャプテンに就任。昨シーズンにはリーグ戦通算230試合出場を達成し、Vリーグ栄誉賞を受賞した。

八子大輔(やこ・だいすけ)プロフィール>
1988年10月7日、埼玉県生まれ。深谷高校では選抜優勝大会、インターハイ、国体で優勝4回、準優勝2回。3年時にはアジアジュニア代表、世界ジュニア代表に選出される。東海大学3年時には全日本代表に初選出され、銅メダルを獲得した09年ワールドグランドチャンピオンズカップでデビューを果たす。4年時にはキャプテンを務め、天皇杯でベスト8進出の立役者となり、若鷲賞(最優秀新人賞)に輝いた。

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(構成・斎藤寿子)
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