『ROUND AFTER ROUND.1』メンバー増員は進化求める挑戦 ~D.LEAGUE~
日本発のプロダンスリーグ『D.LEAGUE』は24-25シーズンがスタートし、レギュラーシーズン2連覇中のCyberAgent Legit(サイバーエージェント レジット)は開幕2連勝した。今季は新メンバーを5人加え、14人体制で臨む。東京ガーデンシアターで10月13日に行われた「第一生命 D.LEAGUE 24-25 REGULAR SEASON ROUND.1 開幕戦」では早速、新加入のCHAAが活躍。クランプとブレイキンを駆使し、開幕戦白星に貢献した。

(写真:開幕戦D. LEAGUEデビューを果たしたCHAA ©D.LEAGUE24-25)
新メンバーのCHAAは、クランプとブレイキンを得意とする弱冠16歳のダンサーだ。クランプは世界大会で優勝した経験を有し、ブレイキンでは日本ダンススポーツ連盟ブレイクダンス本部(JDSF)の2024年度ユース強化選手に選出されるなど、どちらのダンスも高いスキルを持つ。ディレクターのFISHBOYは「広くて深い。スペシャルな人材が入ってくれた」と太鼓判を押す逸材だ。開幕戦でもそのポテンシャルは遺憾なく発揮された。
作品のテーマは「Fortitude~不屈の精神~」。不屈の精神とは、ここに至るまで過程を指しているのか。レギュラーシーズン2季連続で制しながら、チャンピオンシップファイナルでわずかに届かなかった頂点への想いを込めているのか。作品はしっとりしたバラードでスタート。虚ろ気な表情をしたBBOY SHOSEIの抑えめのブレイキンから転調していく。エースパフォーマンスはCHAAのクランプだ。チームメイトから投げられて前方に飛び出すと、身長156cmの小柄な身体を爆発させるように踊る。
ディレクターのFISHBOYは彼女をエースに抜擢した理由に「一発目からインパクトを見せたかった。新しさを出していくためCHAAにエースを打診しました」と説明する。だが、その起用はギャンブルではない。
「練習内で彼女の動きを見た時、勝ちを確信するようなかたちでエースパフォーマンスに送り込むことができた。私としては“いける”という思いでした」
個で魅せた後はフォーメーション、シンクロパフォーマンスでもきっちり合わせて見せたCHAA。エースパフォーマンス前後の数秒の繋ぎは、彼女を孤立させない構成も光った。最後はB-BOY SHOSEIとのフリーズで作品を締めた。エースパフォーマンス項目は落としたものの、その他5項目でジャッジに支持され、新規参入のList::X(リストエクス)を5対1で破った。14人体制で臨んだ初戦を白星で飾った。

(写真:チーム発足当時からディレクターを務めるFISHBOY)
今季から14人体制になったことについて、ディレクターのFISHBOYに直接ぶつけた。
「チームのカルチャーが熟してきた。そういう段階にきたので、ここからメンバーを増やしていこうと決めました。良い状況だからこそ、それを生で体験して欲しい。何か困ってから人数を増やしては、困っている状況を見ることになってしまう。増やすならば今だと思いました」
――少数精鋭で戦ってきて、メンバー同士の一体感も強いチームです。人数が増えることに対する不安は?
「不安というネガティブな気持ちよりは“乗り越えていこう”という思いの方が強いですね。正直、人数が増えたことで少人数でやってきた良さがなくなってしまうんじゃないか、そういう意見もありましたが、こういった問題はどの組織でもぶち当たるもの。これをどうやって乗り越えていくかが成長に繋がると、みんなが認識してやっています。問題が起きたとしても“どうする?”と話し合い、乗り越えている。今のところはいい結果を生んでいると思っています」
――変化より進化というイメージでしょうか。
「進化、スプレッド(広げる、延ばす)という感じです。9人でやっているとリーグにずっとコミットしている。1人のメンバーがD.LEAGUE以外の活動をすることが苦しい状況に陥ってしまうんです。僕はリーグ外の活動がリーグ内のそれを、さらに加速させることができると思っています」
――それは選手1人1人の負担を減らしたいという狙いも込みだと?
「そこはニュアンスが少し違いますね。リーグ外の活動を笑顔で送り出せる環境をつくりたかった。9人だと、例えばメンバーの1人がリーグ外の活動を優先したいという時に、『いて欲しいなぁ』といった顔をしてしまう。人数を増やして盤石な組織にすることで『行ってこい! こっちはこっちで頑張るから』と笑顔で送り出せる。そういう環境をつくることがサスティナブルで、豊かなチームになることに繋がると思っています」

(写真:新メンバーが入っても高いシンクロ率は健在 ©D.LEAGUE24-25)
選手たちの印象はどうか。リーダーのTAKUMIは「自分の感覚としては5年目にしてチームの在り方が180度変わったと感じます」と言う。
「今までは全員で戦って、全員でひとつの作品をつくり上げてきました。大人数になって、作品に向かう人、違うことをする人と分かれる。チームの在り方の変化を感じます。CSを戦ってみての大人数にするという判断だったので、そこを目指して取り組んでいきたいと思っています」
人数が増えたことで、リーダーとしてまとめる難しさはないのか、と問うと「新メンバーがモチベーション高くきてくれる。自分がリーダーなんですが、ディレクターのFISHBOYさんもいます。ディレクターを中心にチームの統制は取れていると思います」ときっぱり言い切った。
組織は生き物である。「現状維持は衰退」。福沢諭吉の言葉にもある通り、組織が良い状態の時ほど変えにくいものだが、変化を恐れては進化もない。Legitの挑戦は前に進むため、高みを目指すための選択だ。24-25シーズンの目標をFISHBOYはこう語った。
「完全優勝。そして皆さんにインパクトを与えたい。勝ち負けにこだわりながらも、その向こうにしっかりお客さんが見えているかどうかが大事。お客さんをワクワクさせる。1年間だけじゃなく5年、10年、100年という単位で考えたい。チームからリーグ、リーグからチーム。影響力の循環を生むのがLegitの務めだと思っています」
Legitはデジタルサウンドを駆使したエレクトロ、ファンクのビートに乗った息の合ったフォーメーションが売りだ。この機械音のような音楽は、高いシンクロ率を誇るチームの代名詞になりつつある。FISHBOYに「一番マッチする音楽だから使用しているのですか?」と訊ねると、「しっくりくるのはそれなんです」と答え、「でも、もっとしっくりくる音楽を僕らは知っている。それは楽しみにしていて欲しい」とニコリと笑った。
Legitの新たな挑戦、進化の過程も一興だが、FISHBOYの言う「もっとしっくりくる」という音楽がどのラウンド、タイミングで持ってくるかにも注目したい。
(文・写真/杉浦泰介、ダンス写真/©D.LEAGUE24-25)