バレーボールV・プレミアリーグ女子はレギュラーラウンドも終盤に突入し、刻々とクライマックスへと近づいている。昨シーズンに続き、トップの座を守り続けているJTマーヴェラスは、既に2年連続4度目のファイナルラウンド進出が決定した。果たしてファイナルでは昨シーズンの借りを返すことができるのか。主力としてチームを支えている竹下佳江、山本愛、キム・ヨンギョンの3選手にチームの現状や今後の戦い方について、スポーツジャーナリスト二宮清純が直撃した。

  強まるファイナルへの思い

二宮: 昨シーズン、レギュラーラウンドでは独走態勢でトップの座を守り、セミファイナルでも3戦全勝と絶好調でした。ところが、ファイナルでは東レ・アローズにセットカウント0−3のストレート負けを喫し、初優勝はなりませんでした。今シーズンはその悔しさをバネにしてきた部分もあると思いますが、現在、チームの状態はいかがですか?
竹下: 今シーズンは開幕2連敗といいスタートを切ることができませんでした。そういう意味では難しいシーズンとなりましたが、試合を重ねるにつれて徐々にチームが結束してきたと思います。ファイナルラウンド進出も決定し、いよいよというところですが、先月26日の東レ最終戦、フルセットの末に敗れてしまいました。そのことで、改めて勝負の厳しさを感じています。ファイナルラウンド進出は決定しましたが、選手全員が「簡単には優勝できない」ということを肝に銘じて戦っているところです。優勝するためには、いかに自分たちのパフォーマンスと気持ちのピークをファイナルにもっていけるか。そのことが非常に重要だと思っています。

二宮: 今シーズン、唯一負け越しているのが東レです。昨年のファイナルのこともありますが、多少の苦手意識はあるのでしょうか?
竹下: お互いに高いレベルで戦っていて、試合の内容自体は非常にいい。ですから、勝敗は微々たる差だと思うんです。でも、そのちょっとの差が大きい。最後の1点を取れるか取れないか、それに対しての集中力をもっとチーム全体が意識して戦っていかなければいけないと思っています。

二宮: 山本さんは入団2年目となるわけですが、今シーズンはどのような気持ちで戦ってきたのでしょうか?
山本: 昨シーズンはスタートから連勝することができて、逆に自分たちの弱点が見えないままの状態でレギュラーラウンド中盤までいきました。ところが、後半に入ってファイナルラウンド進出が決定した後に黒星を喫した。そのことで自分たちが詰め切れていない部分が見えたんです。それを踏まえながらファイナルラウンドに臨んだものの、最後の最後に東レに完敗してしまった。周囲からも言われましたが、自分自身でも東レとの経験の差を痛感せざるを得ませんでした。レギュラーラウンドの1点と、ファイナルでの1点の重みが全く違うことも感じましたね。そういった経験を踏まえて今シーズンはスタートしたわけですが、チームも私自身も試合を重ねるにつれてどんどんよくなってきているということは実感しています。今シーズンもファイナルに行く力はあると思っているので、あとは昨シーズンの悔しさを誰一人として忘れることなく戦うことができるかが重要だと思っています。

二宮: 勝ち続けてしまうと、かえって自分たちの課題を見失ってしまうと?
山本: そうですね。もちろん、チームの雰囲気はすごくよかったんです。でも、あれだけ連勝してしまうと、「自分たちは間違っていない」という過信を抱いた状態で戦っていたので、見失っていたものはあったと思いますね。

二宮: 山本さんの東レに対する意識は?
山本: 苦手意識よりも、ライバル心の方が強いですね。私の場合は久光製薬スプリングス時代にもファイナルで東レに敗れたことがあるので、どこのチームよりも東レにはライバル意識が高いです。

二宮: ヨンギョン選手は昨シーズン、JTに入団して、初めて日本のリーグで戦ったわけですが、いかがでしたか?
キム: 日本に来たばかりの頃はどうやって生活に慣れればいいのかと、とまどうこともありましたが、チームのみんながすごく優しく接してくれたので、すぐに慣れることができました。納豆以外は何でも食べることができましたし、韓国とは違うけれども、日本の焼肉もそれはそれで美味しい(笑)。生活の面で困ることはほとんどなかったですね。
 試合をする中で、まず感じたのはV・プレミアリーグの全ての選手が高いレベルでプレーしているということ。特に日本人の選手はレシーブ力が高いことを改めて実感しました。昨シーズンはファイナルで負けてしまい、非常に残念でした。でも、今シーズンもまた日本でプレーするうえではすごくいい経験になったと思っています。昨シーズンの経験をいかして、今シーズンこそは絶対に優勝したいと思っています。

 アタッカーを鼓舞する竹下のトス

二宮: 竹下さんと山本さんはNEC時代にも同じチームメイトとして戦ってきました。それぞれチームが変わって、昨シーズンからまた一緒に戦っているわけですが、いかがですか?
竹下: NEC時代は、お互いに若かったこともあって、考え方が浅はかな部分が多くあったと思うんです。でも、その後、それぞれがそれぞれの場所でいろいろな経験してきたことで、今では深みのある話もできるようになったのではないかと思います。根本的に勝負へのこだわり方は一緒ですので、ユウ(山本選手のコートネーム)とはすごく信頼し合って、プレーすることができています。

二宮: 山本さんは竹下さんのトスをどう感じていますか?
山本: テンさん(竹下選手のコートネーム)が引退をして、その後、いろいろなタイプのセッターとプレーをしましたが、やっぱりこうやって久しぶりにチームメイトとして一緒にプレーをすると、テンさんのトスは他の選手とは違うなぁと実感しています。もちろん、技術的なこともそうですけど、気持ちの面でも違いますね。言葉には表しにくいのですが、アタッカーが本気になれるトスというか……。だから、テンさんが上げてくれたトスに対しては、自分の気持ちの面も違うんです。昨シーズン、久しぶりにテンさんのトスを打ったときに、「あぁ、本気の本気ってあるんだな」と感じました。

二宮: 竹下さんのトスには魂が入っていると?
山本: はい。練習でも真剣の度合いが全く違う。今までは自分が合わせなくてはいけない部分も多々あったのですが、テンさんの場合は、自分さえしっかりとコンディションを整えておけば、確実にいいトスが来る。だから、スパイクが決まるかどうかは自分次第だと思っています。

二宮: ヨンギョン選手は日本を代表するセッターである竹下さんのトスをどう感じていますか?
キム: テンさんと同じチームでプレーできるということは、とても嬉しいことです。実際にJTマーヴェラスに入団して、テンさんのトスを打ってみて「このチームに決めてよかったな」と思いました。昨シーズンも今シーズンも、自分が活躍できているのはテンさんのトスのおかげです。常にいいトスが上げてもらえるからこそ、自然と得点も決定率も上がる。このチームに入れたことは、すごくラッキーだなと思いますね。

二宮: 竹下さんから見て、ヨンギョン選手が特に優れている部分はどこですか?
竹下: オールラウンダーの選手で、何でも器用にこなすタイプですね。韓国代表でも活躍していますから、プレーのレベルが高いのは周知の事実。でも、一番すごいなと思うのは精神面での強さです。プレッシャーがかかって、誰もが逃げてしまいたくなるような場面でも、「自分がどうにかしてやる」というような強い意志がある。「やっぱりエースだな」と感じますね。

二宮: エースとしての責任感が強いのでしょうね。
竹下: そうですね。チームの中で調子が悪い選手がいても、「自分が何とかするから大丈夫」というような気構えが見えるんです。絶対的な自信があるからできることなんでしょうけど、それでもやっぱり人間ですから、弱い部分があったり、悩みもあると思います。でも、そういう部分は絶対に人には見せない。本当に強い選手ですね。

(後編につづく)

竹下佳江(たけした・よしえ)プロフィール>
1978年3月18日、福岡県生まれ。8歳からバレーボールを始める。不知火女子高(現・誠修高)3年時にはユース代表に選出され、世界ユース選手権で優勝した。1996年、NECに入団。翌年、全日本代表に初選出される。2000年シドニー五輪最終予選からレギュラーに定着した。2004年アテネ五輪では5位入賞を果たす。08年北京五輪には主将として出場した。昨年の世界選手権で司令塔として銀メダル獲得に貢献。JTマーヴェラスでは今シーズン、入団9年目でチーム初の日本一を目指す。

山本愛(やまもと・あい)プロフィール>
1982年3月24日、宮城県生まれ。中学1年からバレーボールを始める。仙台育英高時代には世界ユース選手権で優勝した。2001年、NECに入団し、新人賞を獲得。同年、ワールドグランプリで日本代表デビューを果たした。04年のアテネ五輪に出場し、5位入賞に貢献。08年、2年ぶりに現役復帰し、久光製薬スプリングスに入団した。09年、JTマーヴェラスに入団し、前年、リーグ9位に陥ったチームの復活に大きく貢献した。翌年には全日本代表に復帰。昨年の世界選手権では32年ぶりのメダルを獲得する。JTマーヴェラスではNEC時代以来となる優勝を狙う。

キム・ヨンギョン プロフィール>
1988年2月26日、韓国・ソウル生まれ。2005年、興国生命ピンクスパイダーズに入団し、優勝に貢献。MVPおよび新人賞に輝いた。同年、17歳で韓国代表に選出される。192センチと長身ながら、レシーブ力にも定評がある。現在、韓国国内では“100年に1人の逸材”との呼び声高く、絶対的エースに成長した。昨シーズン、韓国史上初の海外移籍選手としてJTマーヴェラスに入団。総得点、アタック決定本数で1位を獲得し、レギュラーラウンド1位に貢献。今シーズンは8日現在、アタック決定本数2位、アタック決定率4位につけている。

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(構成・斎藤寿子)
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