村山会長「ここからがスタート」 初のアワード開催 ~BC LEAGUE AWARD~
独立リーグ「ルートインBCリーグ」のシーズンを締めくくる表彰式典「BC LEAGUE AWARD 2024」が15日、神奈川県内のホテルで開催された。すでに発表されていたベストナイン、各タイトルホルダー、特別賞受賞者へトロフィー授与の他、最優秀選手(MVP)の発表・表彰が行われた。MVPは、投手部門に安里海(神奈川)、野手部門に武蔵(栃木)が選ばれた。
2007年にスタートしたBCリーグ。18シーズン目を終え、初のアワード開催となった。村山哲二会長は「今季から上野馨太が社長になって、“ぜひアワードをやりたい”ということで実施に至りました。四国アイランドリーグ(現・四国アイランドリーグPlus)は初年度からアワードを開催していました。私たちも発足当初から、やりたいとは思っていたものの、予算を危惧してなかなか踏み出せなかった。だから今回は思い切ってやってみよう」と開催に至った思いを語る。リーグ側の努力もあり、アワードには経営戦略、M&A・ファイナンスに対するコンサルティング会社であるクレアシオン・ホールディングスの協賛が付いた。
アワードにはファン、関係者が詰め掛け、今季リーグの“主役”となった者たちを祝福した。既に発表されていた個人タイトル受賞者に加え、10月11日に発表されたベストナイン受賞者が表彰されていった。MVPはNPBと同じく、アワード会場で発表。投手部門は最多勝(11)、最多奪三振(113)の2冠を掴み、神奈川フューチャードリームスの優勝に貢献した安里が、野手部門は個人タイトルこそなかったもののリーグ3位の打率3割5分5厘、同6位の9本塁打をマークした栃木ゴールデンブレーブスの武蔵が輝いた。受賞が発表された際、スポットライトを浴びた安里は「ドラフトで選ばれたのかなと感じました」と言い、武蔵は「トイレに行ったら、急いで呼び戻されたので僕だろうと思っていました」と内情を暴露し、会場を沸かせた。
村山会長は締めの挨拶で、「上野社長に『ちょっと(時間が)早いので、10分しゃべって欲しい』と言われましたが」と冗談を交えながら、こう言葉を紡いだ。
「今年のドラフト会議で5人の選手の名前が呼ばれました。いつも思うのは毎年、僕が呼ばれて欲しい人が2、3人は含まれていません。名前の呼ばれなかった選手に送りたい言葉は“ここが全部のスタートの場”ということです。名前を呼ばれた選手も呼ばれなかった選手も、引退して次のステージに向かう選手も、残って次のシーズンに向かう選手もみんなスタートラインだということです」
今季独立リーグチャンピオンシップを制した信濃グランセローズの飯島泰臣会長とのエピソードを披露し、選手たちにエールを送った。信濃の飯島会長は明治大学のキャプテンを務めたものの、ドラフト指名がかからなかった過去がある。そこから「同期のNPB選手より絶対に稼いでやる」と誓い、信濃に球団を持つなどビジネスマンとして成功を収めた話をした。それぞれのスタートライン立つBCリーガーたちへの村山会長流の“花向け”のスピーチだった。
NPB球団からドラフト指名を受けた5人も新たなスタートラインに立つ。町田は神奈川・光明学園相模原高校卒業後、埼玉武蔵ヒートベアーズで3年間プレーし、NPBドラフトで阪神から4位指名を受けた。「NPBに入ってカッコつけたプレーではなく、独立リーグで学んだ泥臭い全力プレーを貫いていきたいと思います」。本人にBCリーグで学んだことを改めて聞くと、「NPB出身の方とプレーする機会が多く、プロを目指す若い選手よりも野球に対する姿勢、準備に重点を置いていると感じましたし、それをすごく教わりました」と答えた。
「コーチの清田(育宏。来季は埼玉監督)さんからは、『カッコつけてやりがちだが、泥臭くやっていこう』と話をしてもらっていました。そこは自分の中ですごく勉強になった。自分自身、カッコつけるという意識はありませんでしたが、上手く見せようとしてしていた時があった。NPB戦こそ泥臭く、自分の持っているものを出そうという気持ちになりました」
上野社長は記念すべき第1回のアワードをこう振り返った。
「昨年からゴルフコンペを開催しました。リーグとしてはスポンサーを募るビジネスだけで厳しい。協賛企業同士を結び付けられるような違う価値の出し方をしたかった。今年もアワード後に感謝の祭も開催しました。企業と企業、企業と選手を繋ぐ働きかけをしたかったからです。今日はすごく良かったので、辞めてしまっては意味がないので、今後も続けていくつもりです」
選手たちの反応も上々だ。埼玉の町田が「NPBのように選手が登場して迎えられる。NPBでもアワードに出たいという気持ちになりました」と口にすると、栃木の武蔵は「VIPな感じがしましたね」と笑顔を見せた。
アワードを終えた上野社長に、そしてリーグの手応えを聞くと、「少しずつ価値をわかってもらえている手応えはありますが、そのスピードは遅いですし、もっと前に進まないといけないと思っています」と返ってきた。
「NPBや他がチャレンジできないことをやりやすい環境にあるので、新しいことにどんどん挑戦していきたい。ただこれまで培ってきたものをぶっ壊すという気持ちはありません。いいものを受け継ぎつつ、新しいことに挑戦したいと思っています」
来季は山梨の球団が参入し、8チームによってリーグは争われる。BCリーグの正式名称はベースボール・チャレンジ・リーグ。野球を通じたリーグの挑戦、NPBを目指す選手たちの挑戦がまたスタートする。
(文・写真/杉浦泰介)
主な受賞者は以下の通り。
◆最優秀選手
<投手部門>
安里海(神奈川) 11勝4敗 防御率2.87 113奪三振
<野手部門>
武蔵(栃木) 打率.355 9本塁打 25打点 2盗塁
◆ベストナイン
投手 安里海(神奈川) 初
捕手 町田隼乙(埼玉) 2年連続2回目
一塁手 熊谷凌(神奈川) 初
二塁手 濱田祐太(群馬) 初
三塁手 小林幸之助(群馬) 初
遊撃手 武蔵(栃木) 初
外野手 佐藤優悟(福島) 初
外野手 石川慧亮(栃木) 2年連続2回目
外野手 馬場愛己(信濃) 初
指名打者 柿崎颯馬(神奈川) 2年連続2回目
◆最優秀審判員
座馬大輔 初
◆個人タイトル
<投手部門>
防御率 2.34 大宅健介(埼玉)
勝利数 11 安里海(神奈川)
奪三振 113 安里海(神奈川)
最多セーブ 15 荻野恭大(群馬)
<野手部門>
打率 .401 佐藤優悟(福島)
本塁打 13 ジェス(信濃)
打点 51 石川慧亮(栃木)
盗塁 26 南出侑亮(群馬)