全勝が早くも消える ROYALBRATS、DREAMS、RAPTURESが今季初勝利 ~D.LEAGUE~
20日、日本発プロダンスリーグの「第一生命 D.LEAGUE 24-25 REGULAR SEASON ROUND.3」が東京ガーデンシアターで行われた。開幕2連勝中だったCyberAgent Legit(サイバーエージェント レジット)、Valuence INFINITIES(バリュエンス インフィニティーズ)が敗れ、dip BATTLES(ディップ バトルズ)が引き分けたため、ROUND.3にして全勝チームが消えた。avex ROYALBRATS(エイベックス ロイヤルブラッツ)、SEPTENI RAPTURES(セプテーニ ラプチャーズ)、KADOKAWA DREAMS(カドカワ ドリームズ)が今季初勝利。またINFINITIESに土を付けて2連勝のMedical Concierge I’moon(メディカル・コンシェルジュ アイムーン)が首位。新規参入のList::X(リスト エクス)も2連勝で4位に浮上した。このラウンドのMVD(Most Valuable Dancer)には、エースパフォーマンスを任され、ROYALBRATSのSWEEP勝ちに貢献したリーダーのJUMPEIが選ばれた。
全勝チームが消え、昨季11位のI’moonが首位、13位のBATTLESが2位に立ち、新規参入のXが4位に食い込んだ点で荒れたROUNDと言っていいだろう。
I’moonのテーマは「ELEGANT LADY」。昨シーズンのROUND.8に披露した「SEXY LADY」の続編だ。前作が対戦相手を意識したような作品と言うならば、今回は前作の自分たちに向けた作品と言えるだろうか。エレクトロサウンドに乗って、ファンキーに踊る。エースパフォーマンスを担当したのはディレクターのMIZUE。2連勝中のINFINITIES相手に5対1で勝利。MIZUEは「Valuenceだからここまでのダンスができた。昨年、彼らにSWEEP負けをしたことが、私たちをここまで上げてくれた」と対戦相手への感謝を述べた。リーダーのCHIKAは「私たち自身が一番楽しめた。勝利を獲得することができたので、とてもうれしいですし、たくさんの方に感謝でいっぱいです」と喜んだ。
Xはチャンピオンシップ(CS)常連のFULLCAST RAISERZ(フルキャスト レイザーズ)を5対1で破った。ROUND.1とROUND.2の180度違う作品のギャップで観る者を驚かせたが、ROUND.3でもまた独特の世界観で観客を引き込んだ。エースパフォーマンスのRuna Miuraが中心となり、徐々に感染が広がっていくような狂気じみたショーケース。リーダーのTenjuはこう胸を張った。
「RUNAを中心に本来体の中にある“ナチュラル・キラー細胞”をテーマにして、団結して戦う様をヒップホップで表現しました。彼の個性を消さないためにも、周りのダンサーがLUNAになり切る。その意味でも共存していましたし、団結というテーマに一致することができた。いい作品だったと思います」
Runa Miuraは「ありがとうございます。ダンスがなかったらロクでもない人間になっていたんです。だめだめで人間腐ってるのに、ダンスがあったから素晴らしい仲間に出会えた。みなさんも特別なこと、好きなことがあったらとことんやって欲しい。みんなぶっ飛んでください。僕が体現したと思うので、みんなイカレてください!」とステージ上で叫んだ。
大相撲で言えば「初日が出た」、つまり初白星を挙げたのは3チームだ。初代王者のROYALBRATS、2連覇中のDREAMS、昨季9位のRAPTURES。それぞれのカラーを全面に押し出したパフォーマンスを披露した。
ROYALBRATSは「For You」というテーマで、新聞配達員の物語を描いた。小道具は新聞だけにとどまらず、JUMPEIが自転車を漕ぎながらステージを移動した。コミカルな演出と、高いシンクロ率はこのチームの真骨頂。エースパフォーマンスを担当したリーダーのJUMPEIは「新聞だけでなく皆さんに愛を届けられればと思い、ハッピーな作品をつくって勝利することができて満足です!」と喜んだ。JUMPEIはMVDを受賞し、「ディレクションをメンバーのかばおさんとMATURI。最高のものを用意してくれた。僕は踊るだけ。それでこの賞をいただけて、2人にはめちゃくちゃ感謝しています」と歓喜のスピーチ。賞金10万円をゲットし、「賞金は僕が全部使います」とおどけて見せた。
2連覇中の王者DREAMSはプライドを取り戻す勝利だった。テーマは「プライド」。2連覇に貢献したMINAMIがSPディレクターとして起用。DREAMSらしさ全開の、ゴリゴリのヒップホップで、SEGA SAMMY LUX(セガサミー ルクス)と勝負した。「久々にめちゃめちゃヒップホップをしました。テーマにあるように2連覇したプライドを持ちつつも、2回負けていた。やっと勝利を掴むことができて良かった」とDaichi。HINATA.Mは「勝つことの難しさを思い知らされました。自分に勝つことが本当に難しかった。今回監督(KEITA TANAKAディレクター)からプライドというテーマをもらって、KADOKAWA DREAMS全員で掴んだ勝利だと思います。今日、世界中のどこを探してもKADOKAWA DREAMSが一番カッコ良かったと思います。そう信じ、これからも前に進んで3連覇を絶対に成し遂げます」とステージ上で誓った。
RAPTURESは2連勝中で、レギュラーシーズン2連覇中のLegitをSWEEPで撃破した。テーマは「青い血」。昨季からチームが掲げている「Insane “BLUE”」(インセインブルー)を全面に出した作品だ。「気持ち悪い人間離れした動きを作品に入れ込んだ。あとは小道具とエースパフォーマンスのMiYUちゃんによって作品がまとまった。Legitという難しい相手ではあったのですが、ここで勝ちを取って流れを変えられたのはすごくデカイ」とHaruto。不気味な世界観のショーケースを披露し、ヒップホップで攻め、いつもとは違ったカラーで勝負してきたLegitにSWEEP勝ちした。
今季から勝敗の決定ポイントが変わったことも混戦状態を演出しているのかもしれない。ここまでハマッているように見えるチームもいれば、苦戦を強いられているように映るチームもある。勝敗の決定ポイントをこれまでのジャッジの投票ごとではなく、「オーディエンス」「テクニック」「コレオグラフィー」「ステージング」「シンクロパフォーマンス」「エースパフォーマンス」の6項目ごとに変更となった。
この新システムについてダンサーには概ね好評のようだ。
「項目ごとに判断されるようになったので、個人的には好きです。ウチのチームはテクニックをジャッジの人がどこを見るのか、コレオグラフィーはどこを見るのかというのを探っている状態。シンクロパフォーマンスとエースパフォーマンスはツーエイト(6~12秒)の中を頑張れば頑張るほど1票ずつ入るのはデカイ。そこをまずは落とさないこと。ステージングはどこをどう見ているかを、ここまでの3ラウンドを見てみてわかることがある。それを持ち帰って研究しての繰り返し」(JUMPEI)
「昨シーズンに比べて、観ている方が分かりやすくなったとは思うんですが、私たちもすごく分かりやすい。次の対戦相手を見て、『ここ(の項目)が取られやすいよね』という話になり、そのための対策を取れる。分かりやすいからこそ頑張らなければいけないところでもある。イメージを覆したり、ジャッジの全票を取れるように練習したり、難しくなったところもありますが、対策や戦略を練りながら今シーズンをやれている。この戦い方、システムは好きです」(CHIKA)
「自分のお母さんが言っていたんですけど、『このシステムになってからめちゃくちゃD.LEAGUEが見やすくなった』と。ダンスをやっていない人たちからすると、なんとなく勝った、なんとなく負けたという捉え方をする試合があった。こういう項目でどちらが勝ったと分かりやすくなったことで、視聴者さんとしても良かったのかなと思っています。どこが勝って、どこで負けたという次の課題がわかりやすくなる点では、RAPTURES向きなシステムだと思っています」(Haruto)
「KADOKAWA DREAMSはシンクロで手こずっていた。たとえばユニゾンを踊らないラウンドだったり、ソロがない作品も去年までは気にせずつくっていた。作品をつくる上で、そこも落とし込まなきゃいけないというのが難しい。どのチームも似てきたよね、というふうになってきたら、KADOKAWAが覆したい。“こういうシンクロもあるぞ”“こういうエースの見せ方もあるんだ”という幅を増やせそうだなという希望も見えてきました」(Daichi)
Xは新規参入だが、リーダーのTenjuによれば「ステージング、コレオグラフィーなど模索するところが多くある。ウチのチームはラウンド1から2の全チームの作品を徹底的に研究しています。どれがいいのか悪いのか。何がステージングで評価されるのか、コレオグラフィーでどこを見られているのか。ラウンド3はその努力が実になったと思っています」という。
「ダンスを勝ち負けで決める大会ということで、そういったコンテンツで分けるのはいいと思います。視覚的にわかりやすいことは視聴者さんたちからすればいいこと。ダンスのいいところを表現方法。全チーム表現方法は違う。表現方法が明確になるようなコンテンツが増えたら面白いかなと思います。このチームは色が変わったとか、統一しているからいいとか。見え方が変わったりすると思っています」
D.LEAGUEは5季目になるが、リーグは試行錯誤を重ねている。最善策は何なのかを模索中と言っていいだろう。各チームも新システムにいち早く適応できるように努めるのか、それともあえて迎合せずに自分たちのダンスを貫くのか。シーズンはまだ始まったばかりである。
(文・写真/杉浦泰介)