横綱・白鵬は秋場所を4場所連続全勝優勝で飾り、連勝記録を62にまで伸ばした。順調に白星を重ねれば九州場所の7日目には「昭和の角聖」双葉山が持つ69連勝の大記録に肩を並べることになる。宿敵・朝青龍が引退した今、“連勝ストッパー”は見当たらない。
 彼はこんなことも言った。「横綱は横綱。単なる格闘技のチャンピオンではないんです」。朝青龍にこの自覚があれば…。
 周知のように白鵬が最も憧れ、目標とする横綱が双葉山である。双葉山といえば連勝記録が途切れた際、師と仰ぐ安岡正篤の門下生に送った「イマダ モッケイタリエズ フタバ」の電報が有名だ。去年、白鵬にテレビ番組で対談した際、モンゴル出身の彼がこの言葉の意味をスラスラ答えたのにはビックリした。
 初の自叙伝では双葉山が夢に出てきたというエピソードが紹介されている。<DVDを繰り返し見ているからわかるが、横綱の全盛期のときであった>。日本人の中に、ここまで双葉山に熱い思いを寄せる力士がいるだろうか。
 不祥事に揺れる相撲界をひとりで支え続ける不世出の横綱の声に耳を傾けたい。
「相撲よ!」 ( 白鵬翔著・角川書店・1400円)

 2冊目は「こんな言葉で叱られたい」( 清武英利著・文春新書・700円)。 若者は叱られ、励まされ、慰められながら成長していく。言葉の力は無限である。伝える側に覚悟はあるのか。敏腕で鳴る巨人の球団代表が原辰徳監督らの肉声を紹介する。

 3冊目は「イギリス王室の物語」( 君塚直隆著・光文社新書・980円)。 面積は本州と四国を併せた程度にすぎない小さな島国が、世界に冠たる国家となった背景には何があるのか。英王室500年の歴史を王族たちの肖像画から読み解く。

<上記3冊は2010年9月29日付『日本経済新聞』夕刊に掲載されたものです>
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