最も大きな影響を被るであろう当事者が「それでいい」というのだから、これでいいのだろう。
 わたしが日本サッカー協会の人間であれば、南米連盟からのオファーにはなんとしても応えたいと考えたに違いない。
 かつて、これほどまでに日本の存在が求められたことはなかったし、大会に参加することで、日本の健在ぶりを世界に示すことができる。なにより、ガチガチの真剣勝負を経験することによって、急成長を遂げている代表チームはさらに大きなステップを踏み出せるやもしれぬ。参加によってえられる収穫は相当に大きい。

 だが、これはあくまでも強化と育成に重きを置く立場の考えである。興行面も考えなければならないJリーグ側の人間だったりすると、無邪気に喜んでもいられない。
 Jリーグと同時進行で南米選手権が行われるのであれば、メディア、ファンの注目度がどちらに集まるかは一目瞭然である。ゆえに、Jリーグの立場を守るためにも、同時進行の日程だけは選択するべきではない、と先週のコラムにも書いた。

 だから、何としても出場したい日本サッカー協会と、それに徹底して抵抗するJリーグ……という図式であれば、納得もいく。参加、不参加、どちらの結論にいたろうとも、である。
 ところが、Jリーグの側からすると非常にデメリットが大きい同時進行の日程を打診してきた日本サッカー協会に対し、当事者からの反発する声は不思議なくらい聞こえてこなかった。ここ来てFC東京の反発が伝えられたものの、本来であればそうした声が多数派であってもおかしくはなかった。それとも、単に聞こえてこないだけで、内部では侃々諤々の論議が戦わされていたのだろうか。

 残念なのは、今回の決定に関して、サッカーを構成する2つの要素、ファンと選手の声がまったく無視されていることである。参加を望む理由が容易に想像できる日本サッカー協会はまだしも、Jリーグ側は南米選手権に出場することによってリーグが、ファンが享受することのできるメリットを明確に説明する必要がある。

 大東チェアマンが「12月3日の閉幕は動かさない」と言い切っているのも解せない。南米選手権に根こそぎ注目を持っていかれる7月の開催がなぜそんなにも大切なのか。なぜ閉幕は動かさないのか。動かせないのか。参加のメリットと併せて、説明を待ちたいところである。

<この原稿は11年4月14日付『スポーツニッポン』に掲載されています>
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