いよいよ開幕まで残すところあと3日となりました。今年のキャンプは雨や雪の日が多く、なかなか外で実戦形式の練習をすることができませんでした。しかし、与えられた環境で精いっぱいやるのが独立リーグです。室内でできる基本練習を何度も繰り返しやってきた結果、石川ミリオンスターズはリーグ優勝した昨シーズンと比べても、遜色ないほどに仕上がってきています。特にバッターには昨シーズン以上の力強さが出てきていますので、開幕が非常に楽しみです。
 今シーズン、チームのキャプテンには深澤季生(藤嶺藤沢高−専修大)を指名しました。守備では要のキャッチャーということもあり、チームの精神的支柱になってほしいと思ったからです。彼はピッチャーに対して言いたいことはきちんと言えるタイプのキャッチャーです。コミュニケーションを非常に大事にしており、試合中もピッチャーが何を投げたいのか、そしてそれでバッターを抑えることができるのかを、ピッチャーと一緒になって考えています。ただ、これまではキャッチャーとしての自分に自信を持てないところがありました。しかし、昨シーズンは本当によくピッチャーを支え、チームに大きく貢献してくれました。彼もようやく自信をもつことができたことでしょう。

 また、今年2月には阪神の2軍キャンプにブルペンキャッチャーとして参加しました。そこにはオフに左ヒザの手術をした城島健司の姿もあり、プロとの違いを肌で感じ取ったようです。キャンプから戻ってきた深澤にはどことなく「しっかりしなければいけない」という意識が芽生えているように感じられます。3月からのキャンプでも細かいところにまで目が行き届いていました。開幕すれば、またさまざまなことに気づくでしょうから、その中で成長していってほしいですね。それがひいてはチームが強くなることにもつながるはずです。深澤も石川に入団して5年目。今シーズンはぜひ、さらなる飛躍の年にして、チームを引っ張っていってほしいと思います。

 今シーズンは新たに9人の選手が加わりました。その中には3年ぶりに復帰した蛇澤敦(北陸高−ルネス学園金沢−石川−紀州レンジャーズ)もいます。蛇澤はリーグ初年度の2007年、リーグ最多の15勝をマークし、MVPに輝いており、読者の中にも覚えている方もいることでしょう。残念ながら私は彼のエース時代を知らないのですが、噂通り、スピードもありますし、何といっても球に力強さがあります。リリーフの要として期待しています。

 新人選手の中には前回紹介した中川貢輔(金沢市立高)のほかに、2人の地元出身者がいます。外野手の富永裕也(星稜高−大阪体育大)と南昌丈(金沢市立高−金沢学院大−西濃運輸)です。まず富永ですが、彼は非常に野球センスがある選手です。走攻守、どれをとっても一級品。オープン戦でも活躍し、レベルの高さを証明してくれました。ただ、体がまだまだ細く、力強さが欠けています。バネやスピードは十分に備わっている選手ですから、これに力強さが加われば、NPBへの道も十分に開けてくることでしょう。一方の南昌はというと、181センチ、90キロと体格に恵まれており、パワーのある選手です。しかし、最初は力に頼り過ぎる姿が目立ち、あまり結果は出ていませんでした。しかし、ここにきて徐々に調子を上げてきているようです。最近の練習試合では打球が外野を超え始め、フェンス直撃やホームランまで飛び出しています。

 昨季、四国・九州アイランドリーグ(現・四国アイランドリーグplus)の香川オリーブガイナーズとの独立リーグチャンピオンシップではパワーの必要性を痛感させられました。そこで今シーズンは打線に力強さを加えたいと思っていましたので、南の台頭はチームにとって願ってもないことです。昨季はホームラン4本に終わった敬洋(九産大九州高−日本ウェルネススポーツ専門学校−TDK千曲川)も、オープン戦では既に2本のホームランを放っています。南昌と敬洋が本来の力を発揮してくれれば、昨年までにはない石川の攻撃をファンの皆さんにお見せできるのではないかと期待しています。

 とはいえ、今シーズンも戦い方のスタイルは変わりません。相手には点を与えず、少ないチャンスで確実に得点をあげ、守り切る。これが石川の野球です。そのためにはやはりピッチャーが重要となるわけですが、現在調子の良さを見せてくれているのが大輔(七尾工高−三菱ふそう川崎−横浜)と佐藤広樹(安田学園高−徳島インディゴソックス−信濃グランセローズ)です。また、山下英(七尾工高−名古屋学院大)も徐々に調子を上げてきており、この3人に先発を任せたいと思っています。そして後ろには蛇澤と南和彰(神港学園高−福井工大−巨人−カルガリーV)がいます。終盤3イニングを彼ら2人で抑えられれば、とりこぼしなく白星を積み上げられるでしょう。蛇澤も南和もオープン戦では無失点に抑えていますから、チームからの信頼も大きい。先発陣も彼ら2人がいると思えば、バテることを気にせずに、初回から思いっきり投げられることでしょう。

 実はBCリーグではこれまで連覇を達成したチームはありません。それだけこのリーグで優勝することは簡単なことではないということです。今シーズンは石川がその連覇に挑みたいと思っています。そしてリーグ初の独立リーグチャンピオンを目指して、今シーズンもチーム一丸となって戦います。ぜひ球場に足を運んでいただいて、温かいご声援をお願いします。


森慎二(もり・しんじ)プロフィール>:石川ミリオンスターズ監督
1974年9月12日、山口県出身、岩国工高卒業後、新日鉄光、新日鉄君津を経て、1997年にドラフト2位で西武に入団。途中、先発からリリーバーに転向し、2000年にはクローザーとして23セーブを挙げる。貴重なセットアッパーとしてチームを支えた02、03年には最優秀中継ぎ投手に輝いた。05年オフ、ポスティングシステムによりタンパベイ・デビルレイズ(現レイズ)に移籍。2年間のメジャー契約を結ぶも、オープン戦初登板で右肩を脱臼。07年、球団から契約を解除されたものの、復帰を目指してリハビリを続けてきた。09年より石川ミリオンスターズのプレーイングコーチに就任。10年からは金森栄治前監督の後を引き継ぎ、2代目監督としてチームの指揮を執っている。
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