シダマツペア、18歳・宮崎が初優勝 ~全日本総合バドミントン選手権大会~
30日、第78回全日本総合バドミントン選手権大会最終日が東京・武蔵野の森スポーツプラザで行われた。女子ダブルス決勝はパリオリンピック銅メダルの志田千陽&松山奈未組(再春館製薬所)が五十嵐有紗(BIPROGY)&櫻本絢子(ヨネックス)組を2-0のストレートで下し、初優勝。女子シングルス決勝は、宮崎友花(柳井商工高)が仁平菜月(ヨネックス)を2-0のストレートで破り、初優勝を果たした。高校生の同種目制覇は、平成以降では4人目。男子シングルスは田中湧士(NTT東日本)が3年ぶり2度目の優勝。男子ダブルスは山下恭平&緑川大輝組(NTT東日本)、ミックスダブルスは柴田一樹&篠谷菜留組(NTT東日本)が初優勝(篠谷は昨年は山下とのペアで優勝)した。
過去3年はケガや世界選手権出場のため欠場。4年ぶりの出場となった志田と松山の“シダマツ”ペアが、初の皇后杯のタイトルを獲得した。
直近のワールドツアーファイナルは準優勝。世界ランキングは日本トップの3位だ。今大会優勝候補の筆頭格として大会に臨んだ。1回戦から準々決勝まではストレート勝ちだったが準決勝は大竹望月&髙橋美優組(BIPROGY)に第1ゲームを落とし、第2ゲームも終盤リードされる苦しい展開だった。そこから粘ってファイナルゲームの末、逆転勝ちで初の決勝にコマを進めた。
決勝の相手はミックスダブルスオリンピック2大会連続銅メダルの五十嵐(旧姓・東野)が櫻本と組むペアだ。櫻本は昨年、宮浦玲奈(ヨネックス)とのペアで優勝したサウスポーだ。8月にペア結成後、全日本社会人選手権大会で準優勝。11月の熊本マスターズでは2回戦で対戦し、“シダマツ”ペアがストレート(21―10、21―18)で勝っている。
ペア結成から10年。1学年上の志田が後衛、後輩の松山が前衛という基本布陣で、スピーディーな攻撃と高い連係が持ち味だ。序盤からスピーディーなドライブで4連続得点。1点を返された後も6連続得点を挙げ、終始リードする展開とした。このゲームは最後、志田が決めて21―5で取った。
続く第2ゲームは0-1から6連続得点を奪われ、追いかける展開に。それでも1-6から3連続得点で差を詰める。11-14の場面。松山のクロスで相手を崩すと、志田、松山、志田と連続スマッシュで仕留めた。これで勢いに乗った“シダマツ”ペアは5連続得点で逆転。粘る相手ペアを振り切り、21-19で制した。
念願の“日本一”のタイトルを手にした“シダマツ”ペア。志田が「この大会優勝がひとつもなかった。ここがチャンスかなと思っていたので、2人で狙っていた。優勝は素直にうれしい」と言えば、松山は「2人でこの大会の優勝を狙って、10年間組んできたので、ここで優勝できてうれしく思います」と語った。
オリンピック代表選考レースを経て、初のオリンピックで銅メダルを獲得した。その後はメディア出演などコート外でも多忙を極めた。「すべてが初めての経験」と志田。その中で大会は続き、結果が出なかったことで思い悩むもあったという。その中でもツアーファイナル、全日本総合と決勝の舞台に立ち、ペアとして成長した姿を見せた。
今後は松山が一旦休養に入るという。「オリンピック後体重が戻らなかったので、たくさん美味しいものを食べたい」と松山。志田はリオデジャネイロオリンピック女子ダブルス金メダリストの松友美佐紀と組んで国際大会に出場予定だ。「自分がどこまでできるのか試したい。松友さんは自分にないものを持っている選手。たくさん教わりたい」と話した。
「オリンピックで金メダルを取るのが夢です」
そう語ったのは、平成以降では宮村愛子(1989年)、奥原希望(2011年)、山口茜(14年)に次ぐ、4人目の全日本女王に輝いた宮崎だ。
山口県立柳井商工高校3年生。全日本総合は一昨年2回戦、昨年は1回戦敗退だが、世界ランキング12位で今大会出場選手では3位の山口(再春館製薬所)に次ぐ上から2番目だ。今大会は山口が3回戦、奥原(太陽ホールディングス)が準々決勝で途中棄権した。
「今大会は思い切ってチャレンジできると思っていた山口さんや奥原さんが棄権したので、5試合は自分がすごい受け身に立ってしまう部分が多かったです。プレッシャーもあって、うまくいかないプレーも多かったかなと思います」
それでも自身初となる決勝までコマを進めた。
決勝の相手は同じく初の全日本総合ファイナリストとなった仁平だ。世界ランキング23位の26歳。準々決勝では前回女王の杉山薫(BIPROGY)をファイナルゲームの末、破っている。ケガに悩まされた感はあるが、福島・富岡第一中学3年時に全日本総合の本選出場を果たすなど、若くから注目されてきた実力者である。
第1ゲームからシーソーゲームの様相を呈す。1-1から仁平が2連続得点を奪えば、宮崎もすぐさま2連続得点。宮崎が4連続得点などで9-6とリードを広げれば、仁平も3連続得点で追いついた。
試合が動いたのは16-14の場面だ。仁平のショットを宮崎が見送ると、線審は「イン」の判定。宮崎がチャレンジを要求すると、場内のスクリーンには「ノーディシジョン」と映し出された。「判定不能」とのことだが、当初の判定から「レット」(無効)となった。
これに納得のいかないのは仁平だ。主審に向かって抗議をしたが、覆ることはなかった。結局、ここから流れを掴んだのは宮崎。21-18で競り勝った。試合後、仁平は「ハッキリ言えば、納得いかない」と話していたが、「でも、そこから2点くらいポンポンと取られたのは、自分の弱さ」と肩を落とした。
第2ゲームも競った展開となったが、宮崎は15-14から6連続得点で試合を締めた。「今日の相手は何度も戦っている選手ですし、互いに分かっている球も多く、ラリーも長くなりました。緊張も疲労もある中、相手より我慢強く戦えたことが良かった」。18歳の新女王は決勝を振り返った。
「トップで憧れの選手。同じ結果を残すことができてうれしい」と奥原、山口に続く高校生で全日本総合のタイトルを手にしたことを喜んだ。全日本総合を最終日まで勝ち進み、来年早々にはマレーシアオープンに出場する。短い“冬休み”となりそうだが、「田口(真彩)さんとディズニーに行く」という。高校の先輩で卒業後も山口県の実業団チーム「ACT SAIKYO」でチームメイトとなる田口と、束の間の息抜きをする。“夢の国”でリフレッシュ後、再び夢の「オリンピック金メダル」に向けた道へ突き進む――。
(文・写真/杉浦泰介)